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社長判断に委ね、共に歩む再生への道
――ご自身が再生系のお仕事をなさる中で、ご自身の経験から苦しむ社長さんへの対応の仕方がよく分かったのではないですか。
筒井氏――はい、その通りです。
中小企業診断士のひと言ひと言が経営者の気持ちを大きく変えることになるので、逆に、苦境に立つ方々の実情を知っていないと企業再生再チャレンジの支援は難しいかもしれません。
経営者の皆さん、本当に頑張っていらっしゃるので、「頑張って」という言葉は言えませんね。
経営者に寄り添う
私の場合、「どうしたいですか?」と聞き、最終決断は社長にしてもらいます。
正常な判断が難しくなっている場合は、奥さんや息子さんも交えた話し合いのなかで決めてもらいます。
決断するまで、どの会社さんに対してもこっちから「こうしましょう」とは一切言いません。
法的手続きに入る方がいいケースや、そのまま継続させたほうがいいケースなど、会社によってさまざまなので、よく話し合って決めます。
実行し継続することこそが成功を引き寄せる
――これまでいろいろな社長さんに会われたと思いますが、「失敗するパターン」というものがあれば、教えてください。
筒井氏――言ってもやらない。もう、これは最悪です。
逆に、言ったことをやる社長は、絶対うまくいきます。
以前、30代になったばかりの社長さんのオファーで香川から最終便の飛行機で東京に飛び、そのまま新宿のカラオケボックスに入り朝までバンクミーティング※4の発表の練習に付きあったことがあります。
その社長は、計画書がボロボロになるぐらい見直し、実行し続け、今では都内で順調に経営する成功者です。
あのパワーには感動しました。
うまくいくためには、実行力が一番です。ゆっくりでもいいから、やり続ければそれなりに成果は出ます。
※4 取引金融機関を集めて経営再建のために協議を行なうこと
――また、人を巻き込む力などもないと、再生は難しいように感じるのですが。
筒井氏――中小企業活性化協議会(旧再生支援協議会)が私を紹介する時、「怖い先生やで」と紹介してくれます(笑)。
でも要は、耳障りが悪いこともちゃんと受け止められなければ、再生は難しいということです。
いいことばかりを言う人だけをそばに置いていては、たぶん先はない。
プライドが高い社長のなかには人の話は聞かないし、実行しないという方が多いのですが、これはいけません。
事業や経営の方向転換は早い段階に
――コロナ禍が長く続き、苦しんでいる社長さんも多いでしょうね。どんな言葉をかけますか。
筒井氏――苦しまなくていいです。命を捨てるなんて、もってのほか。
今はいろいろな窓口や支援策が出ているので一緒に考えましょう、ということを強く訴えたい。
悩んだり、落ち込んだり、病気になる前に、元気なうちに方向性を変えて楽しく事業を続けましょう。
先日、決算書を握りしめて、「破産するしかないでしょうか」と問い合わせてきたご夫婦がいました。
内容を見ると、私が担当している会社さんよりよっぽど良かったので、「どうしてこの段階で苦しむの?」と言ったら、奥さんが泣き出してしまいました。
経営難を乗り越える方法はいろいろあることを知らないから苦しんでいらっしゃるのですよね。
このように不安に思っている方をスムーズにいい方向へ導く専門家が、もっと増えて欲しいと切に願っています。
ーー中小企業診断士として多く経営者と向き合う中で目の当たりにしてきた「失敗しやすい例」と「成功を引き寄せる例」や、「事業を楽しく継続する」ためのに助言は多くの経営者の方に響くものと思います。
後編「力に屈せず正しいと信じる道を貫き、中小企業の悩みに寄りそう」では、コロナ禍で変化した社会情勢や企業の態勢を解説し、経営者が社会の荒波を乗り越えるために必要なポイントを示してくださいます。ぜひ、お読みください。