経営者こそがワクワクして、従業員の輝く場を提供しよう(後編)

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社員全員の自己実現を目指して

――御社では、世の中に自身の技術を役立て伝承するという意識が浸透していらっしゃるとのことですが、社員教育ではどのような点を重視していらっしゃいますか。

大塚氏以前の弊社の最大の弱点は社員のスキルアップでした。
すべてOJTが基本で、「見て覚えろ」という職人気質な部分が社員教育の根幹をなしていたために、必ずしもうまくいっているとはいえませんでした。
そこで、全社員のスキルアップを目標に据えて、ろ過技術やビジネスマナーについて現場に学んでもらうのと同時に、管理職に対してはマネジメント研修ということで、マズローの欲求5段階説を基にそれぞれの役割について学んでもらうようにしました。

3段階目の「社会的欲求」として、自分が属しているコミュニティで仲間として認められたい、愛されたいという欲求があるからこそ、4段階目の「承認欲求」につながると理解していますので、部下を指導するときに、仲間のことを愛しているのか、心から思いやっているのかという点について、管理職には考えてもらうようにしています。
そして、その先にある5段階目の「自己実現欲求」をすべての社員に満たしてほしいと思っています。

そして、その先に6段階目があることも意識できたら・・・
6段階目、それは「利他の精神」、他者の欲求への支援とでもいうのでしょうか。
誰かのためにと考えられることが一番素敵なことであると理解してほしいと願っています。

――理念やビジョンを共有するうえで何をされていますか。

大塚氏理念については、毎朝の朝礼などで唱和しています。
弊社は3月6日が創立記念日なのですが、その日に改めて理念がどこまで浸透しているかについてテストするなど、とにかく理念に触れる機会を増やすようにしています。

また、「100年ビジョン」を策定して50年後、30年後のあるべき姿について考えるのと同時に、10年後までの道筋についてはより細かく目標を設定しています。
「3年後にこれだけの雇用を生んで、これだけの営業所をつくって、これだけのお客様にいろいろなものを提供する。だから今年はここまでできなければならない。そのためにはこういうことをする。そうすることによって、収入はこうなり、収益もこのように変化する。」といった具合に、目標を明確にして、それに即した個々人のスキルアップの計画を立てるようにしています。

海外市場への進出も視野に

――新工場を建設されているということですが、どのようなことにチャレンジしようと考えているのですか。

大塚氏―より多くのお客様に弊社の技術、ノウハウを提供したいと思っています。

製造業というのは、結局のところ機械の数と稼働時間によって生産量が決まってしまいます。
とはいえ、今の工場の周囲は住宅地になってきたので、拡張することも、遅い時間に稼働させることもできない。

私たちが得意としているニッチな市場は規模的にいうと年商10億円程度で、弊社はそのうち半分くらいのシェアを取っているのですが、残りの5割は汎用品に紐づいていて、汎用品をある程度は手掛けないとシェアを伸ばすことができません。
しかし、この汎用品を弊社の限られた設備で生産してしまうと、特殊なものにも影響が出てしまうので、今までは手掛けていませんでした。

ただ、今後はアセアンなど他の国や地域のマーケットを開拓していくことを考え、この部分についても対応することにしています。
そのために国内で数社、海外でも数社と連絡を取り合って交渉している最中です。
新工場ができたら、そこで自分たちが最も得意とするニッチな製品の製造量をさらに増やし、その一方で、協力工場では汎用品を手がけるという役割分担での展開を考えています。

――ベトナムに進出予定とのことですが、現地の人は採用しているのですか。

大塚氏いま3人のベトナム人を採用しています。
3人とも日本とベトナムの架け橋になりたいと考えていて、ベトナムの水が汚いから、それを弊社の技術で何とかしたいというのです。
自分が儲けたいというのではなく、皆のために働きたいと考えているということが採用の決め手になりました。

▶次のページでは、大塚さんの経営理念と将来への展望についてお届けします!

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大塚雅之
大塚実業株式会社 代表取締役

投稿者プロフィール
大学卒業後、旅行会社へ勤務。1994年大塚実業へ入社。
翌年に阪神淡路大震災が起こる。多くのお客様の被災を目の当たりにし、大阪営業所異動を志願。自ら被災地支援活動の陣頭指揮を執りつつ、お客様目線を取り入れた新たな事業スタイル確立し、3年間で関西市場の売上を3倍にすることに成功。
2005年東京支店へ異動。2009年代表取締役へ就任。 自ら制定した100年ビジョンに沿い、現在は海外進出と社内改革に挑戦している。
一般社団法人公益資本主義推進協議会 東京支部長、日本液体清澄化技術工業会理事、日本分離学会幹事を務める。

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