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海外ネットワーク構築で160か国以上に申請可能に
――家業のなかで従事されるのも大変だったのですね。自分らしさを追求され、どのような強みを得たのでしょうか。
筒井氏――外国の方とのコミュニケーション力とネットワークです。
父の事務所に入社した翌年から1人で国際会議に行き、国内のお客様の外国の案件を担当してくれる代理人を探したり、逆に外国のお客様を探したり、コロナ禍に見舞われる直前まで続けるなか非常によいネットワークを構築することができました。
現在は160か国以上の国々に代理手続きできるようになっています。
――160か国以上の国々に特許を申請できるのですか!すごいですね!
筒井氏――ありがとうございます。話はそれますが、私は弁理士の仕事をしながらお菓子好きが高じてパティシエ修行をした経験があり、パティシエになろうか、弁理士を続けようか迷ったこともあったんです(笑)
それで、フランスに行きたかったことと、弁理士を続けるなら外国で特許事務所の支所を開きたいと思ったことから、語学もできないのにフランスの知的財産の大学であるストラスブール大学の専門コースに入学することになるんです。
フランスで弁理士になるために出なければならない大学です。
ご縁があり、今では同大学で年に2回程度、1週間の知的財産コースの講師をさせていただいています。
ブランディングや価値評価の分野を広げたい
――特許事務所を取り巻く環境はいまどのようになっているのでしょうか?
筒井氏――日本の製造業の生産能力が落ちてきていることに、まず問題を感じています。
特許制度は製造業がつくる製造物を保護する仕組みとして発展していて、アプリケーションやビジネスそのもので特許を取ることは難易度が高いです。
ですが、海外の産業に対して競争優位性の高いこれらの知的財産権をきちんととっていくことが日本の産業の発展に大切なことだと思っています。
今後、知的財産権の制度がどのように発展できるのか?というのは非常に大きな課題だと思っています。
また、少子化に伴って人手不足も問題です。
安定を求めて弁理士になる方が多く、企業勤務に人気が集まるので、特許事務所の人材採用は非常に困難な状況です。
――なるほど。内部環境はいかがですか?
筒井氏――この業界は今まで特許が中心で、特許の仕組みをベースに動いています。
なので、新しいタイプであるブランディングや価値評価についてはまだまだ手が届いていない分野です。
私はこの部分を深く学んできましたので、これからぜひ進めたいと思っているところです。
――知的財産を守る「弁理士」は数ある士業の中でも人数が少なく、変化し続ける「ものづくり」の幅広い分野に対応している現状がよく分かりました。
後編「世界的視野をもつ弁理士として顧客のビジネス成長に尽力」では、商標権の取り扱いにおけるトラブル事例や、世界的な潮流に対応した業務変革などに関する展望をお話しくださいます。