プラスチック・ブロックで思考を可視化!対話と戦略を深めチーム強化も(後編)
- 2023/5/25
- インタビュー
プラスチック・ブロックを用いたワークショップで企業のチームビルディングや戦略策定など、さまざまな場面で効果を発揮するというLEGO®SERIOUS PLAY®の技法と教材を活用したワークショップ(以下、LSP)。そのLSPを日本で10年以上普及し続ける株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツの代表取締役社長、蓮沼孝氏は前編で、創造性や組織開発を促進するメソッドなどについてご紹介くださいました。後編では、より具体的なLSPの手法や効果とともに、近年、活用が広がる教育現場での様子などについて伺います。
目次
LSPは自己を客観視させ、場を和ませる
Z-EN――具体的なLSPのワークショップの様子を教えてください。
蓮沼孝氏(以下、蓮沼氏)――5人ほどで1組になり、「頭で考えない、設計しない、手を動かす」ことから始めます。
専用ブロックを使って、不思議な生き物をつくり、呼び名を付け、それぞれがその理由を話します。
すると、引っ込み思案な人でも、ブロックという「物」を見ていることで自分のことを客観視でき、すんなり話すことができるのです。
通常の会議などでは、2割の人がリードし、8割がロンリーガイと呼ばれる落ちこぼれになってしまいます。
でも、こうしたウォーミングアップをすると、全員が当事者として参加する空気が事前にでき上がります。
さらに、発言者以外は人の話を「聞く」という行為を重ねることで場の親密度が高まり、安心感も醸成します。
ファシリテーターが導く高度な集合知
――確かに、「聞く」という行為はしているつもりで、実はできていないことも多いですね。
蓮沼氏――そこで、発言力のある人だけが対話を独占しないようにファシリテーターが場を調整します。
我々は「100/100」という名称で呼んでいますが、その場の参加者全員が自分の考えを表明できる設計になっているので、全員が新しい発見をし、グループで新しい気付きを得たり、集合知を形成できたりすることも大きな特徴です。
最初は「ブロックでそんなことができるの?」と半信半疑だった参加者も、複数のアイデアを1つにまとめるといった体験をすると、意見が180度変わって納得してくれます。
広がる教育現場での活用、参学連携も
――とても興味深いです。LSPは企業以外の方にも有効なのでしょうか。
蓮沼氏――近年は学校や教育現場で活用される例が増えています。
ある美容学校で、生徒とその親にLSPを体験してもらったことがあります。
美容学校をマイナスイメージで捉えていた親御さんが多かったようですが、LSP体験後には変化が見られたのです。
普段の会話で使っていた言葉の深い意味、お互いの価値観や考えていることを掘り下げて理解することができ、コミュニケーションが深まったと、親御さんから感謝の言葉をいただいたことがあります。
著名な中高一貫の進学校で授業に活用されており、LSPのような新しい手法に興味、好奇心を持って真剣に取り組む生徒ほど、その後の学力が伸びる傾向が見えるといったケースも紹介されています。
また、九州産業大学でワークショップを通して学生が社会への見方を広げ、社会との関わりを考えるなど、大学でも新たな学びのスタイルとして注目されるようになっています。
名古屋大学では産学共同でのワークショップを開き、地域創生や新規事業の立ち上げに挑戦するなど、産学連携のケースも増えています。
▶「通常の会議では8割がロンリーガイ」という表現にドキリとした方もいらっしゃるのではないでしょうか。真剣にLSPに取り組む生徒の学力が伸びるという情報も興味深いものです。次のページでは、そのLSP体験を主導するファシリテーターが増えている現状と、蓮沼さんが目指す今後についてお話しくださいます。