「不動産」にも「事業」にもリノベーションを!
- 2020/11/2
- 事業投資
既存のものに付加価値を与え再生させるリノベーションは、今やマンションなどの建物だけでなく事業などのソフトの分野にも取り入れられ、アイデアと機能をフルに活用した新たな用途を見出しています。さらに、古い建物や忘れ去られた施設などのリノベーションにあっては、ハードの修繕以上にソフトの変革が求められているようです。
どんな事業に携わるにしても、変化を恐れず客観的な自己分析ができてこそ、新たな分野に進出できるチャンスが到来する、そんな新しいリノベーションを体現する事例をご紹介します。
目次
修繕やリノベーションが必要なのは「不動産」も「事業」も同じ
「不動産・建物」の「ほころび」はよく目につくため、修繕・リノベーションが必要となるのは誰もが理解できるところでしょう。「会社・事業」も同様です。可視化しにくいので分かりにくいのですが、長年事業を営んでいると「ほころび」ができるのは当然ですし、気づかないうちに価値が劣化していることも多々あります。
しかし、常に変化、リノベーションを繰り返している会社は、「ほころび」を修繕しつつ成長を続けています。「不動産・建物」も、目につく部分だけでなく、ソフト面でのリノベーションが重要視され、事業リノベーションに近づいてきているのを肌で感じます。
不動産リノベーションが進化している
これまで不動産リノベーションといえば、中古マンションの内装リフォームの延長がほとんどでした。しかし昨今は、そこから一歩踏み込んで、不動産の利用目的を変えて付加価値をつけるような動きも出始めています。
下記図にあるような古民家を料理教室に、廃校をオフィスに活用するなど、マーケットのニーズに合わせ用途を変更するような動きです。ただし、建築設計や内装というハードの枠を超えて、ビジネスセンス・事業構築などのソフト面が求められる難しい分野であるのは間違いありません。
リノベーションスクールの実績
この分野で数々の実績を残しているのが、(株)リノベリングが運営する「リノベーションスクール」です。2010年に北九州市小倉魚町で“リノベーションまちづくり”をスタートし、全国70を超える自治体と、5,000人を超える想いある参加者で組織されています。
利害関係者の調整、民間と行政の調整など苦労は多いでしょうが、エリアの価値向上、にぎわい、雇用の創出など地域経済に貢献しています。
事例1. 公園リノベーション
沼津市にある「INN THE PARK」は、「泊まれる公園」です。
元々は市が運営する施設でした。
親も子も気を遣わず自由に過ごせる場所をコンセプトに、既存のキャンプ場の概念を超える「球体型のテントを吊り上げる」という美しさと、ワクワク感を演出し、空間全体をリノベーションすることに成功しました。
上記3点の画像の出典:https://re-re-re-renovation.jp/projects/2604
事例2 廃校リノベーション
自治体保有の資産を対象とする場合は「指定管理者制度」という受託業者的な立場になるのが一般的です。受託する民間事業者にとって事業リスクは低いですが、行政の意向を反映しなくてはらず、自由度が失われてしまいます。
廃校リノベーションの事例である「ちよだアートスクエア」(アーツ千代田3331)は、「民設民営」という方式で、民間事業者がリスクを負って事業を運営しています。
上記画像の出典:https://www.3331.jp/schedule/005237.html
24時間使用可能。制作スタジオやワークスペースとして、学生やアーティスト、デザイナーなど、多くのクリエイターに貸し出します。
既に10年以上経過し、アートの拠点としてではなく、地の利を活かしてアート関連企業のオフィスとして機能しています。感性の良い方々が集まりビジネスも発生する。若者に人気があり世界で50万人の会員を誇るWeWorkのコンセプトに近いですが、既に先を行っているモデルケースです。
行政に頼らず、独自路線で試行錯誤した成功事例だと思います。
事業リノベーションの実例
「適者生存」「激しい変化にいち早く対応できたものが生き残る」と言われているように、会社や事業を長期に渡り継続させるためには、リノベーションの発想が必須となります。
老舗の和傘を照明デザインにリノベーション
例えば、廃業を覚悟した「和傘」職人が、太陽に透ける和傘にヒントを得て「照明」として商品開発した事例(10月1日掲載記事)などはその典型でしょう。現在では、高級ホテルの照明などにも活用されています。
通販事業展開で購買代理、総務コンサルへと進出
地方で「印刷や文房具・事務機販売」を営んでいた会社が「通信販売」というモデルを取り入れ、総務のニーズをキャッチし「購買代理」へ進出した事例も、市場の環境変化にいち早く気づいて対応したケースです。この会社は、更に総務に特化した出版社をМ&Aし「総務コンサルタント」事業へ進出しようとしています。
既存の技術を新たなマーケットで再利用
「菓子型枠」という市場で長年営業してきたある製造業者は、国内市場が減少する中、活路を見出した新たな市場は「医療用商品」でした。「プラスチック製品」という繋がりで、市場を限定することなく変化することを決めたからこそ、新規市場に参入できた結果でした。
これ以外にも、実例は沢山あります。今では日本を代表するような大企業も、常に変化を取り入れてきたからこそ生存競争をくぐりぬけて、今の地位を築いたのです。
リノベーションというノウハウの共有
不動産リノベーションも、事業リノベーションも、必要に迫られ智恵を絞り、試行錯誤しながら感覚的に辿りついた事例がほとんどです。人口が増え、モノをつくれば売れたような時代は終わり、希少価値に活路を見出すことが当たり前の時代が到来しています。
そんな現状とは裏腹に、ハードとソフトが一体化して生まれる新しいリノベーションの歴史はまだ浅く、学問・ノウハウが体系化していません。それでも多くの事例から学ぶことは多く、成功・失敗の実例を分析しパターンとして蓄積されたデータは、新規リノベーションに活かしていけるレベルには達しています。
経営者、投資家として旬な時期はそう長くはありません。失敗はつきものですが、過去に学ぶことで、より効率よく成功に近づけるはずです。特に事業分野において、今後、新たなリノベーションのノウハウを学び共有する「場」が必要だと感じます。