「M&Aの実務において、他士業とのパートナー連携は大切です」【白石直之×東川仁②】
- 2020/12/23
- M&A
中小企業診断士、㈱つながりバンクM&Aシニアアドバイザーとして活躍する白石直之氏。
2017年の独立当初は融資や補助金をメインに考えていましたが、その折、齋藤由紀夫氏のセミナーに出会い、スモールM&Aの道へ。
前回は白石氏がM&Aアドバイザーに転身したきっかけなどお話していただきました。
今回は、案件の依頼元や、M&A業務を一緒に行う、またはバックアップしてくれる心強い他士業の方々について語っています。
株式会社ネクストフェイズ編集部と同社代表の東川仁氏による軽快なインタビューシリーズ第2弾!
目次
M&A案件の依頼はどこから?
白石 今、私が直近で手がけている案件は、大手リース系企業経由です。
編集部(以下省略) あのよく聞くところですね。
白石 彼らはM&Aを始めたばかりなんですよ、大きい案件はずっと手がけていたのですが。
―― ところが近ごろ、サバに手を付け始めた?(サバやブリのお話は前回記事を参考に)
白石 ブリぐらいですかね。報酬で1000万ぐらいですから彼らにとっては小さいんですけど、売り手も買い手も見つけてきてくださったりして。
―― そこで白石さんのおられる株式会社つながりバンクに、実務を依頼してくださるんですね。
白石 そのとおりです。
信頼関係に繋がる他士業とのパートナー関係
―― ではその大手リース系企業との関係を維持するためには、先ほどの話に戻ると、信頼が大事だと。
白石 はい、小さな案件もていねいに対応して、一つひとつ実績を重ねることだと思います。そうそう、信頼関係といえば。
―― 信頼関係といえば。
白石 M&Aの実務において、他士業とのパートナー連携は大事ですよ。
―― というと。
白石 資格によって、それぞれ得意・不得意分野がありますから。企業規模にもよりますが、ひとりでは完結しにくいことも多いですしね。
―― 小規模企業など「スモール」なM&Aは?
東川 それはひとりで行う。
白石 たしかに基本的にはひとりなんですが、ちょっと相談したいなあ、なんてときがよくあるので、そこはやはり依頼しますね。たとえば税理士に節税に関して相談したり。
―― では一般的な「チーム編成」は?
●「他の士業・コンサルタントと、どう連携していくか。またセミナー等行うことがあればお伝えしたいと思います!」(白石さん)
M&Aを遂行していく心強いチーム編成とは
白石 まず私の役目であるM&Aアドバイザー。これは、どの士業・コンサルタントでもできますよ。周りだと中小企業診断士が多いのかな。STP戦略、企業価値評価に必要な財務の基本など、資格試験で勉強したことが役に立ったなあと思うことがいっぱいあります。DCF法も概略は学んでいるので、専門書を読んだりすれば、M&A経験のない会計士には負けません(笑)。
―― 2019年の「スモールM&Aアドバイザー入門セミナー」では、企業内診断士も多く来られました。組織内でそういった事案を持っておられる方も、またこれから独立を考えている診断士も、両方おられましたね。
白石 ほかには法人との関わりが深い保険営業にも、スモールM&Aアドバイザーの知識はあるといいですよ。
東川 スモールM&Aアドバイザーなら、行政書士も適していると思う。とくに建設業や風営法絡みの顧客を持っていると、事業承継の相談を持ちかけられやすいねん。
白石 顧客と顧問契約など関係をすでに持たれている方は、動きやすいと思います。
他士業との連携がカギ
―― アドバイザー以外のメンバーとしては。
白石 先ほどお話しした税理士、公認会計士など、数字面をきっちりおさえてくれる士業ですね。企業規模が大きくなると責任のリスクが出てくるので、会計士に依頼してレポートまで作らないといけない局面も出てきます。
―― 数字面のほかには。
白石 法務面を見てくれる弁護士や司法書士です。
東川 法務デューデリとして。契約書の事例とか?
白石 契約書はね、特別なことをしなければだいたい同じなので、私がいくつかご説明すれば大丈夫なような気がします。たとえば雛形の問題や、「ここだけは」というポイントなどですね。私の場合、司法書士にお願いすることが多いのですが、新型コロナの影響で増えてきた再生案件だと、弁護士は必須です。でも…。
効率よりも大切にしたいものがある
―― でも?
白石 弁護士なら誰にでも依頼できる…というわけにはいかないかも。
―― というと?
白石 弁護士側の事情をお話しすると、わりと破産をすすめがちなんです。手続きも、ある程度は型どおりで進められますしね。その点は大いに理解できるのですが、私が従事しているような再生手法だと、ちょっと手間がかかる(笑)。だから多少の手間はかかっても、依頼してくださった社長のためになることをやってくれる弁護士さんと組みたいなあと思います。
―― 社長のために。
白石 破産すると、従業員への給料を払った後には破産管財人と弁護士が分け合い、その後ようやく社長に残る…という形がほとんどです。しかも案件や弁護士によっては、報酬の額が数千万になったりすることもあって…、それだと社長にあまり残らない。もちろんそんなのはレアケースですが。
人事デューデリは難しい
―― ほかの士業は?
白石 再生型M&Aだと、弁護士のほかに、再生コンサルタントを付けるケースが多いですよ。
―― 社会保険労務士は?
白石 社会保険労務士は、買い手側についていることが多いですね。
東川 人事デューデリやね。
白石 人事に関連する問題は多いです。昨今は未払い残業代でトラブルになるケースも少なくありませんから。余談ですが、人事デューデリでは退職金を見逃すこともあって、これは「M&Aの失敗あるある」なんですよ。
ちょっとした「相談事」ができる大切さ
東川 小規模M&Aは基本的にひとりで行うけれど、こうして他士業との連携が大事だと。
白石 はい、こうして自分で動き始めてから実感しているんですが、先ほどもお話ししたように、税金や法務のことで、税理士や司法書士に対する有償の「依頼」というほどではなく、「ちょっと聞きたい」くらいの疑問が出てきます。だからそうなる前の段階で別の業務依頼などをしながら連携していたら、とても心強いですよね。
―― 白石さんも、スモールM&Aを手がけるようになってから、別件の仕事を頼まれることも増えたとか?
白石 そのとおりです。たとえば…。
次回は、「スモールM&Aから派生したビジネスとは?」についてお話します。
出典:株式会社ネクストフェイズ白石直之中小企業診断士インタビュー記事
全5回<士業にスモールM&Aへの参画をすすめる理由は?>【2】 ひとりで抱え込まず、他士業との連携でスモールM&A」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。