M&Aの買手は誰でもなれるが、誰でも成功する訳ではない

中小企業庁は、2021年8月2日にM&A支援機関に係る登録制度を創設し、登録申請受付を開始しました。10月までに2,278件(法人1700件、個人事業主578件)が登録されています。
仲介アドバイザーの増加とともに、新規事業や、成長戦略手段として、ますますM&Aが注目されることが想定され、買手企業も急増しています。
このように、M&Aの市場は大きくなっているものの、全ての取引がうまくいっているとは限りません。
M&Aを検討する方々が、幸せなM&Aが出来るよう、少し立ち止まってみるのも大切です。

M&Aの成功確率は、大企業でも半分以下

M&Aに関する調査で、事業を維持できずに「売却」してしまったケースについて、米国の経済学者マイケル・ポーターが、過去20年以上に渡り行った研究があります。
その研究結果では、M&Aで新規事業を行った企業の大半が、その後事業を維持することが出来ずに売却してしまったことが明らかになりました。

特に新しい分野でのM&Aは、それ以上の確率で事業を手放していることが分かりました。

中小M&Aに潜む独自の難しさ

組織が小さい中小零細企業のM&Aにおいては、社長個人、もしくは特定の人物にスキルや顧客が紐づいているケースが多いのが実態です。中小M&Aの難しさのひとつはここにあります。
いわゆる「非認知資産」と言われる分野ですが、中小M&Aにおいては非常に重要な要素となります。
中小M&Aを手掛ける際には、これら認知しにくい主要資産を引き継ぐことができるのかといったことを、限られた情報の中から分析することが求められます。

熟練のM&A投資家は、そのようなリスクを見抜くのが例外なく得意です。
数字よりも対象事業が「仕組化」されているのか、また、キーマンが辞めても継続できる事業なのかどうかを気にするのはそのためです。

当事者意識を持つ

成功者と失敗する方の大きな違いは何でしょうか。様々な要因がありますが、その中でもひとつあげるとすれば「当事者意識」の違いです。
案件発掘、交渉、デューデリジェンス(資産査定)というM&Aの一連の主要な取組みを、他人に丸投げするのではなく、主体的に考えながら専門家を使うという姿勢が必要です。

失敗しても外部の専門家は責任を取ってくれません。揉めても、不毛な時間をさらに費やすだけです。

事業投資戦略は内製化する

経験値を積みながら、M&Aのノウハウを内製化、もしくは社長自身が全体を理解し、社内外のリソースを使いこなすディレクターのような存在になることが成功への近道です。
そこに至るまでの時間を短縮するために専門家を使う、という発想は正解ですが、成功者に学ぼうと多くを聞きに行ったとしても、求める答えがあるとは限りません。

逆に、失敗した事例から学ぶ方が本質に近づけるかもしれません。

勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし

プロ野球の野村克也元監督や、江戸後期の平戸藩主、松浦静山が語ったとして有名な言葉です。
M&Aにも通じるものがあります。

まずは自社分析とミッション、ビジョン

では、何から手をつければ良いのでしょうか。意外と思われるかもしれませんが、まずは「自社分析」です。
どのような強みがあり、弱みは何かを正しく知ることがすべての基本になります。

ひょっとしたらM&Aすることなく、自社で新規事業を立ち上げる方が早いとか、既存ビジネスを伸ばす方がチャンスがあるという結果になるかもしれません。それならそれでよいのです。
最近では成長の鈍化や本業不振による理由で、買手としてM&Aを検討するケースが見受けられます。

ですが、一旦立ち止まって考えてみてください。その選択肢は、一時的な逃避ではなく、もっと先を見て選んでいるものなのか。会社のミッション、ビジョンに沿っているのか。
関係者、対象会社からの共感を得られないM&Aは、結局のところ失敗リスクを高めてしまいます。
新規参入者がどんどん増え、M&Aに対する期待度が高まる中、このようなあまり楽しくない話をしたのは、M&Aで不幸になる方々を減らしたいという想いからです。

成功確率を高め、不幸な組み合わせが増えないことを願います。

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表

投稿者プロフィール
株式会社つながりバンク 代表。
オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。
スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士、日本外部承継診断協会 顧問。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

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