論点整理と議論の見える化がミーティングを活性化させる

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一般社団法人日本パートナーCFO協会代表理事を務める高森厚太郎さんが解説する「ミーティングを活性化するノウハウ」の2回目。前回の「オンライン会議で重要性を増す『ファシリテーション』のスキル」では、良い会議にするために必要なマインドやプロセスについてお話しくださいました。

今回は、「論点整理と議論の見える化」に必要なスキルについての詳細をお伝えします。参加意欲が高まり、メンバーが納得のいく良い会議が実現するはずです。

論点を整理し議論を活性化させよう

幹部クラスが参加する経営会議などをはじめ、企画検討や意思決定が求められるミーティングでは、議論の活性化が特に期待されます。この議論活性化に効果があり、ファシリテーターとして腕の奮い甲斐があるのが「論点整理」です。

論点を整理する目的には2つあります。

目的その1~現在地を認識する

論点を整理する目的の1つは、議論の全体像と現在地を示すことです。

議論が白熱してくると、話のスジが見えなくなって迷子になってしまうことがよくあります。特に、当事者として参加していると、背景も含めて内容を全部知っているあまり、逆に今どの点を議論しているのか混乱したり、議論の道筋が見えなくなったりしてしまうのです。そこで、全体像を確認しつつ現在地を示すことが大切になります。

この整理により、「結論を出すために、今何を考え、何を話さなければいけないのか」、参加者が議論している内容の全体での位置づけを再認識することができます。

目的その2~議論の舵を取る

もう一つの目的は、議論のさばき方を示すことです。

30分なり1時間なりの制約時間のなかで、納得のいく議論をして妥当性のある結論にたどりつくためには、議論をガイドするさばき方、プロセスやポイントを押さえる枠組みが有用です。

「今はこういうことを考えて議論すればいい。次はこれ」と、論点を分類してその枠に当てはめていくことができれば、議論がブレたり拡散したりせずに効率的な課題の検討ができます。さらに、会議の構成に沿ったしっかりとしたさばき方を準備できれば、考えるべきことやメンバーの意見をモレなく検討することができ、議論の効果も担保できるのです。

効率のよい論点整理を

フレームワークを事前に準備する

論点整理をしていく上で有効な方法として、「事前に論点が予想できるのであれば、自分なりの論点整理の枠組みを準備しておく」と良いでしょう。論点をその場でパッと考え付くのは難易度が高いです。例えば新規事業の検討であれば、業界内環境を分析する3Cなど使えそうなフレームワークを仕込んでおくのです。

議論を一旦中断する

また、「意見が活発に出る場合は、早い段階で一度話を止めて論点を整理する」のも有効です。活発に意見が出てくると、あれもこれもと意見が出てきて逆に収拾がつかなくなりがちです。意見が広がった状態で議論をたたむのは大変なので、ある程度早めに……ということです。

論点を板書する

議論の展開が読めない、途中で議論が整理できない、といった状況は往々にしてあります。そのときは、「主要な意見のキーワードだけでも板書しておく」と良いでしょう。議論が落ち着いてきた段階で、整理してみましょうと、キーワードをグルーピングして整理し、話を前に進めていくのです。

また、「書記役を決めて、論点のみ板書してもらう」という手もあります。ファシリテーターが板書する時間がない場合や、議論のなりゆきを追うことに集中したい場合は有効な手です。

参加者の意見を有効活用する

さらに、「自分で全て論点整理ができない場合は、参加者の意見をもらう」のもアリです。思ってもみなかった有効なアイデアが出てきたりしますし、参加者に思考モードの転換(例えば、拡散から収束へ)を促すきっかけになったりもします。

議論の展開を共有する

最後に、「ある程度話が煮詰まって論点が一通り出てきたら、論点を板書して、その後の議論はどの論点についての話なのかを共有しながら議論する」のは良策です。現在地を一旦確認し、ゴールに向けての論点を押さえた上で、話を転がしていきましょう。

論理思考ツールで議論を見える化しよう

論点整理の有効な方法を見ると、論点を整理するために、少なくともファシリテーターは「全体像、現在地、これからの方向性のことは分かっていないといけない」ことになります。さらに、整理した論点を参加者にホワイトボードなど何らかの手段で見せるため、「議論の見える化の方法を持たなければいけない」ことがわかります。

そこで使えるのが、自分が話を整理するためのツール、可視化するための方法論である「MECE(ミーシー)やロジックツリー、フレームワークなどの論理思考のツール」です。議論は目に見えないからこそ必要以上に話が複雑になり、大きくなりがちです。そんな空中戦の議論を構造化するために、ロジカルシンキングなどで学べる論理思考のツールが有効なのです。(論理思考ツールの詳細は次回お伝えいたします。)

いずれにせよ、目に見えない議論の交通整理を、その場の当意即妙でできるというのは、かなりの高等技術と言えます。だからこそ、これができるとバリューが高いのです。ファシリテーターはぜひ論理思考のツールを駆使して、論点整理と議論の見える化を行い、議論の活性化にチャレンジしてください。

次回は、「論理思考を可能にする4つのツールで議論を活性化させよう」をお届けします。

出典:マイナビニュース 「ミーティングを活性化させる『論点整理』のスキルとは」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

(高森氏の「中小ベンチャー」に関する過去記事はこちら)

高森 厚太郎
プレセアコンサルティング株式会社
代表取締役パートナーCFO

投稿者プロフィール
東京大学法学部卒業。
筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。
日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。

現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするベンチャーパートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。

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