経営戦略策定は経営理念の再確認と事業環境の分析から

中小ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める高森厚太郎さんに、「企業の成長マネジメント」について解説いただく連載の2回目。
前回の「経営の全体管理で企業の全体像を掴め」では、経営の全体管理の重要性と経営理念の構成要素について解説いただきました。

今回は、中小ベンチャーが経営戦略を策定する際、経営理念と事業環境がどのように作用するかについてご説明いただきます。
高森氏の「中小ベンチャー」に関する過去記事はこちら

高森氏の資料を元にZ-EN編集部が作成

経営戦略の立案はロジカルに

経営戦略とは、企業が常に持ち続けなければならない経営の根幹をなすものです。
これをもとに数値計画を立てたり組織を設計したりするので、経営戦略には一貫性や論理性、そして整合性が必要です。

ところが、実際の中小ベンチャー企業においてロジカルな戦略はあまり見かけません。
社外CFOとして参画してみると、少々「思い」に寄った主観的な戦略になっていることが多く、論理性・具体性に欠け、それに引きずられて事業計画も絵に描いた餅になっているケースが往々にしてあります。

では、論理性や具体性を持った経営戦略を立てるための思考様式とはどのようなものなのでしょうか。
具体例を見ながら考えていきましょう。

あなたは脱サラして、奥さんと2人でパン屋をはじめようと考えています。どうすれば成功できると思いますか。経営戦略を考えてみてください。

あなたと奥さんは、商品のコンセプト(特色)を考えたり、出店場所を試行錯誤したり、家賃や原料費などを踏まえた利益率をもとに価格計算をしてみたりすることでしょう。
その際「チェックポイントをまとめた何かしらのガイドラインがあると助かるのに……」と思いはじめます。

戦略策定の軸は経営理念と事業環境

矛盾や取りこぼしのない論理的な経営戦略を立案するには、指針となるものが不可欠です。
戦略を立てる際、前提として考えるべきことは経営理念と事業環境の分析であり、以下のような流れで整理していくことが有効です。

経営理念は創業者の思い

その企業または事業のミッションやビジョンとは、そもそも会社として何をやりたいのかという経営理念です。

たとえば、もしあなたのパン屋が「近隣の顧客に対して、いつもより少し上の幸せを感じる瞬間を提供したい」のであれば、安価なパンを量産するより、良い食材を使った特別なパンを提供すべきです。

ミッションやビジョンの決定は、そうした経営者(創業者)の「思い」がベースとなります。

事業環境分析は強みと弱みを知ること

ところが「思い」だけでは会社も事業も成功しません。
やはり冷静に事業環境を分析することが大切です。

近隣にパン屋が何軒あるか、今後大型スーパーにチェーン店が出店してくる予定があるか、といった外部環境(事業機会)をしっかりと踏まえ、他社と比較した場合の内部環境やリソースにおける自社の強みと弱みを冷静に把握することが必要です。

理念・戦略の風車モデル(R)

戦略とは、「誰に、何を、どのようにして提供するか」である

経営理念と事業環境が明確になったら、次は具体的な戦略の策定に入ります。
ここで考慮すべきポイントは以下の3点です。

事業・市場領域の選択

その事業をどこで、誰に展開すればベストなのかを考えましょう。
自分が有利に戦える場所を選択すること(Where, To whom)が重要です。
高級パン路線、庶民派路線、それぞれに適した出店場所があるでしょうし、構える店舗のイメージもそれにより変わってくるはずです。

対顧客価値

おそらく競合店もたくさんあるなかで、あなたのお店のパンが顧客に対してどのような価値があるのか。
あなたのお店が選ばれるための対顧客価値(What)をまず考えてみてください。
ターゲットは庶民層か富裕層かや、どんな顧客に支持されたいか、他店とはどういった違いのあるパンを提供するのか。
焼き立てにこだわったり種類で勝負したりするのか、他店よりリーズナブルにするのか、もしくは高級路線にするのか、様々な選択肢があるでしょう。

価値の源泉

戦略が成功するためには、事業が成り立っていなければなりません。
すなわち、「対顧客価値」を継続的に生み出せるための仕組み作りが必要です。
焼きたてパンを毎日リーズナブルな価格で届けたい気持ちはわかりますが、工夫しなければコストがかかりすぎてしまいます。
なんとか方法を見つけて(How)、価値が連鎖していく仕組みを確立しなければなりません。
原料の格安な入手ルートを確保するとか、家族経営にするとか、経営資源面でもいろいろと方策を練らなければならないでしょう。

様々なオプションが浮かぶでしょうが、その都度、戦略策定の前提となる「経営理念と事業環境」に立ち返りながら、自分のパン屋はどれを選択すべきかを決めていきましょう。

この続きは「成長戦略はシステマティックに構築しよう」でお届けします。お楽しみに!
※資料はすべて著者から提供されたものです。

出典:中小ベンチャーの成長マネジメントにおける「戦略策定」(前編)
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

高森 厚太郎
プレセアコンサルティング株式会社
代表取締役パートナーCFO

投稿者プロフィール
東京大学法学部卒業。
筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。
日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。

現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするベンチャーパートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。

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