前向きな経営者が、政策的「資本性劣後ローン」にチャレンジすべき理由

「資本性劣後ローン」をご存じですか?
劣後するとはどういう意味なのか?金利が高そうなイメージがある…など、コロナ禍以降、ローン=融資といえばコロナ緊急融資ばかりが注目され、この融資制度については金融機関とお付き合いのある中小企業経営者や支援者でも、正しく理解している方は少ない印象を受けます。
2020年8月より日本政策金融公庫が取扱いを開始した「新型コロナ対策資本性劣後ローン」は、現在は苦しくとも現状を打破したい、業績回復・成長できると自信がある企業にはとてもメリットが多いまさに「政策的」な融資制度です。

「資本性」とは

この融資制度名称にある「資本性」とはどういう意味でしょうか。
これは、元本返済の据え置き期間が最短だと5年、最長だと20年という長期であることに由来します。

よって、金融機関の資産査定において「資本」と同等にみなすということです。
例えば、債務超過5,000万円の会社が、資本性ローンで同額の融資を受けた場合、その時点で金融機関の資産査定において債務超過が解消されたことになります。
これは実質的な「増資」です。

「劣後」とは

一言でいえば、企業が資金繰りで悪化した場合、他行の融資回収が「優先」され、余力があれば「劣後」して弁済してもらえるというポジションです。

かなり弱い立場であることから、当然ながら貸す側も慎重になり返済可能性について一歩踏み込んだ審査をすることになります。
民間金融機関のプロパー融資では対応しにくい理由はここにあります。

メリット

  • 期日(5~20年)まで元本返済がない
  • 資本性ローンにしては金利が安い(0.5%~2%後半)
  • 金融機関が自己資本として評価
  • 債務超過の解消(銀行内評価)
  • 無担保、無保証

一方、5年間は繰り上げ弁済ができない、毎期決算の報告義務、弁済の妥当性が認められる事業計画書の作成、黒字になれば金利が上がるなどの制約があります。
しかしこの制約は、融資を受けるメリットに比べればデメリットと言えるほどのものではありません。

対象企業

では、どのような企業が利用できるのでしょうか。
大きく以下の3つに分類されます。

  1. 指定されたファンドから出資を受けているベンチャー企業
  2. 中小企業再生支援協議会が関与する再生途中の企業
  3. 事業計画書を策定し、民間金融機関等による支援を受けられる等の支援体制にある企業

この記事を読まれている方々で1や2に該当する企業は少ないでしょう。
実際の利用企業でも3の企業が大半です。

3の「民間金融機関等の支援内容」ですが、同時融資実行が条件ではなく、緩やかな解釈の印象を受けます。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けていることも条件ですが、新型コロナ融資や補助金のように明確な数値基準がある訳でもありません。

チャレンジすべき理由

この制度の大きなハードルは、長期にわたる「妥当性ある事業計画書」の策定にあります。
現在は赤字だとしても、業績を回復させ成長させることができる根拠を、経営者のビジョンと数字で説明できなくてはなりません。
コンサルタントのサポートを受けたとしても、経営者が自らの言葉で説明することが重要なのです。

筆者がこの制度にチャレンジすべきと考える理由はここにあります。
相手を納得させるだけの根拠と言葉で事業について語ることは、多くの中小企業経営者にとって苦手な分野であり、この制度へのチャレンジは、それを克服するまたとない機会になるからです。

「新型コロナ対策資本性劣後ローン」は、とても良い制度なので、ぜひ利用していただきたいと思います。
一回チャレンジしてダメだったとしても、計画を見直してまた相談することもできます。
自社は企業維持できる、大丈夫だと融資担当者を説得して欲しいものです。
企業の良い点を見つけて支援していきたいというのがこの制度の主旨であり、融資関係者の本音でもありますので、中小企業経営者は十分な準備と熱意をもって挑戦してください。

参考:日本政策金融公庫
新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表

投稿者プロフィール
株式会社つながりバンク 代表。
オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。
スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士、日本外部承継診断協会 顧問。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

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