人生を楽にするための教え“タオの思想”
- 2020/12/11
- 経営全般
何事にも前向きに一生懸命取り組むことを是とする社会では、ときに心が疲れてしまい、考えがまとまらなくなったり、すべきことができなくなったりする事態に陥ることがあります。経営においても、業績を上げることにだけ注力し過ぎると、思わぬ落とし穴に落ちてしまうことも…。
人生を楽にするための生き方・考え方は老子が説く“タオの思想”にあるとお話しくださるのは、干支暦学や数理暦学などをIT事業、企業研修に活用する講座を開催されている算命学カウンセラー協会の代表 山脇史瑞さんです。タオの思想には、閉塞感が漂い先の見えにくい現代人の生き方のヒントが隠されています。
目次
老子の思想“タオ”
老子の思想というと、何だか難しいように感じるかもしれませんが、タオという言葉、何となく聞いたことありませんか?タオというのは、老子という人が唱えた考え方です。老子ってどの位昔の人かというと、中国の春秋時代、日本でいうと縄文時代の人です。あまりにも昔の人すぎて、実在していたかどうかも分かりません。
この老子の唱えたタオとは何かというと、無という意味、仏教でいう空の概念と同じようだけど・・・
う~ん、ちょっとだけ違う、絶対無という考え方です。無・空とは、人間の理解を超えた力のことです。
タオは人間には抗えない自然の法則
人間の理解を超えた力とは、大自然の力、宇宙法則です。大自然の力には私達は抗えません・・・そう、無理なこと、無なことです。幾ら頑張って毎日努力しても、大地震で全てが崩れてしまいます。台風を避けることも出来ません。
そう、その力こそ、タオ。大自然の力、宇宙法則・自然の理屈というようなものを、タオというんです。この力には抗えないのです。
宇宙法則があるから、草木は大きくなるし、雪は解けます。幾ら雪かきしても、限界があります。タオの力が働いて、春になると、雪は自然に溶けるのです。
素直に流れに身を任せよう
人間がいくら頑張っても、タオの力にはかないません。幾ら頑張っても限界があるのです。そして、その限界の中で頑張ることこそが、私達の生き方です。タオがありとあらゆるところに働いているから、人間が何をしても、自然は廻っているのです。
それでは私達はどう生きればいいのでしょうか。老子は、水が高い所から低い所に流れるように、素直に生きること、自然に任せて、宇宙の流れにのることだと説きます。これこそが、老子の思想、タオの生き方です。
同じ時代を生きた老子・孔子・孫子
老子は何故こんなことを言ったかというと、当時の時代背景、春秋時代にあります。春秋時代はどんな時代だったかというと、周という国家が崩壊し、色々な国へと分裂した弱肉強食の動乱時代の始まりでした。今の競争社会なんていうレベルではなく、ちょっとしたことで、自分の命はもとより、一族全てが抹殺しかねない、そんな時代でした。
この時代に、老子と儒教で有名な孔子、軍略で有名な孫子が誕生しています。ちなみに、子とは、先生という意味です。老子・孔子・孫子、それぞれ年齢は違いますが、同時代の思想学の先生たちです。
考え方が対照的な老子と孔子
孔子は一度、老子の所に訪れたという逸話があります。孔子は仁義礼智信という考えを唱え、特に礼節というものに重きをおいていました。礼とは儀礼・礼儀・礼節。そのような意味と思って下さい。
《礼について教えて下さい!》と尋ねた孔子に対し、「まずは、その気負いと思いあがった態度を捨てるように・・・」と老子は諭したそうです。
孔子たちの儒家の思想は、《己を治めて人を治める》。とにかく頑張って、自らを律して立派な人になることで、信頼される人になり、世の中を治めることができる!と唱えています。それに対し、《頑張ることなんてない、我慢や努力をしないで、あるがまま自然の生き方こそ大切なんだよ》と、唱えたのが老子です。
紀元前5世紀が生んだ思想家たち
中国の三大宗教は何でしょう?儒教・道教・仏教です。
実はお釈迦様も同世代の人なのですが、インドで生まれたもので・・・その時代はまだ中国には伝わっていません。ちなみに、ちょっとお兄さんだけど、ソクラテスも同世代。紀元前5世紀組の同期といってよいでしょうか?
オンの思想“儒教”
この儒教と道教を、オンとオフの思想、建前と本音の思想、頑張る!リラックス!の思想と思って戴けたら、分かりやすいかも知れません。
中国人は、とにかくメンツを大切にします。これは中国人に限った事ではなく、私達は誰もがメンツを大切にしますね。
忙しい方がかっこいい。
SNSで人気者の方がすごい。
写真がセンスよくなきゃ、イケていない!
これがオンの思想です。
ルールに縛られるか、ルールから解放されるか?
