【書評】理念経営~人材は社会からの預かりもの

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社員は“社会からの預かりもの”

経営者は人材を「社会からの預かりもの」と捉えるべきなのです。(人材を)「採る」ではなく、「預かる」。それだけの責任が、経営者にはあるのです。「社会からの預かりもの」を預かった企業は、その預かりものを「成長させる」ことが預かりものに対する責任であり、それが会社を成長させるスパイラルの一部です。

組織作りに加え、経営者の人材に対する姿勢も非常に重要です。
人材は単に「採用する」のではなく、社会からの「預かりもの」であるという考え方が求められます。
人材を短期的に利用することはやめて、社会的資産として預かり、その成長と幸福に責任を持つという認識にシフトすべきです。

この視点に立てば、経営者の役割は明確になります。
預かった人材の能力を最大限に引き出し、成長を促し、社会に貢献できる存在へと育てることです。
そのために「成長感」「貢献感」「連帯感」を育む環境を提供し、人と企業の成長スパイラルを生み出すことが求められます。

求められるのは企業文化の醸成

このように人を育て人と企業が共に成長するという好循環を支えるものは、理念経営と企業文化の構築です。
明確な企業理念は、社員に共通の価値観と行動指針を提供し、理念に基づいた経営判断と日々の業務を通じて、社員は仕事の意義を実感し(貢献感)、成長機会を得て(成長感)、仲間との絆を深めること(連帯感)ができます。

企業文化の構築は、短期的な利益追求ではなく、顧客起点の価値観で持続可能な成長を目指す経営姿勢から生まれます。
それは、人材を単なるコストから企業の未来を共に創るパートナーと捉え直すことであり、その結果、企業の競争力強化にもつながるのです。

成長を加速させる「集合天才」チームづくり

【集合天才】一人の知識、一人の時間、一人の力は無力である。私達は、個人の経験を全体のものとし、全体のカを個人に結集して、創造的活動を行う集合天才となろう。

「集合天才(Collective Genius)」とは、各分野の突出した才能を集めれば、1人の天才をも凌ぐことができるという考え方です。
日本語では「集合天才」と訳され、ゼネラル・エレクトリック社の理念としても知られています。
価値あるものを世の中に生み出す際に、天才の出現を待つ必要はなく、チームや組織としての集団の力を活用することで、一人ひとりの才能や情報が有機的に絡み合い、1人の天才以上の力を発揮することを目指すものです。

この「集合天才」の考え方は、企業経営やチームマネジメントにおいて極めて重要です。
現代のビジネス環境で次々と発生する、複雑で多様な課題を解決するためには、単独の天才に依存するのではなく、組織全体で知識と経験を共有しながら最適な解決策を導き出す必要があるからです。

例えば、顧客起点の思考を持ちクライアントの課題を正しく発見し、1人だけで解決しようとせずにチームの力を活用することで、新たな視点や革新的なアプローチが生まれ、より効果的な解決が可能になります。
その結果、クライアントから感謝され、信頼を得ることができるのです。
「集合天才」の考え方を実践する企業では、個々のメンバーが主体的に意見を出し合い、互いに補完しながら価値を創造していきます。
これにより、メンバーの成長が加速し、組織全体の競争力も高まります。

顧客起点思考+感謝の効果

感謝の気持ちを「ありがとう」と言葉できちんと伝えることができる職場では、社員同士の信頼関係が強化され、連帯感が生まれます。
これは、個々のモチベーションを高めるだけでなく、チームワークを向上させる重要な要素です。
感謝の文化が根付いた職場では、社員は互いの成果を認め合い支え合うため、より高いレベルの成果を生み出すことができます。

企業の成長において、人材の育成は欠かせません。
「集合天才」の仕組みを取り入れることで、社員一人ひとりが自らの成長を実感し、会社全体の成長スパイラルが生まれます。
この成長環境を支えるのが、感謝と協力の文化です。
「感謝の文化」を追求する企業こそが、人を成長させ、結果としてより強い組織を築くことができるのです。

短期的な成果ではなく、長期的な視点で社員の成長を支援し、チームの力を最大限に活用することが企業の持続的成功につながります。
「集合天才」の考え方を実践し、感謝の文化を根付かせ、理念経営と顧客起点思考を両立させることで、クライアントから感謝され、結果として売上や利益の向上につながります

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出典:人が育つ会社、育たない会社: 顧客起点思考 集合天才 理念経営 (堀越勝格, 江蔵直子,矢澤知哉)の書評
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。


著者:徳本昌大、松村太郎(2024年8月6日発売)
世界で初めて時価総額3兆ドル企業となり、次々と革新的な製品を世に送り出すアップル。世界中の人々の生活にイノベーションを起こし、絶えず高成長・高収益を継続している魅力的な投資先でもあります。アップルは、ビジネスをどのようにして考え、実行し、成果を上げているのか。アップルのように考え、行動するには、どうすればよいのか。17のビジネスフレームワークを用いて、アップルを読み解きその成功の要因を明かします!

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徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
iU 情報経営イノベーション専門職大学特任教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。
現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。
ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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