分散型と中央集権型を組み合わせて堅牢なサービスに
中島氏――暗号資産が持つ課題について、廣末さんの見解をお教えください。
廣末氏――今のフェーズは、既存社会とのフィッティングを試されている期間と捉えています。
ビットコインは消費電力が膨大だとよく言われますが、社会に受け入れられるためには、自然エネルギーを活用したマイニングなど、エコシステム全体で環境問題を考えないといけません。
また、マネーロンダリングの問題も常につきまといます。
FATF(ファトフ)というマネーロンダリング対策やテロ資金対策などにおける国際的な指導、推進等を行う政府の金融活動作業部会の動向は、意識しておく必要があります。
中島氏――2020年は、DeFi(分散型金融)が人気になり、分散型管理の取引所も多く生まれました。取引の実行や記録が人の手を介さずにブロックチェーン上で行われているDeFiは、「究極の自己責任」の世界だと思いますが、個人的には取引所のようなセキュリティ管理が重要な部分は中央集権型で行うのが良いのではないかと思っています。つまり、分散型と中央集権型の良いところを組み合わせていくのです。
廣末氏――そうですね。すべてが分散型だと無責任になりますから、組み合わせるのが良いと思います。
常に新しい技術とのぶつかり合いのなかで、今はまだ社会に溶け込めるかを試されている局面ですね。
まだまだ暗号資産取引は始まったばかりですから、健全な会社が事業としてしっかりやらないといけないと考えています。
中島氏――ビットバンクさんのような健全な企業が増えていくことは、業界全体にとって望ましいことだと思います。ビットコインは、過去にシルクロードというダークサイトで悪用されていたこともありますが、今後はモラルを持った人や企業が、正しい方向に進めていく必要があると思います。そうでなければ、本当の意味で普及していきませんから。
トラフィックが集まるところに商機がある
中島氏――ビットバンクさんが今後目指していることなどを教えてください。
廣末氏――一番良い取引所にしていきたいと考えています。
セキュリティはもちろん重要ですが、現物取引の流動性を確保することも重要だと思います。
市場としてはデリバティブが大きいのですが、現物取引に特化してシェアを上げていきたいですね。
現在、現物取引高国内シェアは約34%でトップではありますが、これに満足はしていませんし甘んじることもありません。
今の暗号資産取引所は、IT業界でいうISP(インターネットサービス・プロバイダー)だという話をよくしています。
ISPは、インターネットに接続するゲートウェイであり、トラフィックが集まる場所ですから極めて重要です。
そこでは、いろいろなビジネス機会と出会うことができます。
短期的には取引所サービスに集中し、状況を見ながら他の事業に発展させていこうと考えています。
インターネットの草創期、ISPが勃興しブラウザが登場した後、アマゾンやグーグルなど、今では超巨大企業になったスタートアップが生まれました。
暗号資産の普及後にも、インターネットと同じように次のビジネスが生まれるはずです。
中島氏――まだまだ草創期にありますから、今後が楽しみですね。今から暗号資産業界に入ろうという人や、ビットバンクさんで仕事をしたいという人もいると思います。そんな人に向けて、よろしければメッセージをください。
廣末氏――「ビットコインが好きな人」「ブロックチェーンが好きな人」と一緒に仕事をしたいですね。
やはり、好きじゃないと楽しくないですから。
中島さんと話していても、「この人はビットコインが好きなんだな」とすぐにわかります。
あと重要なことは、誠実であることです。
まだ誤解も多く、なにかと疑われる業界ですから、仲間にもお客様にも誠実であることは貫いていかないといけません。
中島氏――暗号資産取引を始めたり、業界に入ろうとしたりする人が、学んでおいた方が良いことはありますか?
廣末氏――学んでおくと良いのは、「資本主義のルール」や「経済のルール」、それからITの基礎知識とスキルです。
情報格差という表現がありますが、知っているかいないかで人生が変わることはよくあります。
IT化はまだまだ進みますし、DXが当たり前になるでしょう。
ルールや基礎を知ることで、その知識が先を読む力になると思います。
出典:マイナビなユース「ビットコインは幾度の社会的ストレステストを経て唯一無二の地位を確立する(後編)」
本稿「ビットコインがもたらす共通認識の転換は大きな商機となる」の前編はこちらから
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