力に屈せず正しいと信じる道を貫き、中小企業の悩みに寄りそう(後編)
- 2022/9/20
- インタビュー
混迷状態の私的整理
――2021年5月に改正銀行法が成立し、銀行から事業会社への出資上限原則5%という規制が緩められ、企業の株式も自由取得できるようになりました。地方銀行の今後の動向をどう見ていますか。
筒井氏――非常に悩ましいですね。
事業再生の手続には、民事再生法や会社更生法などに基づく法的整理と、裁判所の関与なしに関係当事者間の合意によって手続が進められる私的整理がありますが、2022年4月に「中小企業の事業再生等に関する私的整理ガイドライン」が適用開始されました。
それを受けて、債権回収やさまざまな手続きが変更されましたが、特に地方に行くほど、皆さんが市場に放り出されてどうしたらいいか分からず、右往左往している状況だと、客観的にみています。
いずれにしても、金融機関もビジネスモデルが描けて、採算とれるビジネスの見極めができるのかがカギです。
金融機関が新しい方向に転換するには、まだやはり時間がかかるのではないでしょうか。
――信用金庫や信用組合が今後、エリアの企業を支援するためには債権カットもしくは資本に切り替えて支援するという選択になるのでしょうか。
筒井氏――もうそれしかないと思います。サービサー※2 は地方にも増えて動き出していますが、なかなか債権を従前の金融機関が手放しません。
もし、ある程度のバルク※3 でも手放したらサービサーが動けるので、手放し待ちのような状況です。
経営者保障もそうですが、制度は整えているものの、実際に誰がビジネスモデルを見極めて再生もしくは再チャレンジを行うのか、というところに課題があると思います。
*2 サービサー:金融機関等から委託を受けまたは譲り受けて、特定金銭債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者
*3 バルク:複数社まとまった債権のこと
事業投資も経験し、企業再生をより強く支援
――そういったご懸念に対して、ご自身が目指す方向などありましたら、教えてください。
筒井氏――規模が大きめのM&Aや再生などでは、銀行や買収する側の企業がFA等を主導し、肝心の事業者さんがおいてきぼりになる場面を何度も見て来たので、私がもう少し踏み込んで、企業側の思いを汲んで向き合いたい気持ちがあります。
長くコンサルタントの立場から見てきましたが、今後は自分も事業投資家となり、事業を動かす経験もしたい。理想のイメージは、戦国時代に活躍した黒田官兵衛のような参謀です(笑)
――具体的にお考えの分野はありますか。
筒井氏――今後、食糧難も予見されていますし、個人的に食に関心があるので、一次産業や食関連事業に注目しています。
たとえば、米どころで水も良く、美味しい日本酒を造っていたのに、杜氏や後継者の不足、経営難などで継続が難しくなっている酒蔵など、地方で困窮するものづくりの会社に関わってみたいですね。
管理会計などバックオフィスについては仕組みさえ整えれば派遣の方にお願いするなどして何とかできますが、酒造りでは杜氏など本業の「作り手」がいなくなると致命的な痛手になり、サプライチェーンも失ってしまい、企業が立ちいかなくなります。
その前に、何とかしたいと思っています。
どんな会社もやり方次第だということ。乱世なりのビジネスモデルを確立させていきたい。
自分がモデルケースになれるよう、挑戦を続けていこうと思います!
――社会的な情勢も含めて、非常に勉強になりました。ご自身のキャリアアップにも大変期待しています。ますます頑張ってください!
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