【書評】脳科学が明かすアートの力~幸福への近道

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科学に裏付けされたアートの効果

アートは現在、私たちの体と心を癒すために様々な目的で活用されています。
日常的な健康問題の症状緩和や病気の予防、病気や障害の治療、心理的サポート、慢性的な問題との共存、そして人生の終盤における慰めや生きがいの提供まで、その役割は多岐にわたります。

私たちの心身の状態を測定可能にすることが科学的に裏付けられたアートの効果については、ソーシャルワーカーや公衆衛生の専門家だけでなく医師たちも認め、治療や健康増進に活かそうとしています。
健康な生活に不可欠な運動や良質な栄養と同じようにアートをとらえ、私たちの健康を支える重要な要素として日常生活に取り入れることで、心身の健康を増進させることができるのです。
これらの知見は、アートが単なる文化的活動を超えて、実際の医療や心理療法の現場でも重要な役割を果たす可能性を示唆しています。

アートが学びを強化する

アートがよりサリエントな経験を創造すると、可塑性や神経結合、より良い理解がもたらされる。アートや美が教育や仕事、生活に統合されたとき、私たちの学ぶ能力が強化されるのである。

アートや美的な創作活動は、脳の特定領域を活性化させるため記憶力や集中力が向上し、シナプスの結合を強化して脳の可塑性に好影響を与えるようです。
例えば、絵を描くことで視覚野が、音楽を演奏することで聴覚野と運動野が刺激され、それぞれの脳領域の能力が高まるのみならず、記憶力の向上が仕事や学習の効率を上げ、集中力の増加が複雑な問題解決をスムーズにする可能性があります。

アートによる脳の活性化は年齢を問わず効果があり、高齢者の認知機能低下を遅らせる可能性も示されています。
アート教育が単なる情操教育ではなく、認知能力の発達に直接的な影響を与えることが科学的に裏付けられ、教育機関や医療施設でアートを積極的に取り入れるプログラムが展開されています。

教育現場で顕著な効果

学校では、従来の美術や音楽の授業に加え、他の教科とアートを融合させた総合的な学習プログラムを導入する動きが見られます。
アート教育の影響は芸術的才能の育成にとどまらず、学業全般や人格形成にまで及ぶため、アート教育を受けた生徒は、落ちこぼれる可能性が5分の1に減少し、成績優秀者とみなされる可能性が4倍に増加するという驚くべき結果が報告されています。

大学進学適性試験や読み書き、英語力の技能試験でも好成績を収める傾向にあり,絵を描くことや音楽を演奏することが、言語能力や数学的思考にも良い影響を与えているのです。
さらに、アート教育を受けた生徒は規律を乱すことが少ないこともわかっています。
アートが自己表現の健全な手段を提供し、感情のコントロールや社会性の発達を促進するためです。
アートを通じて自分の感情や考えを表現することで、ストレスや不満を建設的に解消する方法を学ぶことができ、創造性や批判的思考力を育むだけでなく、集中力や忍耐力も養うことができるのです。

教育の格差の解消

特筆すべきは、アート教育が教育の格差是正に貢献する可能性があるという点です。
すべての子どもたちが平等にアート教育を受けられると、家庭の所得格差や経済的背景に関わらず、どの子にも等しく創造性や自己表現の機会を提供できるでしょう。

著者たちは、子供たちが本当に学ぶべきことは、遊びとアートで育める以下の6つのCとだと指摘します。

  • Collaboration(コラボレーション)
  • Communication(コミュニケーション)
  • Content(コンテンツ)
  • Critical Thinking(クリティカルシンキング)
  • Creative Innovation(クリエイティブイノベーション)
  • Confidence(コンフィデンス)

アートは子どもたちの潜在能力を引き出し、より公平で創造的な社会を作り出す鍵となる可能性を秘めています。
今後、教育関係者や政策立案者は、これらの知見を踏まえ、カリキュラムにおけるアート教育の位置づけを再考する必要があるでしょう。

▶子供たちだけでなく老若男女すべての人の心と体にプラスの効果をもたらすアート。著者たちはその効果が「幸せ」に直結すると述べる本書の核心部を次ページで書評していただきます。

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徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
iU 情報経営イノベーション専門職大学特任教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。
現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。
ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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