銀行もNo!町家再生の救世主は「支援者」と「私募債」での資金調達
- 2022/4/28
- 事業投資
中小企業の資金調達の1手法として、少人数私募債が注目されています。特定かつ少人数に発行される私募債(社債)を購入するのは、発行者の事業に理解を示してくれる、いわば応援者たち。たとえ銀行が融資をしてくれなくても、事業やそれを運営する経営者が魅力的であれば、中小企業は自ら資金を集めることができるのです。
古都金沢の重要伝統的建造物の1つ町家を再生させるため、私募債で資金調達を試み成功させたご経験を持つIPA 国際不動産エージェント取締役 鈴木学さん。今では、古民家再生プロジェクト以外にもさまざまな新規事業に私募債を活用しているとおっしゃいます。今回は、足掛かりとなった町家再生の体験に基づいて、事業再生に私募債を活用することの意義をお話くださいます。
目次
町家を宿にリノベーション
国際不動産エージェントの鈴木学です。
良きご縁を得て、金沢市の観光地「ひがし茶屋街」近く、郷土の文豪・徳田秋声の名作「町の踊り場」に出てくる築116年の町家を、買わせていただきました。
そして、この建物は1年余の歳月をかけて、2019年に旅館業ゲストハウスとして生まれ変わり、無事再スタートを切ることができました。
宿の名は、「Azuki旅音」といいます。
「あずき」の名は、もとの所有者が、この家で長年、和菓子屋を営んでいたことにちなんでいます。
事業投資と親孝行を同時に実現
喜寿(77歳)を迎える千葉県在住の両親へのお祝いとして、Azukiに招待して、2泊3日ゆっくり過ごしてもらいました。
新婚旅行以来、約50年ぶりの金沢再訪を、「息子が私財を投じた町家旅館オープン」というかたちで実現できて、両親はとても喜んでくれました。
両親が金沢訪問中に、ちょうどタイミング良く、「北陸中日新聞」の1面に、Azukiが写真入りで紹介されました。
その事実を知った後、私と両親は金沢じゅうのコンビニを回って、新聞を買い集め、そのいくつかは自宅や事務所に飾っています。
資金繰りに翻弄される日々
今でこそ歓喜にあふれるAzuki界隈ですが、ゲストハウスの竣工直前まで、私は資金繰りに悩んでいました。
- 2017年の終わり、土地・建物を1200万円で購入、仲介手数料や司法書士報酬あわせて1250万円かかりましたが、全額現金で支払いました。
- 2018年中に、不動産取得税、固定資産税、火災保険、設計料、ゲストハウスに必要な家具家電備品代の支出が、300万円弱かかりましたが、これも全額現金で出しました。
- 2018年10月から、改修工事に着手しました。
総額は税込で約1750万円。
契約金(10%)と中間金(20%)まで、525万円は現金で出しましたが、引き渡し時の残金1225万円の捻出に頭を悩ませていたのです。
この時までに、金沢市の事業にすでに2000万円以上の現金を支出しています。
しかもタイミング悪く、私は2017年11月に友人と会社を共同起業したばかり。
しかも、最初の9か月間は社員に給料を払うために私たち経営陣2人は無給での奉仕。
一方、その間にも生活費や教育費は日々出ていくので、資金繰りが本当にきつかったです。
銀行からのゼロ回答
この時までに、銀行融資の打診を10行ほどにしましたが、ことごとく断られました。
ゼロ回答の主な理由は、4つ。
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- 私の居住地が東京で、物件所在地が金沢 ⇒ 地域密着の信金・信組は取組不可
- 建物が築116年なので担保評価がない ⇒ 北陸に本店のある地銀やメガバンクでも取組不可
- 地元の運営会社がまだ創業3年、法人化してから1年 ⇒ 実績重視の銀行ではマイナス査定
- 融資規模が小さい(1000万円台) ⇒ 東京に本拠を置く、古民家再生・収益化プロジェクトに融資する会社でも、サイズが小さすぎて取り組めない。
▶資金繰りに苦しむ鈴木さんは、どのように危機を乗り越えたのでしょう?次のページでは、私募債での資金調達体験の実録をお届けします!