金融の未来予想!web3ファイナンスによる課題解決と価値創造
- 2023/3/28
- インタビュー
目次
ブームに惑わされない見識眼が重要
中島氏――その後、STEPNブームは超高速で過ぎ去った感を覚えている人も多いと思いますが、森田さんはどう感じていますか?
森田氏――ブームという繁栄と、その後の衰退を両方経験できたのは、とても良かったと思います。
衰退してもコミュニティは顕在で今も活発ですし、私自身ウォーキングという習慣は残りました。
ブームの一側面だけを見ると、「もうSTEPNは完全に終わった」と感じてしまうかもしれませんが、SNS等の情報だけに惑わされず、しっかりと事実(ファクト)を見ていく見識眼が必要だと思います。
中島氏――STEPNなどの新しいユースケースだけでなく、ビットコインなどの主要暗号資産にも同じことが言えますね。FTX騒動で暗号資産市場は下落していますが、「クリプトの冬」は定期的に訪れますし、また夏も来ます。ストレステストのようなもので、これくらいの暴落はよくあることですし長期で見れば誤差です。
2014年のマウントゴックス事件のときは、「ビットコイン倒産」などの見出しがメディアにも出ていて、ビットコインについての正しい理解が浸透していなかったと思います。しかし今回のFTX騒動は、マウントゴックス事件から8年が経ち、理解の浸透も随分進みました。「一事業者の破たんにすぎない」と冷静に見ている人が増えたという印象です。普段から暗号資産を批判している人は、騒動や暴落が起きるとここぞとばかりに叩くのですが、それでもビットコインは止まることなく不死鳥のように復活していますから。
カネとヒトが拡大し続けるweb3ファイナンス市場
中島氏――2022年11月初旬に、Singapore Fintech Festival(以下、SFF)2022が開催されましたが、森田さんも参加されたのですね。
森田氏――はい、参加してきました。
SFFはシンガポール金融管理局(MAS)主催で2016年から開催されている世界最大級のフィンテックイベントで、2022年で7回目の開催です。
オフライン開催は3年ぶりだったようで、6万人規模の参加者と、登壇するスピーカーが850人超、展示が約450社、さらに25の国際パビリオンもあってかなり大規模でした。
グラブCEOのアンソニー・タン氏やバイナンスCEOのチャンポン・ジャオ氏、イーサリアムの考案者のヴィタリック・ブテリン氏なども登壇していました。
会場で感じたのは、世界は確実にweb3に進んでいるということです。
世界中のお金と人がweb3に流れ込んで、以下のような状況を生み出しています。
・暗号資産の時価総額は1.2兆
・保有者は世界で3億人以上
・2021年のベンチャー・キャピタル投資額は300億ドル
・CBDC(中央銀行デジタル通貨)を探索中の国は100か国
・LinkedInのweb3従事者は、前年比4倍(2021年)
・月間アクティブ開発者は、前年比2倍(2021年)
さらに、SFFのスポンサー8社のうち4社がweb3企業でした。
2022年のSFFは、ESGファイナンスを中心とするGreen Techゾーンとweb3ファイナンスを中心とするFintechゾーンに分かれていたのですが、立ち見が出るほど集まる人が多く、より熱量を感じたのはweb3ファイナンスのゾーンでした。
加速する金融のリノベーション
中島氏――イベントで印象に残った言葉などはありましたか?
森田氏――「金融のリデザイン」というフレーズを至るところで耳にしました。
来場していたローレンス・ウォン副首相兼財務大臣は、開会スピーチのなかで「SGFinDex(2020年導入の政府機関や銀行等を横断した個人金融情報統合管理プラットフォーム)に保険会社のデータを追加する」と発表していました。
一見すると国家によるデータ独占のような印象を持つのですが、彼らとしては、データ自体を公共財化することで、民間各社の様々なイノベーションが促進され、金融サービスの新しい姿に繋げる、といったことを目指しているように感じました。
この意味で、SGFinDexの拡張はシンガポール流web3ともいえるのかもしれません。
この続きは後編でお届けします。
出典:マイナビニュース「未来の金融の在り方を探索したときに出会ったweb3の世界観」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。