理に適う冷静さこそが時代を動かす一転変化力となる
- 2021/7/26
- コラム
連載で毎週月曜日にお届けしている重職心得箇条で学ぶ「経営者を支える者の心得」。7回目は、ときに信念や定説を捨ててまでも道理に従うことの重要さを説く第12条です。他者の声に耳を傾け一転変化させることで時代は動いてきたと、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏は考察されています。
大臣たるもの胸中に定見ありて、
見込みたる事を貫き通すべき元より也。
然れども又虚懐公平にして人言を採り、
沛然と一時に転化すべき事もあり。
此の虚懐転化なきは我意の弊を免れがたし。
能々視察あるべし。(重職心得箇条 第12条 佐藤一斎)
重職に就く者が、
自分の意見を持ち、
一度決めたことを突き通すこと、
これは当然のことであるが、
同時に、先入観や偏見を持たず、
他者の意見に耳を傾け、
冷静に判断し、納得したら、
一転変化、
素早く変化せねばならない。
そうしないと、逆に我欲・独断、
凝り固まった我意という
弊害に囚われてしまう。
一転変化力こそ、激動の時代を切り開く、切り札だ。
澁澤栄一でみる一転変化力
澁澤ほど、一転変化力で
時代を創りあげた人物はいない。
埼玉県深谷の豪農の子として生まれ、
尊皇攘夷の影響を受け、
高崎城の襲来と、横浜焼き討ちを計画、
70名程の同志を集め武器まで手配していた。
しかし直前に、
「無謀すぎて無駄死にするだけだ」と指摘され、
その道理を認めて、いきなり中止。
ものすごい、一転変化力だ。
澁澤栄一にみる一転変化力の秘訣
感情より道理を優先
純粋なまでの好奇心と向学心
経済的余裕
忖度しない素直さ
憎めないチャーミングさ
卓越したプレゼン能力
そして何よりも大切なのは、
生涯変わらぬ強固な理念だ。
オーナー企業こそ、一転変化!
一転変化力は、時代のチャンスをつかむ力。
大胆な経営戦略を打ち出しやすい
オーナー企業が絶対有利だ。
現在利益が出ていても、
たった一つの発明や法改正、そしてウィルスで、
価値が消失する時代において、
めげずに一転変化を繰り返して
進化していくしか、道はない。
M&Aするくらいなら、廃業した方が良いと、
守りに徹して判断できない経営者は多い。
しかし、
うだうだと理論をこねくり廻す時間など、
もうないのだから、
失敗を恐れてリスクをとれないと自縛せずに、
一転変化で前進していくことこそ、大切ではないか。
佐藤一斎(1772~1859年)は、美濃(岐阜県)岩村藩の代々家老を務める家柄に生まれ、幼少の頃から聖賢の経書に親しんだといわれています。22歳の時、大学頭・林簡順の門を叩き、儒学で身を立てることを決意。林家の養子となり、34歳で林家の塾長に抜擢されます。多くの門弟の指導に当たり、70歳のとき、現在の東京大学総長の立場である昌平黌の儒官に任官。日米和心条約の外交文書の作成にも携わりました。
出典:東洋古典運命学「渋澤栄一から学ぶ、一転変化力」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。