【書評】しないことのリスト化でやりたいことに時間を使う

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私たちは日常、仕事でもプライベートでも多くのタスクをこなしていますが、忙しいわりに効率は上がらず結果が出ないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。本当にやるべきことを明確にするために、やらなくていいことをリスト化してみるのも一つの方法です。

自分にとって真にやるべきこととは何なのか、改めて考えさせてくれるのが今回ご紹介する小野和俊氏の「その仕事、全部やめてみよう」です。ビジネス書籍をブログで紹介する徳本昌大氏による書評とともに、ご紹介いたします。

本書の要約

私たちは日々増殖するタスクで貴重な時間を失っています。本当にやるべきことにフォーカスするために、自分のタスクを定期的に見直しましょう。仕事だけではなく私生活でもTo Stopリストを活用することで、プライベートも充実し、豊かな人生を送れるようになります。

その仕事、全部やめてみよう―1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」
著者:小野和俊(ダイヤモンド社)

仕事を合理化するポイントとは?

もし万が一、会社がこれをストップするなら、身銭を切って起業する。だから事業を買いとらせてほしい。それくらい成功すると信じているし、たくさんの人に喜んでもらえると確信している。これを1とする。一方、上司から言われて仕方なくやっているけれど、絶対うまくいかない。こんなものを喜んで使う人はいない。これを0とする。

価値が0の仕事をやめる

多くの組織でプロジェクトが過多な状況が続き、メンバーの生産性を下げています。私たちはやるべきことをやめ、重要な仕事にもっとフォーカスすべきです。

著者の小野和俊氏はITベンチャーを起業後、M&Aを経験し、現在はクレディセゾンのCTOとして活躍しています。いくつもの会社で様々なスキルの人と仕事をする中で、ベンチャー・大企業問わず、どんな仕事にも共通する「仕事を合理化するポイント」を小野氏は見つけます。

自分の仕事を0と1に分類し、その仕事の価値が0なら、それをやめてしまうのです。

To Stopリストの活用

著者は会社には規模の大小に関わらず、共通する無駄があることに気付き、「To Stopリスト」を作ることで、生産性が高まることを発見します。小さな無駄を放っておくと、やがてそれは増幅し、大きな無駄となり、企業の生産性を下げてしまいます。

「実はもうやめても影響がない仕事」が企業には数多くあります。やめるべき仕事を早期に見極めるための「To Stopリスト」を作り、それを定期的に見直すことで、クリエイティブな活動に時間を使えるようになります。

強みとなる長所「山」にフォーカスしよう!

人は得てして、欠点や弱点、不足している点にフォーカスします。著者はこれらを「谷」と呼び、できるだけ無視すべきだと言います。企業が考えるべきは「山」(自社製品の長所であり、ユニークな価値)なのです。「山」がはっきりしていないのに「谷」を埋めても顧客からは認められず、結果が伴いません。

自分の業務の中で「谷」があれば、それには時間を使わないことです。自分の業務を棚卸し、「山」に時間を使うようにすべきです。「谷」を埋めることに時間とコストをかけるのをやめ、「山」を見つけ、それを伸ばすことに時間を使いましょう。

強みを伸ばせば、それを支持してくれる顧客が現れます。弱みをいくら改善してもエッジのあるプロダクトやサービスは生まれません。

顧客が喜ぶことを考える

「よいアイデアとは、誰かの役に立つものだ」と小野氏は言いますが、喜ぶ人の顔が見えてこないアイデアは、机上の空論でしかなく、ダメなアイデアです。顧客の喜ぶ顔が見えないアイデアに時間を使うのは無駄ですから、ダメなアイデアに時間を使わせないようにすることも、リーダーの重要な役割になります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)も同じで、使う人の驚きと喜びを考えないで作ったものはほぼ失敗します。CX(顧客体験)やEX (従業員体験)を意識したサービスやプロダクトでなければ、誰にも使ってもらえません。流行り言葉に乗り、安易にDXを推進するのも時間の無駄です。

顧客を喜ばす体験がなければ、技術がいくら優れていても、メジャーなプロダクトにはなれないのです。デジタル技術と体験を組み合わせ、顧客を喜ばすことを考えましょう。

「To Stopリスト」の作り方

私たちはやめることを明確にすることで、生産性を高めることができます。では、どんな時にこのTo Stopリストを作れば良いのでしょうか?