孔子の唱えた儒教の主張は、建前の主張だと言われています。
カッコよくなるためには、目上の者には智を尽くし、目下の者には礼を尽くす、友人には仁を尽くし、家族には義を尽くす、自らは信を得る人間になれるよう努力しなさい。それを目指して、頑張ろう!これこそ理想の姿って説いたのです。
この考え方が、国家の規範思想になったもんだから、大変です。のんびりしている人は怠け者。リラックスする時間なんてない。世間の模範となる素晴らしい人になることこそ、親孝行の正しき道…なんて言われて、私達も育ったところありますよね。「そんなルールを作って頑張る事に、意味あるの?幾ら頑張ったって自然の力には叶わない・・・」と、説いたのが老子です。
儒家とタオのバランスが大事
「頑張れって!」っていうのが、孔子たちの儒家思想であり、「頑張ることないよ」っていうのが、老子の唱えたタオの思想です。
これ、どちらがいい悪いではないんです。人間には寿命があり、必ずいつかは死にます。長さに個人差はありますが、せいぜい生きても100年程度。大自然の営みからみたら、あっという間、一瞬の命なのです。
死んだらどちらにしても同じこと。どちらの方が自分の好みに合っているか、あとはバランスです。オンの思想とオフの思想、この2つのバランスをとることこそ、実は運勢アップの秘訣です。
タオの時代の到来
今、タオの思想が注目されています。何故かというと、高齢化社会と、時代が動乱期に入ったことにあるのではないかと思うのです。
頑張り過ぎた日本人
明治維新から150年、私達日本人は、頑張れ!の儒家思想が超マニアック化した朱子学というものを思想背景に持ち、とにかく頑張れ!二宮金次郎を模範としよう!みたいな感じで、ひたすら走り続けてきました。明治になり、開国してみたら、驚くほど世界は進んでいました。今まで超大国と思っていた中国が、アヘン戦争でイギリスにあっけなくやられるし・・・びっくりする事ばっかり。
そんな中国を尻目にそうなっちゃいけない、とにかく頑張るしかないんだって、とにかく頑張り続けてきたのです。あまりにも頑張りすぎて、訳のわからない軍国主義に陥り、抜け出ることも出来ず、それでもメチャ頑張っても、結局欧米の力にはかなわず、己の限界を知りました。災害大国は立て直しに強いので、戦後、ゼロからの立て直しで、これまた休むことなく、頑張ることになったのです。
閉塞感漂う社会にこそタオの思想を
頑張り続けたお蔭で、高度成長期時代、バブル経済という一時の花を咲かせましたが、桜のように一瞬で終わり、その後またこの状態です。日々頑張っているけど、何だか最近、どうにもならない限界を感じていますよね。どうにもならないと、国粋主義的考え方が強くなり、それが行き過ぎると軍国主義に向かってしまいます。
これじゃいけない!そこで考え方のオンとオフのバランスをとる為に、必要なのがタオの思想です。
頑張らない方法を老子から学ぶ
何もしなくていいというのではないんです。頑張らない方法を学ぶことが大切なんです。今はみんな頑張りすぎちゃっているから、このバランスをとるために必要な考え方に導くアドバイスを、老子はたくさん教えてくれています。
人生の陰と陽を使い分ける
リラックスの思想学、これが実は、一番難しい。この、何もしない、自然に同調するという考え方のノウハウをまとめたものが道徳経です。孔子と老子、2人の唱えた哲学を学ぶことは、運勢を安定させるためにも大変必要なことです。
運勢アップ!とは、エネルギーの使い方の効率性です。陰陽学なので、仕事では孔子の理論で頑張って、家に帰ったらタオの理論でリラックス。定年までは孔子の教えで頑張って、退職したら老子の教えでこころの豊かさを養う。陰と陽のほどよいバランスが心身を健やかにし、運気を呼び込むことに繋がります。
拡大された社会で小さな組織が重要になる
物の豊かさを求めていた時代は、頑張らなきゃいけないという孔子の考え方でしたが、こころの豊かさを求めていくと、老子の思想が求められてくるのです。孔子の儒教は大きな組織を構築するのに大変役立つ考え方でしたが、老子が理想としたのは縄文時代のような村社会、小さな組織の中でのこころの豊かさです。
インターネットによって、世の中がグローバル社会になっていきますが、陰陽理論を考えると、社会が拡大されるほど、小さな組織の重要性が増してきます。
運勢とは、運ぶ勢いって書きますよね。勢いとはエネルギー。つまり、運勢とは、エネルギーの効率的なコントロール。エネルギーコントロールに必要な考え方こそ、儒学思想と老荘思想《タオ思想》、これからの生き方のアドバイスに必要な知識です。
出典:「タオの思想」(一般社団法人数理暦学協会(MSAC))この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。