出会いから始まる未来~いい人材とは何か
- 2022/2/21
- コラム
人材不足に悩む経営者は多いと思いますが、人材採用の手段はいろいろあるとしても、入社後も長く勤めてくれる人材を確保することは非常に難しいと言わざるを得ないでしょう。
前回コラムでは、企業が掲げる理念を経営者や取締役だけでなくすべての社員が共有し、その価値を実践することが組織の結束力を高めることを解説くださった株式会社チームエルの代表 堀越勝格さん。
2回目となる今回は、企業が採用したいと考える「いい人材」の判断基準はどうあるべきか、企業と人材のマッチングについて解き明かしてくださいます。
前回同様、堀越さんは経営者として、岩根弘和さんは取締役として、そして矢澤知哉さんは責任ある若手社員として、それぞれの立場から、社員定着の秘訣「いい人材」の見極め方についてお話くださいました。
目次
理念に共感できる人材を登用
いい人材に出会えていますか?
皆さんの会社は、人材が充足していますか?
人材不足の時代と言われていますが、実は、人材が不足していない時代なんてこれまでもないんです。
常に、ずーっと、「人材不足」は続いています。
つまりこれは環境や時代背景の問題ではなく、業界も関係ない、経営の「永遠のテーマ」だということ。
要は、
「うちの会社に『いい』人材が足りない」
「募集してもなかなか『いい』人材が来ない・・・」
という嘆きが
「人材不足」と表現されているだけのことなんですね。
そう、キーワードは「いい」人材に出会う、ということ。
企業理念への共感性がカギ
いい人材が多ければ多いほど経営はうまくいく。
昨今の採用活動の傾向を見ると、「とにかく応募者を増やすために魅力的な募集広告を!」となりがちですが、大切なのは「応募者を増やす」ことではなく「自社にとって『いい』人材が来てくれる募集広告を」が正しいのです。
また「いい」人材は会社によって異なります。
「いい」人材とは、「スキル」が優秀である以上に「自社に合っている」人材ということ。
そして「自社に合っている」とは「自社の価値観=理念に共感してくれる」こと。
これが大前提です。
価値観が合わないと、いくらスキルが優秀でも組織になじめなくて能力を発揮できない、といったことが起きます。
既存の組織における「人の問題」も、実は「価値観」が合わないことによる“いざこざ”がほとんどなのです。
そして、価値観が合う人材であれば、早咲き遅咲きはあるにせよ、必ず活躍してくれるようになる。
経営者としては、いかに「価値観の合う=理念に共感してくれる」人材にたくさん出会い、仲間にできるか。
これが、会社の未来を左右するとても重要なことなのです。
企業と人は価値観でマッチング
スキルと人柄だけで採用してはいけない
なかなか「いい人材」が採れない、定着しないといった、採用に関するコンサルティングのご依頼が増えています。
ある自動車関連事業C社様の採用コンサルティングがこれから始まるという時に、U社長から、嬉しそうにこんなお話がありました。
「整備士が不足して困っていたが、やっと採用ができそう。大ベテランだけど、大手カーディーラー出身で経験豊富、過去に会ったこともあり、人柄も良さそうなので採用しようと思う。」
C社様は、一人ひとりの社員をとても大切にし、常に現状に満足せず「学び」「成長」を求めている会社です。
すでに採用が決まっているとのことでしたが、念のため「入社の際に貴社の理念・行動指針をしっかり解説し、学びを大切にしているという貴社の価値観に共感できるのか、を確認してください」とU社長にご依頼しました。
すると、入社した翌日に本人から申し出があったのです。
「整備をするために入社したいと思った。今から新たなことを学びたい、とはもう思えないため、入社を辞退したい」。
皆さま、このエピソードをどう思われますか?
採用が取消しになったからダメでしょ、と思われる方もいるかもしれません。
しかし、もしそのまま入社したら、そのあと起こる問題を想像してみてください。
全員が向上心を持って新たなことを学ぼうとする中、その方は共感できず、苦しい思いをするでしょう。
既存社員も気を使い、ベテランだから仕方がない、と容認することもあるかもしれません。
そして、その小さな”ほころび”の積み重ねが、C社が大切にしている「学び」の価値観を失わせる結果になるのです。
いい人材が理念を実現する
目の前の不足している「機能」補填のみを目的にして価値観が合わない人を採用してしまうと、採用される人、採用する企業ともにLose-Loseになるのです。
その後、C社様は、採用コンサルティングのご支援で、採用募集サイトの文面、面接時の見極め基準の最上位を「理念に共感できるか=価値観が合うか」に変更しました。
今は、理念に共感する新たな人材が採用でき、その方も日々学びを大切にし、活き活きと働き、既存社員にもいい刺激となっています。
企業にとって「いい人材」=「価値観の合う人材」を増やすことが、理念に沿った理想的な企業経営につながるのです。
企業内チームワークの形成
新人や若手社員にとっても「いい」人材として採用されることには大きな価値があります。
理由は大きく分けて2つ。
人間関係で不満を持つことがないことと、業務にストレスを感じることが少ないということです。
いい人材が人間関係を円滑に
人間関係に対する不満によって人材が退職したという話はクライアント様からもよく聞きますし、社会的にもかなりの割合を占めているように思います。
特に新卒の社員であれば、気の合う仲間を選び居心地の良い環境で過ごすことができた学生時代から、自分で周囲の人間を選ぶことができない会社という環境の変化に適応できず退職してしまうことは想像に難くありません。
では、人間関係に対する不満の要因はなんでしょうか。
それは「いい」人材が集まっていない、もしくはその人が「いい」人材ではないから。
さらに言うと、「いい」人材が集まる仕組みができていないからかもしれません。
逆に人間関係さえよければ、仕事に行き詰ったときも仲間と協力することで乗り越えやすくなります。
上司にも気兼ねなく相談することができれば仕事の質も上がります。
特にできないことや不安の多い新人や若手社員にとって、周りとの円滑な関係があるかないかは、仕事の楽しさややりがい、成長に大きく影響します。
価値観の合致でストレス要因を排除
会社の価値観と自分の価値観が合っているかどうかで、業務で感じるストレスは変化します。
例えば、お客様を騙してでも成果を挙げることを是とする会社で、お客様に誠実な仕事をしたいと思っている人は、やりたくないことをやらされるストレスを感じることになります。
一方、会社が正しいとする価値観が自分の価値観と合致している場合、迷いなく自信を持って仕事をすることができます。
言葉にすると当たり前のことですが、価値観の相違で仕事に不満を持っている、もしくは辞めたという話はよく聞きます。
このような形で退職になってしまうことは、会社にとっても社員にとっても、時間やお金などさまざまな痛手を負う不幸なことです。
「いい」人材が集まることで、社員の働きやすさや成長のスピードは高まります。
若手社員が楽しそうに働き、さらに活躍してくれるようになるのであれば、将来の不安も薄らぐのではないでしょうか。