3月26日発表!事業再構築補助金が公募開始しました
- 2021/3/25
- ファイナンス
ポストコロナに向けて、中小企業を支援するための施策が次々と打ち出されています。
本記事では、その施策の中でも、売上10%ダウンが要件となり、新規事業に最大6000万円が給付される事業再構築補助金について、М&Aアドバイザーの立場から数々の企業と関わり、補助金申請にも多数の実績がある中小企業診断士の白石直之さんに紹介してもらいます。
参考 「事業再構築補助金 第一回公募サイト」(2021年3月26日公表)より
事業再構築補助金のポイント
事業再構築補助金とは、中小企業等が思い切った新たな取り組みを行うための設備投資等の対象経費に対して、1社あたり経費の2/3、上限6000万円(※1)を給付する補助金です。次の申請に必要な3要件を満たし、審査に通過することが必要となります。
再構築性の要件が厳しく、要件を満たせる企業は多くないかもしれませんので、よく検討が必要です。
対象経費は、主に撤退費、設備費、IT開発外注費、広告宣伝費がメインになります。人件費や仕入れなどの運転資金は対象になりません。
※1 中堅企業(資本金10億円以下)も対象とされますが、本記事では中小企業向けの内容のみをご紹介しております。
【申請に必要な3要件】
要件① 直近の売上がコロナ前より10%以上減少
要件② 再構築(新規事業)が対象
要件③ 認定支援機関/金融機関の支援を受ける
要件① 「直近の売上がコロナ前より10%以上減少」とは
申請前の6カ月の売上の内、任意の3カ月合計がコロナ前(2019年1月~2020年3月)の同月合計より10%減少していることです。
例えば、4月申請の場合は次のようになります。
直近の12月、1月、3月の合計売上が500万円で、コロナ前の同月の売上合計が710万円のため、30%減少しています。10%よりも減少しているため、要件①を満たすことになります。
例)4月申請の場合の売上減少の算出例
さらに、申請前の6か月の売上の内、1か月が30%ダウンの場合の特例枠があります。
2021年1~3月のうちいずれかの1か月が、コロナ前(2019年1月~2020年3月)の同月より30%減少している場合に、補助率が高い以下の緊急事態宣言特別枠が利用可能です。
要件② 再構築(新規事業)が対象
2021年3月17日に、本補助金の指針が発表されました。ここで示された再構築性は、これまでに想定していたよりも厳しい内容であることから、物議を醸しています。今回の事業再構築補助金への申請要件に関しては、「本気で変わる気がない方はご遠慮ください」というメッセージが込められていると受け取れます。
次の5要件のどれかを満たすことで「再構築」に該当します。
事業社の方は、あまりに複雑なため理解する必要はないと思います。認定支援機関へ「やりたいこと」や「ターゲット像はなにか」を伝えて、どれに当てはまるのか相談するのがおすすめです。
【再構築の5要件】
まず、それぞれの説明の前に日本産業分類が登場するので、ご紹介します。
日本産業分類とは、経済活動を大分類、中分類、小分類、細分類と分け、総務省が定型化しているものです。本補助金の再構築の定義には、この分類を変更する必要がある場合があります。
※日本産業分類概要の詳細リンクはこちら
再構築要件のイメージ
再構築としては、日本産業分類の変更の程度で分類される1~3。また、ヨガ教室をZOOM開催するなどの製造方法を変更する4の業態転換があります。さらに、売上構成比要件があります。実態としては、2.事業転換や3.業種転換は、従来の事業をやめる、もしくは縮小することが想定されるため、ハードルの高い選択肢になりそうです。
1.新分野展開
こちらが前向きで使いやすい再構築要件だと思います。今までとは違う顧客(新市場)に対して新製品・サービスを提供する場合、対象になります。ただし、過去に試作品を含めて製造実績がないこと、また、競合他社があまり多くないことが必要です。そのため、コロナ禍によって発生した市場ニーズに対して、それに見合う新製品やサービスを提供する場合などが想定されます。なお、日本産業分類は細分類まで変更しない、従来と同じ分野である必要があります。
2.事業転換
こちらは新規事業が、今までの事業と日本産業分類、中・小・細、各分類のうちのどれかが異なる必要があります。また、新しい事業が全体の売上構成の中で最も大きくなるような事業でなければなりません。そのため、上図の再構築の5要件の例に記載されている、日本料理店が焼肉店に転換するように、従来の日本料理店の規模は縮小し、主な事業を焼肉店に代えることになります。従来事業の縮小を迫られているようなケースが想定されるでしょう。
3.業種転換
先の「2.事業転換」の日本産業分類の大分類版です。新規事業が、日本産業分類の大分類で今までの事業と異なり、かつ、全体の売上構成の中で最も大きい事業にすることが求められます。例に記載しているように、製造メーカー(製造業)が工場を閉鎖して、データセンターを建設し、データセンター業(情報通信業)を開始するといったものです。事業転換と同じく、従来事業の縮小を迫られているようなケースが想定されると考えます。
4.業態転換
