古いものを再利用することの難しさに直面
――交渉開始から4年の歳月を経て今の形ができたということですか!大変なことも多かったと思いますが、ご苦労されたエピソードがあれば教えてください。
清水氏――元は学校だったものからアートギャラリーに用途変更したことで、その基準を満たす作業が大変でしたね。
防災設備や電気関係、汚水処理…さらには古い建物のため、やっていくうちに新たな問題が出てきて、想定外の改築や追加設備の導入が必要でした。
でも、基礎的な基準をすべてクリアにしていかなければ、やりたいことがそもそもできません。
当初やりたかったことを実現するために、費用面では当初の予算を大幅に上回ってしまいましたね。
法令遵守したうえで何ができるのか、想定する予算や時間的な期限とどう折り合いをつけるかなど、着地点をどう見つけていくかが一番苦労した点です。
――資金調達にご苦労があったようですが、実際どのようにされたのでしょうか。
清水氏――もちろん、銀行借入はもとより、事業再構築補助金を利用させてもらいました。
現在は補助事業も成功している段階になっていますが、これがなかったらできなかったでしょうね。
補助金の対象に該当しないものもたくさんあったので、当初予定していた予算から若干オーバーしましたが、無事にオープンすることができて良かったと思っています。
事業に生きるのは近隣住民との良い関係
――実際にオープンされてから、周辺住民の方々との関係も良好なようです。廃校のままにされるよりも、また華やかな形で再利用されると、周辺住民の方も嬉しいでしょうね。
清水氏――そうですね。ありがたいことに周辺の方の関心も高く、こんなことをやってみたたらどうかと、ご提案いただく機会もあります。
建築を担当してくれたこの小学校出身で地元の繋がりも多い大工さんが、木工教室やそば打ち体験を提案してくれたり、もともと、地元の行事に利用されていた体育館を以前と同様に使用してくださいと言ってもらったり。
また、校庭はドクターヘリのヘリポートになっていて、緊急時には使用していいただけます。
このような地元の方々の想いを拾い上げて共存していくことが大事だと考えています。
――周辺の環境も素晴らしいですね!里山のなかの竹林や、立派な野菜を収穫できる畑など印象的です。
清水氏――施設の両隣りの方が、竹林と畑をそれぞれ所有していて、ご厚意で散歩道にさせてもらったり、キャベツなどの野菜を育てさせてもらったりしています。
グランピングに来る方々に楽しんでもらえるイベントも企画中です。
これからの季節、タケノコの採りたてを食べるなんていいですね。
――16名のアーティストの方々との交流や、この場所にアートを展開することに対する地元の方々の反応はいかがでしたか?
清水氏――地元の方たちの「こんなのものがあったらいいな」というものが少しずつ現実化しています。
アーティストの方々は、友人つながり、またそのつながりで知り合った方々。
こういうのをやったら面白いんじゃない?とか、提案もいただいて、いろいろなアイデアが実現できるフィールドがあるのは、すごく楽しいなと思います。
廃校を再利用し活用できるものにするまでに、多くの困難を乗り越えられてきた清水さん。このインタビューの続きとなる後編では、クリエイティブリユースをテーマとした「那須ユートピア美野沢アートヴィレッジ」の今とこれからについてお話いただきます。お楽しみに