苦手な人の活用こそイノベーションを創出する

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幕末の儒学者 佐藤一斎が、経営者やリーダーを支える“重職”のための心得を記した「重職心得箇条」から、8回にわたって紹介していく連載コラム。2回目の今回は、上司の手腕の分かれ道ともいえる“苦手な人の活用法”です。苦手な人をあえて活用し異なる価値観に触れてこそイノベーションは起こせると、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏が考察しています。

大臣の心得は、先諸有司の了簡りょうけんを尽さしめて、
是を公平に裁決する所其の職なるべし。
有司の了簡より一層き了簡有りとも、さして害なき事は、
有司の議を用いるにしかず。
有司を引き立て、気乗り能き様に駆使する事、要務にて候。(中略)
自分流儀のものを取り計るは、水へ水をさす類にて、塩梅を調和するに非ず。
平生嫌ひな人を能く用いると云ふ事こそ手際なり。

(重職心得箇条 第2条 佐藤一斎)


重職心得箇条とは、幕末の儒学者である佐藤一斎が、自藩の重役たちに藩の重職の心構えを書き記したものです。これを筆写するために諸大名が大金を支払ったという事からも明らかなように、経営建て直しのための「側近ノウハウ本」として珍重されてきました。


リーダーを支える側近である上司は、
部下に十分議論させ、
その意見を公平に捉えて
採決することが仕事だ。

そして、
自分の案の方が良くても、
全体に大きな影響を及ぼさないレベルであれば、
部下の発案を採用し、やらせてみた方が良い。

何故かと言うと、
モチベーションをアップし、
積極的に仕事に取り組む姿勢を
育むことが大切だからだ。

また、小さな過失をイチイチ気にすると、
使える人材などいなくなってしまい、
仕事を抱えこんでしまう事になる。

そうなると、本来のやるべき事が行えず、
組織の成長は止まってしまう。

要職にある者は、
全体をみながら現状を正しく認識したうえで
自分の中で折り合いをつけることが大切なのだ。

優秀な人材など、
わが社にはいないと思う人もいるだろう。

しかし、良く見ると、
それ相応の者は必ずいるのだ。

残念なことに、
個人の好き嫌いが邪魔をして、
本質的な資質を
観ようとしなくなっているのではないか。

好きな人物には、大いに期待をする。
そのため、その期待に応えられないと、
大した人物でないと判断してしまう。

嫌いな人物は、自分の考えに異を唱えるから、
しっかり観ようとしない。
そのため、功績を立てても
無意識にスルーしてしまうのだ。

自分のバイアスで人材を観る限り、
同じ価値観の者を登用するので、
従来の枠から出られず、
イノベーションなど起こせない。

自分の考えの盲点を突いてくる人を説得し、
自分自身の考え方を改めない限り、
イノベーションは起こせない。

苦手な人をいかに上手に活用するか、
それこそが上司の手腕である。

出典:Wikipedia

佐藤さとう一斎いっさい(1772~1859年)は、美濃(岐阜県)岩村藩の代々家老を務める家柄に生まれ、幼少の頃から聖賢の経書に親しんだといわれています。22歳の時、大学頭・林簡順の門を叩き、儒学で身を立てることを決意。林家の養子となり、34歳で林家の塾長に抜擢されます。多くの門弟の指導に当たり、70歳のとき、現在の東京大学総長の立場である昌平黌の儒官に任官。日米和心条約の外交文書の作成にも携わりました。

出典:東洋古典運命学「経営者を支える者の心得②  酒と料理の組織論
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

山脇史端
一般社団法人数理暦学協会 代表理事
算命学カウンセラー協会主催

投稿者プロフィール
13代算命学宗家・故高尾義政氏・清水南穂氏直門下生として、清水氏に20年師事。当協会の学理部門を総括する。
一般社団法人数理暦学協会代表。
担当講座は、干支暦学入門講座・干支暦学1級講座・講師養成講座・数理暦学講座など。
IT事業、企業研修、オンラインシステムの運営を担当

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