次代に受継ぐ日本酒づくり!幻の酵母の復活劇は杜氏との二人三脚

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日本全国から酒造経営者を招き、酒蔵に投資・経営支援できる日本酒ファンのスペシャリストたちが集う「和酒ラボ」。今回は山口県『村重酒造村重雅崇社長をお招きし、講演と試飲を兼ねたイベントを開催しました。会場は、六本木のバー「マイスコッチ」です。15名の参加者が『村重酒造』の日本酒を堪能しました。

日本酒文化を守る会「和酒ラボ」~山口県『村重酒造』

講演内容

『村重酒造』は、酒どころ山口県岩国市、日本三名橋のひとつ「錦帯橋」から上流約5㎞の寒冷清涼な山あいの土地に位置する酒蔵です。
明治初期創業の名門・森乃井酒造株式会社を昭和26年に曽祖父が継承し、祖父が初代蔵元、現在は私で4代目になります。

承継当時、歴史ある古い蔵がたくさんあるなかで、村重酒造は新参者でした。
しかし新参者だからできたこともあったんです。
資金を潤沢に使い腕利きの杜氏さんを雇い、当時貴重な酒米の王様と言われた山田錦を兵庫県からわざわざ仕入れて使用した贅沢な日本酒造りをするという、既成概念にとらわれない新しい挑戦が功を奏していました。
昭和40~50年代には高い評価を得て多くの賞を受賞し、酒蔵の評価がグイグイ上がっていったと聞いています。

2014年に私が蔵元を引き継ぎ、2019年からは、現杜氏 金子(2020年8代目杜氏就任。酒造り歴10年目)と共に酒づくりに励んできました。

金子は、歌舞伎町のホストクラブでNo.1になった人だけあって、非常に努力家。
その後、百貨店・飲食業界に従事していた時に知見を深めるため参加したセミナーで日本酒に興味関心を持ち、杜氏になるほど探求心があり勉強家です。
また、趣味は筋トレで隆々とした筋肉を維持するストイックなところもあります。

私はと言えば、酒蔵の跡継ぎとして当然そうなるべく人生を歩んできたように思われがちですが、蔵とは別個に建っていた家に生まれ育ったので家業との関りは薄く、20歳の時、友達に促されて初めて酒蔵を見学したというくらいです。
そんな私が大学生時代に父が病に倒れ、全く継ぐ気のなかった私にこの後を頼むと託し亡くなりました。

日本で一番大きい杉玉「玲瓏れいろう
新酒ができた合図として、毎年2~3月頃に酒蔵の軒先に掛けられるのが杉玉。
村重酒造の大杉玉は直径5メートル、重さ約3トンもある。

2007年、酒蔵を継ぐ決心をして実家に帰ったのですが、初めて足を踏み入れた酒蔵で、不器用なのもあって思うようにはできないことばかりで最初は戸惑いました。
それに加え、志をもって挑んだというわけでもない私は、古くからいる職人さんたちからもダメ出しされる日々の中で意気も上がらず…。
しかし、これではいけないと思い立ち、自分なりにやってやろうと本腰を入れて経営に乗り出すことにしたんです。

もともと、私が引き継いだ時点で経営はかなり厳しい状況でしたし、昔からいる職人さんたちにもスムーズに受け入れてもらえないという状況。
今になって思うと、そういう厳しさがあって当然で、もがき苦しみながらの数年を過ごし、その後、杜氏が変わって、「さあリスタートだ!」と意気込んだところにコロナが到来しました。
より厳しい状況ではありましたが、酒蔵の経営をコンパクトに最小化し、新しい日本酒の開発にも取組んで、日々、邁進しているところです。

『村重酒造』特選品

eight knotシリーズ

きょうかい8号酵母」を突き詰めるeight knotシリーズ
「きょうかい8号酵母」の持つポテンシャルを最大限に引き出せる醸造法を探究“する”永遠のプロトタイプ“がコンセプトです。

“「きょうかい8号酵母」の持つ特性を最大限に引き出せる醸造とは何か“を考え生み出した、新しいプロダクトとして、常に新しい酒質に挑戦しつづけ、毎年の進化を楽しめるシリーズです。
「きょうかい8号酵母」で醸したお酒を通じて【造り手・売り手・飲み手】が解けることのない絆で結ばれていくことを願い【eight knot 8の字結び】と命名。

生酛造りと高麹歩合によるボリューム感と複雑味が特長の純米酒で、白練しろねり藤黄とうおうの2種類を味わえます。
白練しろねりは、白麹由来のクエン酸が特徴的な味わいであるのに対し、黄麹由来の藤黄とうおうは、甘味・旨味・酸味が調和した味わいです。

​純米酒(容量:720ml)
アルコール度数
eight knot 白練2021: 18度
eight knot 白練2023: 16度
eight knot 藤黄2021: 17度
eight knot 藤黄2023: 17度

「きょうかい8号酵母」について

昭和52年に頒布が終了して以来、日本醸造協会が管理・保存を行ない、一般に流通していない酵母でした。
8号酵母は酵母が糖を食べる速度が遅く、アルコールの生成が遅いのが特徴で、多酸な濃醇酒向きの酵母です。
村重酒造は、「きょうかい8号酵母」を醸造協会から購入し、2003年から仕込みを続けて2007年に全国に先駆けレギュラー商品として醸造を開始しました。

村重

村重酒造を象徴する日本酒でありたいとの思いを込めて『村重』と命名。
2023年3月、幻の「きょうかい8号酵母」の復活蔵として、8号を使用した辛口の酒に挑戦。
酸味が高い辛口タイプのお酒です。

編集部より

山口県が世界に誇る岩国の日本酒。
岩国に5つある酒造のうちの1つが村重酒造です。
4代目蔵元と8代目杜氏、若手2人が織りなす日本酒造りには、積み重ねられた技術と新しい発想に裏打ちされた挑戦がこれからも続きます。
今回の参加者のみならず、日本中の日本酒ファンに支え応援していだきたい酒造の1つです。

【会社概要】
社名:村重酒造株式会社
〒741-0083 山口県岩国市御庄5丁目101-1
公式HPはこちら
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「和酒ラボ」は、「事業投資ラボ」の分科会の1つです。
2016年1月より、定期的に講演会等を開催し継続してきた「事業投資ラボ(旧:スモールM&A研究会)」。
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事業投資オンラインZ-EN編集部

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