「少人数私募債」を今こそ活用!応援団からの資金調達

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前向きに事業変革に取り組む経営者にとって、資金調達が成功するかどうかは、時に企業の先行きを決定してしまうほど重要なことです。
コロナ禍で経営環境が激変するなか、荒波を乗り越えビジネスチャンスを掴むために必要となる資金を、銀行に頼ることなく調達できる方法を、株式会社つながりバンク 代表の齋藤由紀夫がお伝えします。
資金調達が苦しい時ほど経営者の人間力が試されています!

そもそも少人数私募債とは

私が「少人数私募債」を知ったのは、今から遡ること25年ほど前です。
提携先の会計事務所から相談され、顧問先のためのアレンジを手伝ったことがきっかけです。

少人数私募債(以下、私募債)とは、ざっくり説明すると銀行に頼らない資金調達の一形態で、証券会社を通じて不特定多数の投資家を対象に広く募集される公募債とは異なり、限られた人数の投資家に直接引き受けてもらう「社債」のことです。

事業者の裁量による柔軟な資金調達法

よく質問されることのなかに、私募債には銀行などの金融機関や信用保証協会の保証が必要なのか?というものがありますが、それらはまったく必要ありません。
私募債は事業者の裁量で発行できるものなのです。

ただし、多少の制約はあります。
私募債の引受けを呼びかける投資家の数を50名以下にすることのほか、発行額や配当利回りなどに一定の基準があるものの、これらを満たせば「金商法」「出資法」「利息制限法」等の規制を受けず、柔軟に資金調達できる頼もしい制度です。

クラウドファンディングやコロナ融資の登場により、注目度は下がりましたが、資金調達を希望する経営者は知っておくべき制度といえるでしょう。

2021年年末に起きた2つの良い話

年末に2つの嬉しい報告がありました。

歴史的価値あるものへの共感を生む

1つ目は、金沢にあり、小説にも登場する築100年以上の町家を「私募債」発行で得た資金で旅館業ゲストハウスに再生させた方から、コロナ禍を乗り越え無事に償還できたという報告です。
※満期日に債券の保有者(=投資家)に額面金額が払い戻されること。

詳細はご本人のブログをご覧いただきたいのですが、私募債による資金調達は、集める側が自分自身の事業への想いを「目論見書」につづり投資家に伝え、理解や共感を得なければ達成できません。
この町屋の事例は、投資家の方々に建屋の歴史的価値とその有効活用への取り組みが評価され共感が広がることで応援団が形成され、コロナ危機を乗り越えることができた好事例です。

単なる資金調達以外の収穫があったといえるでしょう。

お人好しで不器用な店主が得た資産

2つ目は、5年前にサポートした某「書店」さんです。
多くの街の書店がそうであるように、業績は低迷していました。
本以外の商材販売、喫茶店併設等のスペース有効活用などで悪戦苦闘されているなかでの私募債発行でした。

通常、利益相反するので、アレンジャーは私募債の購入はしないのですが、店主の頑張りをみて心動かされ、私も投資家として参画した案件です。
結果としては、残念ながら1年後に閉店となってしまいました。

正直に言えば、閉店した段階で債権の回収を私は諦めていました。
他の支援者も同じ気持ちだったと思います。
それが、毎月少しずつでも返済するという約束がきっちり守られ、5年経過した2021年の年末に全額返済されたのです。

決して、楽な経済環境ではなかったはずですし、不義理して逃げることもできたかもしれません。
それでも返済した彼が最後に得たものは「信用」であり、それは、彼にとってかけがえのない「資産」に生まれ変わりました。
本人からの「お世話になりました。」という連絡には、熱いものがこみ上げてきました。

失敗した時にこそ問われる人間力

事業に失敗はつきものです。
だからこそ、投資家はそこからどのように対応するかを見ています。
熟練投資家の判断基準を聞くと、「やりきる力」「逃げない心」「素直さ」「自己責任原則への理解」と、ビジネスモデルや事業計画ではない定性的な回答が返ってくるのは、納得いくところです。

最終手段は慎重に

現在、事業再生における法的スキームが活用され、金融機関による借入金返済のリスケジュール(条件変更・支払猶予)や、債務カット等が一般的になってきています。
当然今後の事業継続に影響するものですから、経営者は、もう打つ手がなくなったなどのやむを得ない場合の最終手段としてこれらも視野に入れつつ、慎重に選択すべきです。

成功の鍵は事業の応援団形成

これまで、起業・新規事業・M&A・事業再生の場面で幾度となく「私募債」の提案をして、活用を支援してきました。
業種も飲食店・物販・製造業・旅館ホテル等さまざまです。

アレンジした私募債に関しても、関わる全てのビジネスが成功し、無事に償還されている訳ではありません。
ただ、私がアレンジする案件は、基本的に「応援したい経営者の応援したい事業」に限定しています。
このため、通常の融資や投資に比べ償還・返済率は段違いに高いと自負しています。

また、起業する方は支援してくれる方々の応援団形成が成功の鍵となるでしょう。
私は起業で相談に来てくれる方には、知人の社長や身近な方に事業計画を説明し、わずかでもいいから私募債引き受けのお願いをしてみることを提案してます。
仮に投資家からまったく反応がない場合は、言い方は厳しいですが、ビジネスプランに問題があるか、本人に信用がないかのどちらかの可能性があります。
そもそも、起業すること自体を考え直した方がいいかもしれません。

投資家は経営者の覚悟と行動を見ている

コロナ融資の返済が、1年の据え置き期間を経てこの春から始まります。
返済できず、債権者に不義理をする方も出てくるかもしれません。
もし、再生する気持ちがあるのなら、正面から向き合い経営改善計画を打ち立て、恐れない覚悟で行動に移す姿を見せることです。
経営者としての覚悟を示すことができれば、債権者のなかから「私募債」の投資家が出てくるかもしれません。
成功している投資家ほど、窮地に陥った時の経営者の対応を見ているものです。

最近、私募債の問合せが増えてきました。
久しぶりのことです。
前向きな資金が必要だけど、金融機関からの理解が得られない場合などは、うまく使えばとても良い制度です。
是非、選択肢のひとつとして検討してみるのもよいでしょう。

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表

投稿者プロフィール
株式会社つながりバンク 代表。
オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。
スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士、日本外部承継診断協会 顧問。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

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