【書評】成功のパターンを分解して再利用する「リバース思考」
- 2024/1/16
- 書評
目次
経験を通じて創造性を育む
創造性はアイデアを組み合わせるところから生まれるもので、単独で生まれるものではない。新しいアイデアや新鮮なものの見方に出合ったとき、人は最も創造力が高まる。創造性をもたらすーつのカギは、積極的に経験する姿勢だ。
多くの天才たちも、真似ることから創造力を養ってきたと著者は指摘します。
クロード・モネ、パブロ・ピカソ、メアリー・カサット、ポール・ゴーギャン、ポール・セザンヌなどの著名な画家たちは、フランスの画家ウジェーヌ・ドラクロワの作品を模写することで、自分の技術を高めました。
ドラクロワ自身も、ルネサンス時代の尊敬する画家たち、例えばラファエロやレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロの作品を長年にわたって模写し、自身のスタイルを磨いたと言われています。
このように、大画家となった人たちも、互いの作品を模写し合うことで自らのスタイルを洗練させていったのです。
模写が効果的な理由は、単に内容を記憶する以上のものを要求することにあります。
作者の意図、独自のスタイルや傾向などに注意深く目を凝らし徹底的に研究することによって、自分なりの新たな視点が生まれ再解釈ができるようになる。
これは、どの分野においても当てはまることです。
規則性の発見
小説家のカート・ヴォネガットは、人を感動させる物語にはパターンがあることを指摘しています。
- 貧しい人の成功譚(幸せな気持ちになる)
- 裕福な人の転落譚(暗い気持ちになる)
- 落とし穴に落ちる話(暗い気持ちになって、その後幸せな気持ちになる)
- イカロス(幸せな気持ちでいたら、暗い気持ちに突き落とされる)
- シンデレラ(幸せな気持ちになって、暗い気持ちになり、また幸せな気持ちになる)
- オイディプス(暗い気持ちでいたら、明るい気持ちになって、再び暗い気持ちになる)
ジェフ・ベゾス、マーク・キューバン、リチャード・ブランソンなどの大実業家と一般の人たちとの違いは、創造性や知性、やる気だけではないとされています。
調査によると、これらの成功した実業家は、パターン認識力においても優れているようです。
彼らは、過去の成功事例や現在の市場の動向を理解し、それらを結び付けて利益を生む機会を見つけ出す能力に長けているのです。
この特殊な能力が、彼らが他とは一線を画す要因の一つと言えるでしょう。
成功するビジネスモデルのパターンを理解することが、大利益を上げる企業の共通点です。
例えば、サンフランシスコの料理人スティーブ・エルズは、メキシコ料理のファストフード店「チポトレ」を、西海岸ではなくタコスが珍しい地域であるデンバーにあえてオープンすることを決めました。
当初は単に黒字のレストランを目指していましたが、1号店が大行列となり、大成功へとつながりました。
エルズの成功は、通常人気が出るだろうと想定される場所とは異なる地域で商品を紹介するという単一の決断から始まりました。
このアプローチは、多くの製品やサービスに適用可能です。
経験豊富な実業家たちは、チポトレのような事例から学び、成功事例のブループリント(計画図)を頭の中に構築します。
このデータベースを利用して、彼らは適切なタイミングでアイデアを捻出し、手持ちのリソースを最大限に活用して利益を生み出します。
競合ベンチマーキングの重要性
自動車業界でのリバース・エンジニアリングの歴史は古く、1933年に豊田喜一郎が新型シボレーを分解したことが始まりです。
この分解作業から得た知見を基に、豊田は家族を説得して、織機製造から自動車開発へと事業拡大を決定しました。
その結果、3年後には「豊田自動織機製作所」が初の自動車を発売し、後に「トヨタ」という名前で自動車開発部門を独立させました。
1世紀近く経った今日、豊田喜一郎の革新的なアプローチは、自動車業界の標準的な開発手順の一部となっています。
現代の自動車メーカーは、競合他社の車を日常的に分解しており、このプロセスを「競合ベンチマーキング」と呼んでいます。
これにより、業界全体の技術進化と革新が促進されています。
このように、リバース・エンジニアリングのメソッドを活用することで、独自のアイデアやソリューションが生み出され、イノベーションを起こせるようになるという事実は、長い歴史が証明しています。
徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
出典:リバース思考 超一流に学ぶ「成功を逆算」する方法 (ロン・フリードマン)の書評
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。