老子に学ぶ、現代社会思考~幸運の終焉を見極めよ
- 2021/10/25
- コラム
老子の教えを現代のビジネスリーダーに贈るコラムを、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏の考察でお届けしています。
6回目となる今回は、運の正体や、成功における運と実力についての熟考です。
幸運が続かないものだとすれば私たちは幸運をどう生かすべきなのか、老子の教えが書き記されたとされる「道徳経」が導きます。
幸運と不運はシンメトリー
物理には、作用反作用という運動法則がある。
作用があれば、かならず反作用が生じ、
その大きさは等しく、逆方向に動く。
そして、作用と反作用は同じ物体に、
同時に働くことはない。
運も同じく、幸運が大きければ、不運も大きく、
不運が大きければ、幸運も大きい。
この二つが同時進行することはないため、
何て不幸だ!と感じている事の裏には、
同じ量だけ幸運が待っており、
幸運の裏には、不幸の種が内在されている。
成功は退き際を考える始まり
揣えて之を鋭くするは、長く保つ可からず。
金玉堂に満つるは、之を能く守ること莫し。
富貴にして驕るは、自から其の咎を遺す。
功成り名遂げて身退くは、天の道なり。
(道徳経 第九章)
「道徳経」は老子の教え「道教」を記した書物と言われ、81章で構成されます。
今回の第9章が示すのは、成功することが引き寄せてしまうリスクと成功後のあるべき姿。
「道教」は、現実に即し人生を楽しむためにどうあるべきかを説いた教えです。
刀の刃を鋭くしすぎれば、刃こぼれが早くなり、
刀の寿命は短くなる。
金銀財宝をため込めば、
それを狙う者が気になり、
ゆっくり眠っていられなくなる。
優雅な生活をひとに見せると、
人の恨みを買いやすく、
いざという時、人の応援を得にくいものだ。
それではどうすれば良いのか。
功を成したら、未練を残さず、
さっさと引退するのが、
自然の理法にかなった生き方だ。
運の影響力
老子は、なぜ、
功を成したら、
さっさと引退するべきと言っているのか。
その答えは簡単だ。
運が永持ちしないからである。
運は真似できない
考えてみると、
成功者のノウハウをそのまま真似すれば、
誰でも成功できる筈だ。
もしそうであるなら、
多くの人が成功していることになるが、
現実にはそうは簡単にはいかない。
その理由は、
その人の幸運までは真似ることができないからだ、
ハーバードレポートでは、数字をあげて考察している。
“Don’t Underestimate the Power of Luck When It Comes to Success in Business,” HBR.org, June 14, 2021.
運の命は短い
超優企業を50社厳選し、
その後の業績の統計をとったところ、
5年以内に16社が苦境に陥り、
23社は並の評価の企業になっていたという。
残りの11社のうち、
以前と変わらないレベルの優良性を維持できていたのは
わずか5社だけだった。
この著しい衰退に関し、ありがちな説明としては、
CEOの油断と自信過剰による無駄な投資などが言われるが、
「CEOがそもそもそれほど優秀ではなかった」というのが、
根本理由だという。
つまり、彼らが成功し、
分不相応な評価と注目を浴びることになったのは、
運のおかげであり、
そのうちの多くが失敗したのは
幸運が終わったからということになる。
事業承継でもこの理論は活用できる。
「実力も運の内」というが、
自身の実力と運の比率はどの位なのか。
それをしっかり見定め、売り時を外さないことが肝要だ。
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出典:東洋古典運命学「老子と学ぶ人間学⑥ 老子と天中殺理論」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。