【書評】ファミリービジネスに学ぶ リーダーの引き際に見る「貢献」意識

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「主体的な引退」で事業承継をスムーズに

ファミリービジネスのリーダーにはスキルが必要で、CEOは次のCEOにそれを教える必要があります。
引退日を決め、そこから逆算し徐々に業務を手放すようにしましょう。
事業継続のカギは主体的な引退」にあるのです。

成功する事業承継は以下のプロセスを経ています。

  • 引退までの明確なスケジュールを決める
  • 経営者の育成の仕組みをつくる
  • 計画に従う

「引退」でファミリーに貢献する

ファミリービジネスのリーダーは企業を成長させることだけでなく、やがて自分の事業を手放し後継者に渡すことをイメージしながら、ビジネスを行うべきです。
この事業承継を視野に入れた経営戦略の必要性が、ファミリービジネスと非ファミリービジネスとの大きな違いになります。
大きな変化が続く現代において、リーダーは常に新しいやり方に挑戦しながら、ファミリービジネスの核となる企業の理念をしっかりと承継していく必要があります。
成長するためには、M&Aも一つの選択肢になるでしょう。

経営者にとって最も難しい選択が引退です。
引退がきっかけとなり経営に失敗する事例を私も何度も見てきました。
骨肉の争いにならないように事業承継のプランニングを行うようにしましょう。

「企業の存続」に視点を置いた退任スタイルを

ファミリー企業の退任スタイルは以下の4つに分類されます。

  1. 帝王型:早期に引退する気が全くない。生涯にわたって経営者であることを望んでいる 。
  2. 将軍型:退任するものの、いつかカムバックすることを企んでいる。渋々引退する傾向にある。
  3. 大使型:自分の職務の大半を次世代に委譲し、会社を代表する「外交的な」役割に徹する。
  4. ガバナー型:任期が決まっており、決められた退任日がある。退任日が決まっているため、スチュワードシップを実現するマインセットが促進される。

この中で成功度の高いものは大使型とガバナー型です。
次世代の糧になるための退任を実践するには、CEOが「元CEO」の立場になったときのあるべき姿から逆算することが必要です。
ファミリービジネスの場合、サスティナビリティ(企業の存続)が重要ですから、この視点で後継者問題を考えるべきです。

役割を自覚し、「たすき」をつなぐ

スチュワードシップのある人は、「たすきをつなぐ」というファミリービジネスとしての目的が自身の目的と一体化しているために、自分の区間でどういう役割を果たせばよいのかをはっきりと自覚しています。
区間が決まっているからこそ、その役割をよりよく果たせるという面があるのです。
区間賞をとるほど調子がいいからといって次の区間も走ることは許されないと認識するからこそ、「つなぐ」ことに集中できるのです。

「長期的スチュワードシップ」という駅伝を成功させるために、本書のアドバイスやケーススタディは参考になると思います。
ファミリービジネスで最も重要なことは、「次の世代にたすきをつなぐ」こと。
そのためには、自分の引退のストーリーを事前に決め、そのプランニングを行い、確実に実践することが欠かせません。

徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)

出典:起業家・経営者のためのビジネス書評ブログ!「ビジネススクールで教えているファミリービジネス経営論(ジャスティン・B・クレイグ、ケン・ムーア) の書評」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

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徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
iU 情報経営イノベーション専門職大学特任教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。
現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。
ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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