2016年に廃校となった校舎をアートの力でリデザインし、国内・海外で活躍する現代アーティストの作品を展示する「那須ユートピア美野沢アートヴィレッジ」が2022年秋にオープンしました。手掛けるのは、那須スポーツガーデン有限会社代表取締役の清水博康さん。クリエイティブリユース※をテーマに、グランピングやフィンランドサウナ、カフェなどが設置され体験型の癒し空間を満喫できるようになっています。オープンに漕ぎつけるまでいろいろとご苦労があったとお話される清水さんに、地域との関係構築、廃校再生プロジェクトに込められた想いなどをお聞きしました。
※ゴミとして捨てられる廃棄物を、人間の持つ創造力を使って新しい価値を持つアート作品にする活動のこと
家業の承継から始まった廃校リノベーション
Z-EN――アートリノベーションを始められる前の清水さんのご経歴から教えてください。
清水氏――2004年にモバイルコンテンツのベンチャー企業サイバードに就職し、2006年にアプリ・ゲーム制作を行う株式会社スカイリンクを創業し、18年経った現在も継続しています。
同時に、10年前から少しずつ進めていた家業の事業承継が完了し、那須スポーツガーデン有限会社という会社の代表も兼務しています。
――そこから廃校リノベーターになられたきっかけを教えてください。
清水氏――承継した会社が所有していた物件を改装し、大学生向けの合宿事業を立ち上げた経験によります。
その事業を伸ばすことに加えて、廃校を利用した事業に興味を持っていましたので、この那須町簑沢の廃校 旧美野沢小学校を見つけてからは、ここで何かやりたい!と考えるようになりました。
2018年から那須町と交渉を開始し、町と地域住民も巻き込んで、1年半後の2019年にやっと借りることができたんです。
ところがちょうどコロナの感染拡大と重なって、合宿所の事業収益が激減。
当初の計画だった合宿所の拡大路線を変更せざるを得なくなり、コロナが収束するまでのつなぎとしてグランピング事業をやろうと考えました。
地元の理解を得て理想郷オープンへ
――現在やられているグランピング事業は、コロナが明けるまでのつなぎだったんですね。
清水氏――事業計画を練り直すため行った市場調査やシミュレーションにより、那須のエリアは競合も多くて付け焼刃の事業だと差別化ができないことが分かりました。
結局、一時的な事業の転換ではなく当初の計画自体を変更しようと、再度那須町との交渉と地域住民への説明を始めました。
最終的にご理解をいただき、事業のスタートを切ることができたのは2022年の1月。
そこから工事着工となり、同年10月に、「那須ユートピア美野沢アートヴィレッジ」をオープンすることができした。
▶廃校を再利用して本格的な新事業に乗り出した清水さん。ご想像のとおり、数々の難問が立ちはだかる船出だったようです。地元との関係構築やアーティストとの交渉など、「那須ユートピア美野沢アートヴィレッジ」ができあがるまでに取り組まれたことについて、次のページでお届けします!