経営の全体管理で企業の全体像を掴め

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経営全体を管理する全体管理を戦略的に推進することが求められている昨今、経営者はその全体像をどのくらい把握できているでしょうか。

ビジョンを掲げ、ミッションを意識して企業価値を上げていくには、経営理念の共有が重要であり、全体管理を進めるうえでも大きな役割を果たすと、「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」の著者で企業コンサルティングに携わる高森厚太郎さんは語っていらっしゃいます。

今回テーマとした企業マネジメントの第1回目は「全体管理」の全体像をご紹介。変化が激しいベンチャー企業にも旧体質の老舗企業にも、経営理念を見直し新たな経営戦略を立て変革を目指すうえで役立つテーマです。

Z-ENでも、中小ベンチャーの成長マネジメントにおける実務のPDCA経営の役割分担について、ご寄稿いただいている高森さんがわかりやすく紹介してくださいます。

経営のすべてを網羅して管理する全体管理

「全体管理」とはその言葉通り、企業の全体を経営管理することです。

企業のミッションやビジョンの確立である経営理念や、それに則った経営戦略(中小ベンチャーの場合は、≒事業成長戦略)の策定をし、組織を整える。
そして戦略を数値に落として事業計画を立て、会議体を設計するなどしながら計画を推進し、それをPDCAしながら適宜修正していく。
そんな企業経営の全体を管理していく業務が「全体管理」です。

高森氏の資料を元にZ-EN編集部が作成

全体管理の適任者がCFOになるケース

通常この「全体管理」業務はCEO及びCOOが中心になって進めていく業務ですが、なかにはCFOが目配りした方がよいと思われるものが複数あります。

例えば、どんな中小ベンチャーにも起業した際の動機、すなわちミッションやビジョンといった経営理念は存在しますので、短期的な戦略は持っているでしょうし、従業員がある程度いれば組織も自然に発足しています。

しかし、

  • 経営理念があるにはあるけれど、形骸化していて社員どころかCEO本人さえも忘れている
  • 起業時に勢いで作った戦略が、そのままアップデートされずに放置されている
  • つぎはぎしながら組織改編を行ってきたために、企業全体の運営にひずみが出はじめている

このようなケースでは、CFOへの全体管理の潜在的ニーズがあると言えます。
つまり、はっきりと顕在化していないニーズを経営者(CEO)に気づかせることも含めて、CFOの仕事なのです。

経営理念は、ビジョン+ミッション+バリューで構成される

「経営理念」という言葉には、正解と言われるなにか決まった定義が存在するわけではありません。
ミッションやビジョンについてはある程度イメージが固まっているものの、より大きな経営理念の定義となると、人によって幅があり差異が出てきます。

私自身は定義の中身より、自分なりの定義を持っていることが大切だと考えています。
仮に、CFOが自分なりの定義を明確に持ってさえいれば、理念を策定し実行していく際、CEOや経営陣や従業員の頭をブレや遺漏なく整理していくことができるでしょう。

ミッションを明確にしてビジョンを目指す

企業には「ビジョン(VISION)」、つまり目指すところが必要です。
そしてなぜそこ(ビジョン)を目指すのかという動機、つまり「ミッション(MISSION)」が求められます。
ミッションはWHY、ビジョンはWHATやWHERE、あるいはTO BEなど、あるべき姿のイメージです。

現状からビジョンへ向かう行程の道標となるのが「戦略」で、戦略を現実化していく具体的手段が「組織」です。
この組織はヒトの集まりなので、どうしても人間の行動指針や価値観の影響を受けることになります。

事業計画で財務をコントロール

組織が動くと実際の「キャッシュフロー(資金の流れ)」が発生します。
キャッシュフローは通常1年単位の「会計」でまとめられますが、この財務会計をコントロールしていくのが「事業計画」です。
事業計画は社内で共有されるとともに、社外の投資家や金融機関、あるいはM&A時には諸関係者への説明材料になったりもします。

つまり、
―― 企業経営では、ミッションを踏まえたビジョンを実現すべく戦略が作られ、行動指針(バリュー)に沿いつつ組織が設計される。その結果としてのキャッシュフローと会計を踏まえて事業計画が作られ、社内外に伝達される ――
という位置関係になります。

このうち、「ミッション」「ビジョン」「バリュー(行動指針)」が、私が考える「経営理念」の構成要素であり、定義です。

経営理念はみんなで作るもの

そもそも、経営理念とはいったい誰が作るものなのでしょうか。
誰が作ったらよいかを「理念・戦略の風車モデル(一部)」にまとめてみました。

▶ミッション
図でピラミッドから外したところに置いた「ミッション」は、どこか理屈を超えた、天から与えられた「使命」のようなものをイメージしてください。

ミッションは誰かと話し合って決めるようなものではなく、創業者(経営者)が自発的に持っているであろう起業の動機そのものなので、創業者(経営者)にしか作れません。
万一、うまく言葉にできなくても、やはり創業者(経営者)が決めなければなければならないものです。

▶ビジョン
ピラミッドの頂点に置いた「ビジョン」は、企業の目指すところです。

ビジョンにはできるだけ「なにをいつまでに実現するのか」という視点も盛り込んだ方がよいでしょう。
遠大的な目標のみならず具体的な時間軸もビジョンに入れておくと、その後の戦略が立てやすくなります。
そうした時間軸も加味していくなら、やはりビジョンは経営者だけでなく経営陣を交えて立てるべきものです。

▶戦略
ビジョンが明確になれば、「戦略」が立てられるようになります。
戦略はビジョンを実現していく上での大きな方向性ですから、これは経営陣全体で考えるべきです。

▶戦術
一方、戦略をもっと具体に落とした「戦術」は、各状況下における現場レベルでの戦い方の方針になるので、現場のマネージャーレベルが積極的にコミットしていくべきでしょう。

▶バリュー(行動指針)
ピラミッドの一番下の「バリュー(行動指針)」には、企業としてこういう人にいてほしい、こういうふうな動き方をしてほしいという意味合いが含まれます。
しかしバリューを一方的に経営陣が決めてスタッフに落としても、スタッフ自身がその言葉を咀嚼し納得しなければ、彼らの行動指針にはなりません。
その意味でバリューは現場のスタッフ(従業員)を巻き込んで作らなければならないものです。

こういった理由から、
経営理念とは経営者だけで作るものというわけではなく、みんなで作るものでもある
ということが分かります。

この続きは、「経営戦略策定は経営理念の再確認と事業環境の分析から」でお届けします。お楽しみに!
※資料はすべて著者から提供されたものです。

出典:「全体管理」の全体像と経営理念について
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

高森 厚太郎
プレセアコンサルティング株式会社
代表取締役パートナーCFO

投稿者プロフィール
東京大学法学部卒業。
筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。
日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。

現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするベンチャーパートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。

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