【書評】本質を見極めるための哲学思考術

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事業投資をお考えの読者の皆さまは、投資対象として確信を得るために日々考えをめぐらせているのではないでしょうか。なかなか決め手が見つからない方も多いと思いますが、そんなときに「哲学」が役に立つかもしれません。

ウイズ・コロナでさらに注目される「哲学」。その思考法についての良書を、企業支援のコンサルタントのエキスパートで、書評ブロガーとしても有名な徳本昌大氏の書評でご紹介いたします。

本書の要約

今までの常識が通用しなくなったウイズ・コロナの時代には「哲学」が役立ちます。「哲学は深く考え、本質を探究する営み」で、問いに対する答えが出るまで徹底して思考を繰り返します。インプットとアウトプットを通じて、思考を重ねることで、自分らしい答えを見つけられるようになります。

物事の本質を発見する哲学思考を身につけることで、知的生産性を高められます。①透視思考、②対概念思考、③媒介思考、④弁証法思考、⑤プラグマティズム思考、⑥逆算思考 、⑦比喩思考、⑧人間中心思考、⑨落選着目思考、⑩補助線思考によって、解決策が見つかるようになります。

『超・知的生産術 頭がいい人の読み方、書き方、学び方』
著者:小川仁志 PHP出版

 

10の哲学思考を身につけよう!

物事の本質を発見し、意味づけていくためにそれを徹底的に繰り返すのが哲学思考。

哲学思考を身につけることで、私たちは知的生産性を高められます。この哲学思考には様々なバージョンがありますが、この思考法を自分ごと化することで、クリエイティブな存在に生まれ変われます。

小川氏は商社、地方自治体やフリーターなどを経験しながら、以下の10の思考法を実践することで、日本を代表する哲学者になったのです。哲学によって人生を変えられるという著者の主張は、彼の経歴を知れば、納得できるはずです。

①透視思考
物事をあたかも透視するように想像することで、物事の本質をつかめます。自分の持つ常識と知識を総動員し、理性と感性を最大限働かせて、思考しましょう。

②対概念思考
哲学の世界には、多くの「対」になる概念があります。主観と客観、理想と現実、一と多、観念と実在など対になって考えることで、見えない物が見えてきます。主観的に自分のことばかり考えていると周りが見えなくなります。主観と客観とセットで考えることで、新たな答えが見えてきます。

③媒介思考
物事には必ず何か媒介するもの、つなぐものがあると考える思考です。どんなものもそれのみで存在するわけではなく、何らかの関係性や原因があって存在すると面考えることで、今まで見えていなかったものが見えてきます。

④弁証法思考
弁証法は、古代ギリシアのソクラテスの時代から存在していた伝統的な思考法です。ソクラテスは、相手と問答を繰り返すことで、相手の主張の論理的な矛盾を明らかにしていました。問題が生じたときに、それを克服してさらに一段上のレベルに到達する思考方法として再生させたのです。

この思考法を取り入れることで、二つの対立する問題であっても、両方の長所を取り入れることで、よりよい解決法を見出せるようになります。弁証法は、いわば第三の道を創造するための方法なのです。世の中には問題があふれていますが、弁証法を使えば、問題をプラスに変えられるようになります。

⑤プラグマティズム思考
ドイツ語の「pragmatisch(実用的な)」という言葉に由来する思考法が、プラグマティズム思考です。 実用主義、道具主義、実際主義とも言われています。考えるだけでは結果を出せませんから、行動を重視しましょう。自分から積極的に行動し、結果をその都度検証して修正を加えていきます。

視点を変えて、物事の本質を捉えよう!

⑥逆算思考
逆算思考とは、文字通り逆算して考えるということです。ビジョンから逆算して、現状を把握したり、プランニングすることで、よりよい結果を得られます。

⑦比喩思考
比喩思考とは、喩えを用いることで、本質をあぶりだす思考法です。

富は海水のようなもので、飲めば飲むほど喉が渇く。(ショーペンハウアー)

ショーペンハウアーは、富を求める人間の欲望について、それが際限のないものであることを示すために、海水という比喩を使っています。「AはBである」ということをいくら説明してもわかりにくいときには、あえてAに類似したC、Bに類似したDを持ち出し、「CはDである」と伝えたほうが効果的です。難しい話をわかりやすく伝えたければ、比喩思考を活用しましょう。

⑧非人間中心思考
非人間中心思考とは、人間中心に物事を考えないということです。私たちはどうしても人間中心主義に陥ってしまいますが、それでは物事の本質を見誤ります。物の存在を人間のかかわりとは別に考えること=非人間中心思考によってのみ発見できることもあるのです。

⑨落選着目思考
選ばれなかったもの、落選したものに注目することで、異なる視点から物事を見られるようになります。物事の選択基準を疑うことで、結果が変わる可能性があるのです。

