人の動きを可視化するサービスでより良い社会を(後編)
- 2022/1/28
- インタビュー
目次
Yagishの展望
――パーソナルデータに対して、今後活用をお考えの事例があれば教えてください。
金氏――2022年度はHR、キャリア形成の意味での教育、同窓会のサービスを広げていく予定で、100万人の登録を目指しています。
HRは基本的に待っていればいろんなオファーが来るように、LINEも紐づけています。
受け取る側がO.K.であれば、システムに格納された履歴書が送付される仕組みです。
ある程度自分の価値を上げられる努力をしつつ自分のWishに近づけて転職が決まったら、今度は余裕をもって周りを見ることも大事になりますよね。
ですから、それに付随した旅やスポーツ、レジャーなどをソーシャル化してつなげたいと思っています。
ユーザーの利便性を最優先に
システムに確実なWishリストが入っていたら、意味のないやり取りが省かれ、ユーザーは利便性と利得が得られます。
結果としてやったことがさらに履歴書を上書きし、精査されたWishリストを最終的にAI化し、生涯に渡って適確なレコメンドを送り、豊かな人生を送るためのサービスになればいいと思っています。
一番の懸念点は匿名上の空間になってしまうことですね。
情報は必ず実名登録がなければ見られないとして、さらに見られるのは名前だけ。
実体があり信頼があるサービスを構築し、情報発信者はWishリストに完全合致する人にメッセージだけは送れる。
「ただそれを見るかどうかはあなた次第ですよ」と、そこまでのサービスにしていきたいと思っています。
経験を可視化する意義
――自分の行動により履歴書が上書きされるなんて面白いですね。
金氏――そうですね。
学習や仕事などのデータも、現在は資格取得やスコアなどに評価を頼っていますが、今後は、その分野の能力を身に付けるために、どれくらいの時間と情熱をかけて勉強し取り組んだかというログが取れるようになり、リクエストを出せばシステムに反映されます。
職務経歴書には大きく2つあると思っているのですが、1つはその人がどの会社からどの会社に行ったか?という事実。
そしてもう1つは、今までその会社で自分はどのようなことを学び、どのようなスキルを付けていったのか、どのような経験をしてきたのかというものです。
そのスキルや経験を身に付ける過程を可視化できて、自分の頑張りのエビデンスがとれることで、例えば履歴書が貧弱な人でも、今までやったことを正確、かつ、わかりやすく伝えることができ、報われるということなのです。
昔のちょっとした経験が現在の自分を構成していることはよくあります。
でもそれは、キャリアコンサルタントには見つけられないことです。
だから、それをAIに学習させていけるとしたら、そして、生きがいとなることをリアルタイムで被せられるサービスにできるのであれば、Yagishは進化する履歴書サービスとして世の中に受け入れられると思います。
2023年度は、さらに300万人の登録者数を目指し、アジアにも進出したいと思っています!
アイディアを生み出せる人脈作り
――最後に、日本の中小企業が生き残るために必要だと思われることがあれば、メッセージをお願いします。
金氏――私も経験があるのでよくわかるのですが、経営者はどうしても資金繰りを含め足元の状態が不安定にならないようにとばかり考えてしまいます。
そして、売上や人事といった悩みを抱え込まざるを得ない状況が、経営者には多いと思います。
私はシンガポールに自社の本拠地を移した時に、いろいろな仲間をネットワーキングしながらお互いインタラクティブな関係性を大事にする方法を学びました。
世界は広く、想像を超えるようなアイディアはどこで誰を通して手に入るか分からない。
だからこそ、人間関係を拡大していくことが大事だと思います。
日本では名刺交換しても関係が生かされないことが多いですね。
さらにコロナは人の交流の機会をなくし、コロナ禍が続くことで関係性への考え方が閉鎖的になっていると思います。
中小企業にとって事業変革は不可欠です。
変革を続けるためには、必要となるアイディアをもたらす人にいかに出会えるかが大切です。
自分の周りの関係性を拡張していくことを真剣に考えた方がいいのではないかと思っています。
――本日はありがとうございました。
本稿「人の動きを可視化するサービスでより良い社会を」は後編です。
前編は「人と人のつながりに着目!研究者から経営者への転身」でご覧ください。