力に屈せず正しいと信じる道を貫き、中小企業の悩みに寄りそう(後編)
- 2022/9/20
- インタビュー
都市圏よりも中小企業が多い地方経済においてこそコロナ禍の影響は大きく、その深刻さを増していますが、そんな課題に直面する中小企業の声に耳を澄ますことこそが中小企業診断士だとお話くださるのが筒井恵さんです。筒井さんご自身がご経験された会社の破産と再チャレンジについて語っていただいた前編「中小企業を未来に繋ぐ!中小企業診断士にいま求められること」に続き、後編では、企業を主体にとらえた経営体制の改善や再生について伺っています。筒井さんが示唆される、経営者として社会の波を乗り越え自社を継続するために必要な観点は、Z-EN読者の方々にも参考になることでしょう。
融資の転換と補助金の多様化
Z-EN――コロナ禍で課題を抱える企業が増えていると思いますが、その企業に向き合う金融機関のスタンスもずいぶん変わりましたね。どうご覧になっていますか。
筒井恵氏(以下、筒井氏)――銀行が融資する際、今までは融資先の経営状況を細かく確認し、融資資金使途も限定していました。
ところが、2020年にゼロゼロ融資※1が始まってからは、状況確認もそこそこに資金使途を問わず実際には運転資金としてザブザブ融資し、さらに補助金も出していました。
私が経営者に資金の調達方法を聞くと、「コロナ融資でやる」という会社さんが山ほどいらっしゃいます。それまでの概念が崩壊しましたね。
*1 ゼロゼロ融資:コロナ禍を受け、2020年に政府系・民間金融機関が、売上が一定水準を下回った中小企業・小規模事業者向けに、実質無利子・無担保、元本据え置きで融資する制度
地銀も企業も新たなビジネスモデルの構築を
――その状況を踏まえて、今後、銀行や経営者は、どのように乗り越えればいいでしょうか。
筒井氏――特に地方銀行は、これまでのように金利で稼げるわけでもなくなっています。
行員の副業を認めたり、なかにはカフェを始める地方銀行があるくらいですから、言ってみれば金融機関も「何をしてもいい時代」になったのです。
金利ではない“稼ぎ口”を新しく見つけるべきだと思います。
会社としては、金融機関によらない借り入れ方法も増えるなど、選択肢が増えているのはいいことです。
これからの会社は、ビジネスモデルをしっかり見極めていくべきです。
経営者は「数字」と向き合うべし
――再生を目指す企業の中には、「数字に弱い」という社長もいるようですね。
筒井氏――数字、つまり会計などの管理は慣れるものです。
経営者から最近、破産の相談が多いのですが、経営者ご自身が数字を見ていないパターンが非常に多く見受けられます。
私も数字は嫌いでしたが、仕事上、多い時は日に5社分もの決算書を見ているうちに慣れました。
経営者には「自分で握っておかなければいけない数字」があります。
嫌いでもいいけど、逃げるのはダメ。大事な数字を把握しておくことが重要です。
管理会計はいまやクラウドシステムやさまざまな会計ソフトもあるので大きな費用はかからず、行えます。
システムに入力できるようになれば、社員はもちろん、派遣の方でも作業がスムーズにできますし、向こう3か月ほどの売上や受注、入金見込みなども明確に把握できます。
コロナ前からの借り入れ、ゼロゼロ融資の返済が始まろうとしています。
重要なのは、自社が採算とれるビジネスモデルなのかどうか見極めが急務です。
▶地方ではコロナ禍を受けて融資を受ける中小企業が増え、その融資をする金融機関そのものも新たなビジネスモデルの構築が急務となっています。そんな全国の企業に寄りそう筒井さんは、地方経済の活発化に向けて新たな行動を考えているようです。さて、それは!?