社長の幸せな出口(Exit)を見つけよう

日本国内には、社長と呼ばれる方は何人いるのでしょうか。直近の総務省・経済産業省データーでは約385万社(※1)。総務省による労働人口は約6,700万人(個人事業主を含む)(※2)。兼務もあるので、単純計算はできませんが、働く人の約50人に1人は社長という計算になります。

社長の最後、引退が必ずしもハッピーとは限りません。責任感と努力が、幸福度と比例する訳でもなく、ある意味残酷な世界でもあります。では、どうすれば、幸せな出口を迎えることができるのでしょうか。

(※1)出典:総務省・経済産業省「平成28年経済センサス」より
(※2)出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)11月分結果」より

社長の賞味期限を知る

社長は生身の人間なので100%確実に引退の時期が訪れます。会社も「法人」という生き物ではありますが、努力をすれば人間の寿命以上に、時代を超えて生きながらえることが可能です。

人生100年時代が訪れるとしても、経営者、ビジネスマンとして旬な時期は恐らく60~70代が限界のはずです。それを前提に事業承継を考えると、やはり社長が元気で複数の選択肢を選べる内に方向性を決めるべきです。体調不良になった、業績が悪化した、キーマンが辞めた、取引先が倒産した、不祥事があった、使い込みがあった・・・など、辞めざるを得ない問題が起きてから考えるのでは遅いのです。

Z-EN編集部作成

本来「親族内承継」がベスト

筆者は上記④の「外部承継、М&A」による社長の出口を得意分野としていますが、本音では①の「親族内承継」がベストと考えています。その理由は、中小企業経営において創業者一族の求心力、理念、ブランディングはとても強い経営力となるからです。

ただし、時代の変化が加速する中で、経営のハンドリングができる人材が親族内にいるとは限らず、減少しているのが現状です。資本と経営を分離して、外部から番頭さん、プロ経営者を招聘するという選択肢もありますが、そのためには、それなりの魅力的な会社になっている必要があります。

スモールМ&Aで増加しつつある「従業員承継」

М&Aの失敗要因を分析すると、人や取引先が離れてしまったということが多々発生します。無理もありません、ある日突然、第三者がオーナーとなってしまうのですから。

社内の実力者、番頭さんであれば、社内外の関係者が認めやすく、うまく承継できることがあります。さらに、前社長が仕事をしない、求心力がない場合などは承継を機会に結束力が高まることもあります。

とはいえ、従業員が承継するためには「お金」の問題が発生することもあり、簡単ではありません。譲渡代金を用意できない、借入の承継を銀行が認めない等です。最近では小規模М&Aの場合、地元金融機関が譲渡代金(退職金)の融資などに応じるケースが増えてきており、今後に期待するところです。

IPOという選択肢

正直、上場というのはハードルが高く、気軽に中小企業に勧める選択肢ではありません。東京プロマーケットという上場市場は聞いたことがあるでしょうか。その名の通り、機関投資家のプロしか売買できない市場ですが、れっきとした上場マーケットです。

出典:https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/new/basic/index.html?fbclid=IwAR3b43T_ALqzr4hu-7iqDB0sVVoH8M4v2X9S7vqVBFN4vYu78llI5ZqnTtc

売上基準なども低く、多くの老舗中小企業が上場しています。その理由は様々ですが、経営と資本の分離を計り、プロ経営者を招聘する。その上で市場に移行するために、第三者へのМ&A準備期間として捉えるなど様々です。人材採用、取引拡大、資金調達面で多くのメリットがあるため、選択肢のひとつとして加えるのも良いでしょう。

出典:日本取引所グループ 銘柄一覧(東京プロマーケット)

М&Aは過度に期待しない

現在、中小企業のМ&A市場が盛り上がっていますが、第三者に譲渡できるということはそう簡単ではありません。引き受ける側としても多くのリスクを伴いますので、“希望通りの条件で譲渡できる方が少ない”という現実を知る必要があります。

また、多くの中小企業はオーナーである社長に顧客やノウハウなどが紐づいており、社長=企業価値というケースが多いのが実態です。第三者に譲渡するためには、社長がいなくなっても経営できる仕組み、マニュアル化、組織作りが必要となります。ある日突然思い立って、第三者に譲渡できる訳ではないのです。

廃業+事業譲渡という選択肢

あまり楽しい話ではありませんが、結果として廃業を選択しなければならないことが、実際の現場ではままあります。とはいえ、廃業するのも簡単ではありません。多くの中小企業が資産を処分しても、借入や買掛金、退職金支払が残ってしまうという現実もあります。

廃業という現実に直面した場合、自社がもつ資産、決算書には表れない技術や取引先、従業員など改めて評価して下さい。第三者からみれば、思わぬ評価がつくことがあります。その場合は、単に廃業せずに事業譲渡という形で引き取ってもらうことができます。

筆者も、これまで廃業を前提とした事業譲渡、資産譲渡は数件ほど手掛けたことがあります。会社の名前は無くなったとしても、従業員や取引先と一緒に事業を継続することができる。これはベストではないかもしれませんが、ベターな選択肢だと感じます。

コロナという思いがけない事態が発生し、多くの中小企業が大変な局面にある状況ですが、いずれ対峙しなくてはいけない「社長の出口」を、前倒しで考える良い機会とも言えます。

これは、どんな優良企業であっても同じことです。

社長の幸せな出口、それは経営者の価値観それぞれだと思いますが、現実的には上記パターンのいずれかに落ち着くはずです。まずは、時間がある間に現在の状況を把握し、ベスト、もしくはベターな選択肢を想定し準備することが幸せな出口を実現できるきっかけになるはずです。

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表

投稿者プロフィール
株式会社つながりバンク 代表。
オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。
スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士、日本外部承継診断協会 顧問。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

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