経営や事業投資において、経営者は日々判断し決断を下します。現在社会の激しい変化と膨大な情報の波の中で、自分を見失わず、正しいと信じる方向へ進むために必要な精神は「禅」に通ずる。これは、私たちZ-EN編集部の根幹にある思いであり、「解」を求める読者の一助となると、私たちは日々願っています。
本コラムでは、現代のビジネスに活かす指針として、東洋思想の先人たちの言葉をお伝えして参ります。ナビゲーターは、算命学の知識を、干支暦学・数理暦学という名称で、東アジアビジネスにおけるビジネスメソッドとして提唱している 一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏が担当されます。
天道は漸を以て運り。人事は漸を以て変ず。必至の勢は、之を郤け遠ざからしむる能わず、又、之を促して速かならしむる能わず。
佐藤一斎 言志録 第4条
春、木々は芽吹き、夏の光の強まりと共に、緑の力を増していく。
そして、秋風が吹くと色づき、北風の中で枯れ木となり、春を待つ。
太陽は静かに動き、月もゆるやかな孤を描いて廻る。
「言志四録」は、江戸後期、佐藤一斎が四十余を費やし記した随想録(四部構成)。指導者のための指針書として吉田松陰や西郷隆盛の愛読書としても知られる儒教のバイブルです。
コロナ禍による現在の社会状況は、いきなり起きたと思いがちだが、地球温暖化、環境破壊、格差社会が進んできた現状を考えると、起こるべくして起きたものなのではないだろうか。
自然の営みは、決して休むことなく、ゆるやかに規則正しく廻っている。
私たちは、大きな事が起きると、
その事がいきなり起きたように感じてしまい、その勢いに飲まれ、
自分の力ではどうしようもないと、手をこまねいてしまう。
しかし変化はいきなり起きるものではない。
自然に抗う矛盾のエネルギーが充満すると、大きく放出されるだけなのだ。
そして、一度起きてしまうと、どうあがいても、その勢いを止めることなどできない。
一度起きてしまった事は、元には戻らない。
この単純な事に気づかずに、まだ元に戻れると期待している人達がいる。
逆の捉え方をすると、大変化への機は熟した。
例え、どんなに社会やビジネスを変革したくても、エネルギーが充溢されていない限り、その変化は加速しない。
変化の前になすすべもなく立ち止まっているか、
それともそこから逃げ惑おうとするのか。
戻ることは出来ないのだから、動くか止まるか。
あなたの選択肢はそのどちらかにしかないのだ。
佐藤一斎(1772~1859年)は、美濃(岐阜県)岩村藩の代々家老を務める家柄に生まれ、幼少の頃から聖賢の経書に親しんだといわれています。22歳の時、大学頭・林簡順の門を叩き、儒学で身を立てることを決意。林家の養子となり、34歳で林家の塾長に抜擢されます。多くの門弟の指導に当たり、70歳のとき、現在の東京大学総長の立場である昌平黌の儒官に任官。日米和心条約の外交文書の作成にも携わりました。
出典:東洋古典運命学講座「時代は静かに動いている、それに気づかぬ限り運はあがらず」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。