毎週月曜日に更新している本コラム。今回から8回にわたり、幕末の儒学者 佐藤一斎が記した重職心得箇条から、経営者・リーダーを支える側にスポットをあててその心得を紹介していきます。過渡期にあり変革を求められる現代のような時代は歴史的に見ても、独創的なアイデアとテクノロジーで新しい市場を切り拓くアントレプレナーの素養を持つリーダー像が求められると、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏は考察します。個性的なリーダーを支える側にはどのような心得が必要なのでしょう。第1回目は、重職の意味についてお届けします。
重職と申すは、家国の大事を取り計らうべき職にして、
此の重の字を取り失ひ、軽々しきはあしく候。
大事に油断ありては、其の職を得ずと申すべく候。
先づ挙動言語より厚重にいたし、威厳を養ふべし。(重職心得箇条 第1条 佐藤一斎)
経営者を支える立場にいる者たちは、
その企業の大事な事を任され、取り計らう役割を担っている。
そのため、
幾ら経営者と親しくなっても、友達感覚に陥ってはならず、
社内においても、気安い人物、軽々しい人物だと思われぬよう
威厳を保って接せねばならない。
重職心得箇条とは、幕末の儒学者である佐藤一斎が、自藩の重役たちに向け、藩の重職の心構えなどについて書き記しました。聖徳太子の十七条憲法に擬して、十七箇条で構成されています。
個性あるリーダーに大切なのは、彼らを支える側近=重職の存在である。
それは、企業の管理職やコンサルタント・士業という立場の人だ。
重職は、いざという時の重しとしての役割が求められているから“重職”なのである。
いざという時、社員を不安から救い、
安心させることが出来なければ、
経営者を支える役割は担えない。
社員に、厳しい態度や条件を提示せねばならない時、
社長の代わりに「嫌われ者」になることも、大切な役割である。
そのため、常日頃から言動には注意をして威厳を保つことが求められる。
威厳がないから、パワハラだと言われてしまうのだ。
重々しい存在こそあるべき姿。
だからこそ、重役・重臣・重鎮と呼ばれるのではないか。
佐藤一斎(1772~1859年)は、美濃(岐阜県)岩村藩の代々家老を務める家柄に生まれ、幼少の頃から聖賢の経書に親しんだといわれています。22歳の時、大学頭・林簡順の門を叩き、儒学で身を立てることを決意。林家の養子となり、34歳で林家の塾長に抜擢されます。多くの門弟の指導に当たり、70歳のとき、現在の東京大学総長の立場である昌平黌の儒官に任官。日米和心条約の外交文書の作成にも携わりました。
出典:東洋古典運命学「経営者を支える者の心得① 金兄妹から学ぶ」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。