製品サービスの製造方法の変更が必要です。例のように、従来型の室内に人が集まるヨガ教室を、オンラインのヨガ教室にするようなことです。サービスは同じでも、その製造方法を変更することで対象に該当します。「ヨガを教える」というサービスを、教室で行う→オンラインで提供するといった転換です。
飲食店がデリバリーを開始するようなケースもこちらになります。ただし、細かくは設備の撤去やデジタル活用が必要になるため、単純なデリバリーだけでは要件を満たさない場合があります。
経産省の指針にあるもう一つの例は、「健康器具の製造業者が、AI/IoT技術などを活用して、製造プロセスを省人化し、生産性を向上させること」です。製造業での省人化は、コロナ感染リスクを抑えるという意味でも期待されていると感じられます。
要件③ 認定支援機関と金融機関への相談
認定支援機関(※2)とは、国が認定した経営コンサル機関のことです。再構築補助金では、この認定支援機関と一緒に事業計画を策定する必要があります。
認定支援機関選びには、国家資格である中小企業診断士資格を取得している方をおすすめします。中小企業診断士資格を持つ方は補助金の審査員経験を持つ方が多く、中小企業診断士同士のネットワークも強いので、補助金申請は詳しいことが多いです。また、中小企業診断士の試験自体が事業計画策定のための知識が問われるため、補助金申請は資格取得者であれば、概ねできると期待されます。
決して、会計士や税理士ができないということではないですが、これから探す場合に参考にしていただけたら幸いです。
なお、補助額が3000万円を超える計画の場合には、金融機関とのかかわりが必要になります。補助金は申請後に入金されるため、補助金で充当される部分も入金前に支払わなければなりませんので、キャッシュフローの観点からも融資を平行して検討することをおすすめします。
※2 中小企業庁のホームぺージでも、認定支援機関の検索が可能です。
申請スケジュール
■公募期間
令和3年4月15日~4月30日18:00まで
■採択発表
6月上旬~中旬ごろ(予定。遅れる可能性は大いにあると予測されます)
■実施期間
交付決定日~12か月以内(ただし、採択発表日から14か月後の日まで)
※補助金は基本的には、実施期間中に発注し支払ったもののみが対象になります。
ただし、本補助金には事前申請の対応(要必要性の説明)を行うことで令和3年2月16日以降に発注した経費が対象になる可能性があります。
■補助金の振込
事業完了後、報告申請が完了した後
対象経費には相見積もりが必要
対象経費については、以下のように指摘されています。特に事前申請することを検討している場合、忘れがちになりますので、十分にご注意ください。
- 可能な限り相見積もりが必要
- 必須条件として、単価50万円(税抜き)以上の物件等については原則として同一条件による相見積りを取ることが必要です。
認定支援機関に相談する際に、やらなければならない2つのこと
GビズIDプライムの発行の登録
補助金申請は、インターネット上で行います。そのためのID取得が必要で、理不尽なことに2~3週間かかります。そのため、補助金募集が始まってからでは間に合わない可能性があります。検討開始時点で、とにかく登録申請することをおすすめします。
▶GビズIDプライムの発行の登録はこちら
コロナに則した再構築性のある事業計画書を検討
実現可能性を感じさせる事業計画書が必要です。成長性がある市場をターゲットとして、ニーズに対して提供する商品・サービスは何か、どのように広めていくのかといったことを作成する必要があります。
また、認定支援機関に、やりたいことやターゲットを整理したうえで再構築要件に該当するかを相談し、補助金対象になるかどうか判断することをおすすめめします。
対象経費にならない主な例
- 事業に掛かる自社の人件費、旅費
- 事務所等に掛かる家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
- 電話代、インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯経費は除く)
- 汎用性があり、目的外使用になり得るもの(例えば、事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン及びデジタル複合機、家具等)の購入費
- 販売する商品の原材料費、文房具などの事務用品等の消耗品代、雑誌購読料、新聞代、団体等の会費
- 飲食、娯楽、接待等の費用
- 不動産の購入費、株式の購入費、自動車等車両(事業所内や作業所内のみで走行し、自動車登録番号がなく、公道を自走することができないものを除く)の購入費・修理費・車検費用
- 中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が明確でない中古品の購入費(3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得している場合等を除く)
- フランチャイズ加盟料
- 収入印紙代
- 公租公課(消費税及び地方消費税額等)
- 各種保険料など
上記のほか、公的な資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費
是非、コロナを事業転換のチャンスと捉えて、本補助金を活用しましょう。