著者は過去の経験から、以下の「3つのタイミング」で業務を見直すべきだと言います。

(1)何かを新しく始めるとき
何かを新しく始めれば、時間と労力が割かれます。新しいことを始めるタイミングで、不要なタスクを書き出しましょう。何かをやめれば、必ず影響を受ける人が出てきます。「やめたらどんな影響があるか」を頭の中でシミュレーションしたうえで、関係者にヒアリングをし、チームでタスクを見直します。

(2)忙しすぎて業務がまわらなくなってきているとき
忙しすぎるときこそ、その原因となっている「日々の業務」を見直すべきです。しかし、忙しいときほど「そんな時間はない」というモードになりやすくなるため、結果、いつまでも忙しい状態が続きます。業務がまわらなくなってきているときこそ、To Stopリストを作るベストなタイミングです。

(3)非効率な仕事が増えてきているとき
何年も前に確立された仕事がずっとそのまま続いている場合には、注意が必要です。他のメンバーを交え、業務を客観的に見直すことで、不要なタスクが明らかになります。

その上で、著者はやめても問題がない5つのリストを明らかにしています。

①定例会議
定例会議は意外に時間を取られます。定例会議を試しにやめてみて、特に支障がない会議は大幅に頻度を落とす、もしくは完全にやめてしまいましょう。あるいは時短を徹底的に心がけるのです。

②引き継がれた業務
引き継ぎを受けた業務も、客観的に業務を評価し、問題ないものは思い切ってやめてしまいましょう。

③手作業のデータ集計・資料作成
データ収集、資料作成を自動化しましょう。RPAなどを活用する、インターンを採用することで、本当に重要な仕事に集中できます。

④社内向けに提供しているシステムやサービスで利用者の少ないもの
使っている人がいる限りなかなかサービスを停止できません。しかし、利用者が少ないのであれば、時間とコストをかけて続けていくのかを検討すべきです。

⑤事故の再発防止策を重ねた結果、慎重になりすぎている仕事
事故が何度か続くと、「原因究明のうえで再発防止策を講じるべし」 となり、 慎重に慎重を重ねて過剰なまでにチェックを行うルールになりがちです。過去の失敗にいつまでもとらわれるのをやめ、対策を講じた上で、業務ルールを見直しましょう。

しないことリストでシンプルに生きよう!

それでも業務の見直しが厳しいと考えている人には、「『しないこと』リストのすすめ」の著者、文化人類学者の辻信一氏の言葉を改めて紹介します。
(参考記事:https://tokumoto.jp/2014/09/180/

「すること」の増殖という現代人が抱え込んだ大問題の根本は、「過剰」にある。空間にモノをたくさん詰め込みすぎているように、ぼくたちは一定の時間の中に、あまりに多くの「すること」を持ち込んでいる。「すること」の過剰、つまり、「しすぎ」、「やりすぎ」なのだ。
過剰という問題を解決するにはどうすればいいか。そう、答えは引き算にあり。空間であれ、時間であれ、整理の基本は、溜め込みすぎたクラッターとしてのモノやコトを、いかに削減するか、だ。
※「『しないこと』リストのすすめ」(辻 信一著 ポプラ新書)より引用

私たちは日々増殖するタスクで貴重な時間を失っています。本当にやるべきことにフォーカスするために、自分のタスクを定期的に見直しましょう。

仕事だけではなく私生活でもTo Stopリストを活用することで、プライベートも充実します。悪い習慣をリストアップし、良い習慣に置き換えることで、豊かな人生を送れるようになります。

私は以下のリストを実践することで、自分のパフォーマンスをアップできました。
■お酒を飲まない。
■無駄な飲み会には出席しない、二次会には参加しない。
■夜更かしはしない。
■TVを見ない。
■集中したい時には、無駄話をしない。

自分の日々のスケジュールを見直し、無駄な時間を書き出し、やめることを見つけ、やりたいことに時間を配分しましょう!

徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)


出典:徳本昌大の書評ブログ!毎日90秒でワクワクな人生をつくる「小野和俊氏のその仕事、全部やめてみようの書評」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
iU 情報経営イノベーション専門職大学特任教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。
現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。
ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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