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短期集中でのIT移行
――DX化のためにはITリテラシーの高い人材を入れないといけないのでしょうか?
高橋さん――うちは幸いなことに前職で学んだノウハウと、ITに強い人材が社内にいることで、分からないことも教えてもらえる環境があります。
だからこそ、DX化を急激に進められたのだと思います。
――どれくらいの期間で変えていかれたのですか?
高橋さん――まさに、ここ数か月でほとんどが移行できました。
経理業務全体ではちょうど1年ぐらい経ちますが、請求業務や伝票管理などはここ数か月でデジタル化しました。
社内のデータベース共有化やMessengerなどでのやりとりも、1年ぐらいでの移行です。
システムの混在が招く課題
――データベースの共有システムは現在、どのようなものを使用されているのでしょうか。
田澤さん――いろんなシステムが混在しているという状態ですね。
今後、システムを入れていくときに、仕様の異なるものがいろいろと組み合わさっているという既存システムのブラックボックス状態が、経営者にとって大きな負担になるだろうと思っています。
DXを本格的に展開するためには、既存システムを刷新し変化に追従できるITシステムが不可欠です。
しかし現状は、
- データを活用しきれていない
- 維持管理費が高騰していくことで技術的負債が今後一層増大する
- 保守運用者を確保できない場合にセキュリティリスクが高まる
等の課題に直面しています。
多分このままいくと、大企業が歩んで来たIT化の迷走を中小企業も踏襲するんじゃないかという怖さを感じます。
やはり、課題を個別に判断してシステムを決断していくと、その時々で必要なシステムを導入することになって、結局、仕組みが重複したり分からなくなったりする不安を抱えることになります。
高橋さん――ベンダーの言いなりだと、そうなりがちですよね。
誘われるままに決断しないように、ある程度経営者がITリテラシーといえる情報のアンテナを持ってないといけないですね。
――荒木さんの会社ではグループウエアを継続されていますが、抱えている問題はありますか?
荒木さん――同じ会社のグループウエアで機能が全く違うシステムを2つ持っていて、1つは社内情報の共有やワークフローなどに使用するもので、もう1つの方ではいろいろなシステムを作ってもらうようにしています。
ところが、なかなか要望通りにならないことがあり、非常にもどかしく思っているところです。
社内人材の育成が急務
――社内で要件定義する際にディレクションする人材はいますか?
荒木さん――いないんですね。
グループウエアの話だけじゃなく、人事労務のシステムでもうちの雇用形態に合わないものがあって、ちょっと変えてと言っても、なかなか思うようにならずに時間ばかりが過ぎるという経験もしました。
かといって、こちらのやり方を変えるのは本末転倒ですから、エンジニア側とのコミュニケーションには一番苦労しています。
田澤さん――DX化にはCDO(チーフデジタルオフィサー)が必須だというのは本にも書かれていますし、人づてにも聞く話ですけど、中小企業経営者は追いついていないのが実情です。
そういった人材にたどり着かないし、適合度合いも分からない。
だから、どうしてもベンダーさんを頼らざるを得ないんですが、ベンダー側の売りたいものが偏っていることが多い。
でも、最終判断は社長に求められる、という(笑)
どこの企業もそんな悩みを抱えていて、大きな課題ですよね。
荒木さん――CDOの雇用を、フルタイムでは負担だと思い兼業副業で募集したことがあります。
でも来てくれたのは、中小企業を知らない人がほとんどでしたね。
大手企業でのシステムエンジニア経験は中小企業には当てはまらず、理解してもらえたとしても今度は金銭面で合わず、泣く泣く諦めるといった経験もあります。
――みなさんいろいろとご苦労があるようです。
後編「DX化が企業の集団総合力向上に貢献する」では、中小企業が抱えるDX化への悩みを、2代目お坊ちゃん社長の会がどのように支援していくかについてお話を伺います。
前編「今更きけないDX経営〜レガシー企業文化からの脱却 2代目社長のDX」はこちらから
参考:経済産業省「DXレポート」