企業理念の継承こそが未来を繋ぐ架け橋となる(前編)
- 2021/9/8
- インタビュー
グループ総売上350億円、従業員600名の株式会社カクイチは、明治より135年続く老舗企業。5代目となる代表取締役社長の田中離有氏は、農業用資材製造・卸からスタートした会社を継承して太陽光発電やホテル経営といった新分野への多角的な事業展開を行い、高い業績と評価をあげていらっしゃいます。創業時からの企業理念「日本を農業で元気にする」を貫く信条が、経営のさまざまな局面で生き、イノベーションの根幹となっていることについて熱く語ってくださいます。インタビュアーは、経営コンサルタントで税理士でもあり、Z-ENにもご寄稿いただいている一般社団法人数理暦学協会理事長の鈴木道也氏です。
目次
「日本を農業で元気にする」を理念に
鈴木道也氏(以下、鈴木氏)――老舗企業である株式会社カクイチ(以下、カクイチ)の創業とこれまでの経緯について教えていただけますか。
田中離有氏(以下、田中氏)――弊社、カクイチは、明治19年に長野県にて創業した銅鉄金物商「田中商店」がルーツになります。
終戦後、3代目の社長である父、田中健一が、小売業を鉄の問屋業に、更に1963年にガレージや農業用物置事業を興し、製造業へと会社を転身させました。
また、農業支援の一環として、農業・土木用の樹脂ホース製造も開始。
40年前に樹脂ホース事業を米国に進出させたことで、現在、日米生産量ナンバー1の樹脂ホースメーカーとして成長しています。
東日本大震災を機に発電事業をスタート
鈴木氏――長い歴史を持つ企業の転機となったのはどのようなきっかけでしょうか。
田中氏――創業から現在まで、弊社には「日本を農業で元気にする」という一貫した理念があります。
その理念が試されたのが、東日本大震災です。
未曽有の大災害時に弊社が提供できるものは何か、どうすれば日本に役立つことが出来るかという視点で、原点に立ち戻り考えた結果、災害時だからこそ気づけたのは、安心できる空間と再生可能で環境に優しいエネルギーの大切さだという結論に至りました。
そこで創案したのが、弊社が製造していたガレージの屋根に太陽光パネルをつけることです。
非常用電源の確保と同時に、発電した電気を弊社がまとめて電力会社に販売することで、ガレージのオーナーは弊社の無料メインテナンスサービスを受けながら電気発電の賃料が得られます。
これは弊社にしか出来ないことだという使命感を抱き、発電事業をスタートしました。
大災害時に求められるもの
鈴木氏――震災をきっかけに新たな事業を起したのですね。
田中氏――更に、私たちは考えました。
これからの日本に必要なものは何か、
私たちにしか出来ないことは何か。
弊社が提供したカクイチの倉庫は一軒も倒壊例がなかったことから、災害時の安心安全な空間の提供と同時に、屋根にソーラーをつけることで非常時でも稼働する電気の供給を可能にします。
また、もう一つ大切なことは、安全な水と食の提供です。
滋賀県岩間山の花崗岩を採掘していた鉱山から、超軟水の地下深層水が湧き出すことを知り、全国に通信販売する事業を始めました。
たった1か所の源泉から、毎分80リットルしか採取できない貴重な水なので、経済的事業メリットはありません。
しかし、利益よりも日本の大切な水源を守り次世代に継承せねばという想いで始めました。
▶震災を機に発電事業を始められた田中さん。太陽と水という自然エネルギーを地域創生に繋げるビジョンについて次のページで語っていただきます!