クラシック音楽の祭典
――その後も色々と変革されていますが、ターニングポイントはありましたか?
福田氏――これまでのピティナの軌跡をグラフで見ると、ずっと綺麗に伸びています。
1997年から始まった、ピアノ学習の成果を発表する場であるピティナ・ピアノステップの開発や、ブルグミュラーコンクール、バッハコンクールなどの提携コンクールの企画・開催などがターニングポイントになったと思います。
2005年から丸ビルの音楽プロデュースを開始したことも転機となりましたね。
今までのクラシック音楽は、ホールで演奏するのが当たり前。
でも、もっとアウトドアでできないかと思っていました。
2002年に丸ビルができたとき、「ここでいつか必ずコンサートをやるぞ!」と社員に想いを伝えたものです。
自分では覚えていないですが、文化庁の人にも言ったらしく、その縁で丸ビル関係者を紹介されて、2005年の年末に第9(ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」)のコンサートをやれることになりました。
続けて、クラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ※」の日本版として丸ビルを会場にコンサートを開催するなど進めて行くことができました。
※1995年に創設され、フランスのナントで年に一度開催されるフランス最大級のクラシック音楽の祭典。日本ではそのまま訳して「熱狂の日」音楽祭とも呼ばれる。(wikipediaより)
YouTubeを始めとしたデジタルなクラッシック啓蒙
――福田さんの思いが形になっていったわけですか!YouTubeへの取組も早かったですよね。
YouTubeのチャンネル開設は、YouTubeがアメリカで設立された翌年の2006年でした。
早かったと思います。
そして、昨年2020年に登録者数が10万人を超えました。
2018年にコンペ特級ファイナルでグランプリをとった角野隼人さん、今ちょうど開催中のショパンコンクールに挑戦中ですが、YouTuber「かてぃん」としてYouTube上で活躍の場を広げるなど、YouTubeがクラシックにもたらした影響は大きいです。
コロナ禍のなか開催となった2020年度の特級グランプリ決勝においては、YouTube Liveの最大視聴者数は8,000人を記録し、ピアノコンクールの配信として大きな転機となったと思っています。
今各地に広がっているストリートピアノも、リモートカメラを介していつでもYouTubeで演奏を見ることができたら面白いと思います。
過去には、渋谷のライブ開催できるダイニングバーをゴールにして、各エリアのトップストリートピアノが競うというアイデアもありましたが、文化的なイベントもビジネスとして何かしらの価値を生み出すものにならないとデベロッパーなどの企業の食指も伸びない。
そこが難しいところですね。
――対面での演奏が当たり前だったピアノ業界にとっては、今回のコロナは大きな過渡期になりましたね。
福田氏――コンクールも2020年度は一部上位クラスのみ開催して、ほかはクローズし、課題曲チャレンジという動画審査を行いました。
2021年度は、リアルと動画の両方で開催し、動画審査は順位がつかないものの、1,800人の応募がありました。
今後、どうなっていくかは未知ですね。
ピティナ・ピアノコンペティションは4つの時代「四期」を学習する総合コンクールですが、惜しくも本選に進出できず本選の課題曲の発表の場がない方や、「四期」の学習を完遂したい方のための動画コンクール「準本選」を今回、新設しました。
こちらも300人ほどの参加者が集まったので、いいのができたと満足しています。
――それは楽しみです!コロナ禍前から、システムに重きを置き拡充されていたことが功を奏したのですね。eラーニングシステムの利用者も多いのでしょうか?
福田氏――そうですね。
700~800人の利用者とgoogleのYouTubeメンバーシップを入れると4,000人くらいですね。
まあまあ伸びていると思いますが、まだ、手が回ってない感じです。
弊社のシステムは全部自前で作ったものですが、今の規模でシステム数は20を超えていて、維持管理が非常に大変です。
システムエンジニアの採用も積極的に行っていまして、今は、ここで働いて楽しいと思える人にいて欲しいと考えています。
この続きは最終回となる後編「音楽で人と人を繋ぎ平和の礎に」でご紹介します。
※資料は福田氏より提供されたものです。