第4回目/三密M&Aを実現しよう

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日本M&Aアドバイザー協会の大原達朗会長による解説、スモールM&A、個人M&Aに取り組むうえでの12のポイントのうち、前回は第3回目「まずは成功要因を知る」をお届けしました。その続きとなる第4回目は、「三密M&Aを実現しよう」です。

※本記事は、大原氏がYouTubeで配信する「【1時間で学ぶ 】2020年 スモールM&A現実と成功のための12のポイント」を編集したものです。

三密がM&Aの成功のカギ

~ポイント4~

三密M&A、つまり、距離的に近い、業種が近い、関係が近いという3つの密を満たすことが、スモールM&Aの成功のカギだと私は思っています。ただ、あくまでも成功確率が高いという意味です。能力の高い方であれば、距離的に遠く業種が離れていても、関係が密であれば成約してうまくやっていくでしょうが、会社のサイズが小さくなればなるほど、三密から離れて成功することは厳しくなります。

大原氏の資料を元にZ-EN編集部作成

距離的な近さ

オーナー社長がバリバリ働く5人くらいの会社の場合、その社長は、非常に広い範囲の役割を担います。経営全般を見るのは当然、実務も相当やっているはずです。板金工場の社長であれば、資金繰り、経営、顧客交渉等、経営全般への力があるのはもちろん、板金の実務自体にも携わり技術力も一番あるようなケースで、日本にはかなり多いでしょう。事業承継の案件なので、さすがに朝から晩まで工場で板金をやっているわけではないでしょうが、社員の作業チェック、アドバイスなどをしているはずです。M&Aによって、その一番重要な方が抜けてしまうことになるので、そこを補填しなければならないという問題が生じるのです。

仮にこの会社が長崎にあって買いたいと言っている会社が東京の場合、M&Aが成立すると抜けた社長の代わりを入れなければなりません。大きい企業であれば実務と経営が両方できる適任者を出向などで長崎に赴任させますが、そのコストは膨大です。回収費で賄わなければならない人件費のうち、赴任させた人の現地での生活費・家賃、東京への交通費など、軽く1,000万円は超えるでしょう。5人でやっている会社で利益が1,000万円でているとしたらまさに優良会社ですが、その1,000万円が人件費で飛んでしまいます。

売り手側としては、利益が1,000万円出ているのだから何千万円かで簡単に会社を売却できると考えがちですが、買い手側からすると、買ったら1,000万円経費がかかり利益が飛ぶので金額を下げざるを得ません。これでは条件が合わずマッチングしないのです。

業種の近さ

できれば近隣の地域に買収した会社があって車で1時間の通勤となれば、毎日行って社員をチェックしたり教育したりしてリーダーを育てることもできるでしょう。ただし、このようなことは同業でなければできません。

例えば、50件の飲食店を経営する会社が隣町にあったとして、確かに経営力はあるでしょうが実務の指導はできないでしょう。そうなると近い、密の業種である必要がでてきます。

自ら相手を探す

もちろん、これだけがすべてではないですが、成功確率・再現性が高いという意味では、三密の条件は非常に大切だと考えます。さらに重要なのは、距離・業種ともに近い売り案件を探すのに一番適した人は誰なのか、ということです。

私は皆さんだと思います。M&Aアドバイザーにしても、全国のすべての業種、すべてのサイズについて案件情報を持っているわけではありません。サイズが小さくなると儲けも小さいため、なかなか動いてくれません。ましてや経営管理がずさんだったりすると、アドバイザリー業務上大変なことが多いうえ、報酬が安い。結果多くのアドバイザーは、やりたがらないです。ですから、自分たちで相手を探すという選択肢を持たなければM&Aはうまくいくはずがないのです。

ご自身で売りたい・買いたい会社を探すというのは、私から皆さんへの一つのメッセージです。地場の事業承継案件を持つ金融機関や、アドバイザリー会社、インターネット上のマッチングサイトも含め、これらを活用した情報収集は十分にやるべきです。これに加え、皆さん自身がどんな会社を買いたいのか、どんな会社なら売ってくれるのかを調査する。または、後継者がいなくて事業承継を漠然と考えているけれど、具体的に何をしていいかわからない企業もたくさんあるはずですから、同業の業界団体などの情報を収集するなど、自分たちでしっかりとやっていかないといけないと思っています。

三密M&Aを実現するために何が必要か

~ポイント5~

M&Aの知識と実務を支援するネットワーク

三密M&Aを実現するためには、第一に、自分たちが知識を付けることです。M&Aについて何も知らないとアドバイザーに丸投げしなければなりませんが、コストを抑えたい場合できるだけ安いアドバイザーに依頼する可能性が高くなります。安価で請け負うアドバイザーは、やっていることも分かりにくいうえ、成果も出にくいです。たとえ、いいアドバイザーを探そうという観点を持っていたとしても、M&Aとは何か、どんなことをやるのかは、どこかの時点でしっかりと学習しておく必要があるでしょう。

2点目は、M&Aの勉強は必要ですが勉強だけではダメですから、実務で試していただきたいということです。実際どこかの会社に交渉してみたいとか、話をしたら思った以上に相手が乗ってきたのでこの後どのように交渉していけばいいのか、といったことを相談できるネットワークをもつことが必要でしょう。

私が主催する「日本M&Aアドバイザー協会」は、この二つを提供していますので、検索して情報をとってみてください。また、他にも情報を提供する会社がいろいろありますので、情報を吟味して探してみてください。

【著書】
この1冊でわかる!M&A実務のプロセスとポイント
サラリーマンが小さな会社の買収に挑んだ8カ月間

次回5回目は「経営者が自ら動く」をお送りします。

出典:【1時間で学ぶ 】2020年 スモールM&A現実と成功のための12のポイント
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

シリーズ『スモールM&Aを成功させたいあなたに』はこちらからご覧ください。

大原達朗
日本M&Aアドバイザー協会代表理事
アルテパートナーズ㈱代表取締役
アルテ監査法人代表社員
公認会計士

投稿者プロフィール
青山監査法人プライスウオーターハウスに入社し、大手一部上場企業を含む国内街の会計監査、IPO支援コンサルティング、買収監査(デューデリジェンス)等を担当
2004年大原公認会計士事務所を開業独立
インドネシアPT.SAKURA MITRA PERDANAを立ち上げ、実業家として国際的に活躍。会計監査、M&A、IPO、PMI、DDなどファイナンス・アカウンティングの領域で23年の経験を持つ

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