⑩補助線思考

幾何学の問題で、たった一本の補助線を引いただけで、解答への筋道が見えるように『思考の補助線』を引くことで、私たちは今までとは少し違った態度で、世の中の謎に向き合うことができる。(茂木健一郎)

仕事の問題を解決したいときにも、一見関係ないと思われる場所に、補助線を引くことでよい答えが見つかることがあります。よい補助線が引ければ、難問もあっという間に解決できるのです。

哲学は深く考え、本質を探究する営みですが、哲学者が使っている様々な思考法を身につけることで、よりよい結果が得られます。知的生産術をアップグレードしたければ、哲学思考のフレームワークが役立ちます。答えが見えないときには、本書の10の思考法を使って、異なるアプローチで解決策を探ってみましょう。

哲学とは何か?

つねに新たな概念を創造すること、それこそが哲学の目的なのである。 (ジル・ドゥルーズ)

哲学というと日本では小難しいものと敬遠されてきましたが、ウイズ・コロナの時代となり、哲学が再び見直されています。今までの常識が通用しなくなった新たな世界を生きる私たちにとって、哲学が役に立つと考える人が増えています。

AI、IoTなどのテクノロジーの進化によって、知性が人間だけのものでなくなったため、私たちはこれまでの知的生産術をアップグレードしなければなりませんが、その際、哲学が力を発揮します。「哲学は深く考え、本質を探究する営み」で、問いに対する答えが出るまで徹底して思考を繰り返します。

ああでもない、こうでもないとあらゆる角度から考え、自分らしい答えを出す必要があります。この哲学の思考スタイルを使うことで、ウイズ・コロナという難しい時代を生きる私たちは、より正しい答えを見つけられるようになります。哲学という「究極の知的生産術」を多くの人が身につけることで、よりよい世界を創れるようになるのです。

頭がいい人の「読み方、書き方、学び方」

「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している著者は、哲学のやり方をシンプルに整理します。以下の5つのステップによって、私たちは新しい概念を創れるようになります。
1、まず変な質問をたくさんする
2、その各質問に答える
3、全部の答えを比較して、全体に共通する最大公約数的な要素を取り出す
4、それを感情や個性を出しつつ普遍的な言葉に置き換える
5、その言葉を軸に、他の物事と差異化できるような表現を用いて一文で本質を表す

著者は哲学者のように勉強すべきだと言います。新しい概念を生み出す哲学者のような勉強術を身につけることで、人生を変えることができるのです。本書ではデカルトやカントなどの哲学者の勉強法が紹介されています。

デカルトの自分自身に問いかける勉強法から、著者は次のような答えを導きます。

自分自身に問うてみるという姿勢が大事です。最後は自分が答えを出さなければなりません。そしてその答えだけは決して疑い得ないものです。誰がなんといおうと、自信をもって自分はそう思うといえばいいのです。したがって、読者の皆さんがこれを勉強法として実践する場合には、どんな勉強でもまず自分で考えて解を出してみることです。模範解答や解き方が手元にあっても、あえてそれを見ない勇気が必要です。お手本を先に見てしまうと、どうしても引きずられてしまうからです。本当に頭を鍛えるためには、ゼロから自分で答えを導き出し、さらにはその答えに自信を持つことが大事なのです。

インターネットや本の情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考えなければ、フェイクニュースに簡単に騙されてしまいます。自分の外に答えを探すだけでなく、内なる自分との対話を繰り返しましょう。

私はこのブログを書くことで、日々著者の言葉を整理しながら、自分に質問を繰り返しています。ただ本を読むのではなく、思考する習慣が私の可能性を広げてくれました。AIが決まり切った解答を出す中で、あえて自分らしい答えを出し続けることが、デジタル社会を生きる強みになるのです。

著者は目的を明確にし、戦略をたて、勉強を習慣づけることが重要だと言います。私の学びの目的は、社外取締役やアドバイザリーをしている会社に貢献することです。クライアントのあらゆる課題を解決するためには、様々なカテゴリーの知識や体験が必要になります。読書だけでなく、あらゆる体験が私の血となり、肉となると考え、私は多くの情報をインプットし、新たなアイデアを生み出すようにしています。

私はインプットとアウトプットと思考を習慣化することで、いつの間にか哲学を実践していたのです。

徳本氏の著書『ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術(ラトルズ)

出典:徳本昌大の書評ブログ!毎日90秒でワクワクな人生をつくる「クリエイティブに生きるために10の哲学思考を身につけよう!」「小川仁志氏の超・知的生産術 頭がいい人の『読み方、書き方、学び方』の書評」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
iU 情報経営イノベーション専門職大学特任教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。
現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。
ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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