コロナ後のスモールM&A業界はどう変化するのか

さあ、2022年の幕開けです。2019年の年明け間もなくから、世界中に混乱を招いたコロナウイルスにより、この2年間はどの業界も多かれ少なかれ影響を受けたことでしょう。この年末は久しぶりに街の賑わいが戻り、アフターコロナに向けて世の中は大きな変革の兆しを見せています。

最近の動向と今後の方向性について、長年、M&A業界に従事してきた株式会社つながりバンク代表の齋藤由紀夫が、独自の視点からお話させていただきます。

昨年の動向:M&A業界の大きな出来事

M&Aアドバイザーの急増

2021年8月に中小企業庁による「M&A支援機関の登録制度」が創設され、M&A 支援機関の登録が開始されました。
業界にとってとても大きな出来事でした。

登録された機関は2,278者(法人1,700件、個人事業主578件)でした。
属性をみると、専門業者と税理士・会計士で約74%を占めます。
また登録者の内、43%は2020年代の新規設立、つまり1年足らずでの新規参入となります。

登録を希望した機関だけの数字なので、実際には更に多いと想定されます。
近年、ここまで新規参入者が多い業界も稀なのではないでしょうか。

出典:中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録ファイナンシャルアドバイザー及び仲介業者の最終公表について」

急拡大するM&A業界の今後の方向性

おおやけにM&Aをビジネスとして掲げる方の急増により、市場は更に拡大することが予測されます。
一方で、会社・事業という高難度の「商材」を、経験の浅いアドバイザーが扱うことによるトラブル増加も懸念されます。

専門店が最後に勝つ

私は以前から、セミナーやコラム等で「エリア」や「業種」を特化することのメリットを伝えてきました。
市場を狭めてしまうリスクもありますが、業種特化することで、業界動向の詳細な把握や、業界ならではの法規制への理解、情報ネットワークの拡大、専門性の高いデューデリジェンスの実現など、メリットも数多くあります。

依頼する側にとっても、M&A専門業者が多すぎて、どこに頼めばよいか分からなくなります。
結果、「売手」「買手」ともに、今後ますます専門分野に目利きのあるアドバイザーを求めてくるでしょう。
例えは適切ではないかもしれませんが、メニューが豊富な中華料理店のラーメンよりも、一品で勝負するようなラーメン次郎を求め行列ができるのと似ているかもしれません。

弊社も自社ですべてを対応するには限界があることから、今後は業種特化のM&A支援機関との連携、もしくはその分野で生きる覚悟を決めたアドバイザーと共同での会社設立を進める予定です。

譲渡理由の多様化

 これまで会社売却といえば、後継者不足、業績不振などネガティブ要因によるものが大半でした。
最近では、以下のようなポジティブな理由から譲渡する方々が増えてきました。

  1. 社長の趣味嗜好の変化(集中と選択)
  2. 事業の入替(多角化志向)
  3. アーリーリタイア(人生観の変化)
  4. 立ち位置の変化(事業化から投資家へ)
  5. 出口の方向転換(IPOからM&A)・・等

人生100年と言われますが、経営者が、体と心を健全に保てる時期は限定されます。
一般に健康寿命は、男性が72歳、女性が75歳だという調査結果がありますが、経営者に求められる健康基準はもっと厳しいはずです。
経営者人生はそれほど長くはないという現実、そこに気づいた経営者が増えてきたのかもしれません。

小規模M&Aファンドという選択肢

ある日を境に、中小オーナー企業が第三者に譲渡される――そこにはさまざまなリスクが伴うことをM&A経験者なら誰もが理解することでしょう。
主に以下のようなリスク要因が内在し、買手がもっとも敏感になることろです。

  1. オーナー社長に業務・顧客が紐づいている
  2. 管理体制が属人的で不透明
  3. 本業に不要な資産や人が多い
  4. 強みや弱みが外からでは実感できない・・等

これらのリスク要因があると、交渉時から売手の譲渡希望価格から大きく乖離したり、交渉の最終局面で値下げ要求が頻発したりする事態につながります。

では、リスク要因を解消する方法はあるのでしょうか。
私は、ファンド機能を組成し、そこで一旦譲受して「売れる状態」にすることを提案したいと思います。

「磨き上げ」という手法も推奨されていますが、自社内部、もしくは外部コンサルタントの立場で磨き上げるには限界があります。
本当に売れる状態の会社にするためには、M&Aを支援する側が一定の発言力と責任(それに見合うリターン)を持ち、売手側と目線を合わせる必要があります。

いずれも大胆な手法を求めている訳ではありません。
「権限移譲」や「見える化」「財務リストラ」でも十分に企業価値が上がる可能性があります。

「競業」ではなく、「共同」「協業」

これだけ多くのM&Aが存在することで、一時的にはM&A支援機関の「競業」が発生するかもしれません。
当然ながら撤退する方も出てくるでしょう。

元々、スモールM&A業界は、アドバイザーのリソースも限られていたので同業者の連携が強い業界でもあります。
今後、M&Aの場面に応じて必要とされる支援機関となるには、自社がどの分野、業務に強みがあるか知ってもらう必要があります。

また、アドバイザー、投資家の新規参入に伴いM&Aの失敗も増えるかもしれません。
絶対に「成功する法則」を見つけるのは難しいですが、「失敗の法則」は比較的見つけやすいはずです。

その経験値を共有し、買手・売手が安心してM&Aに取り組める市場をつくることが求められています。

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表

投稿者プロフィール
株式会社つながりバンク 代表。
オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。
スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士、日本外部承継診断協会 顧問。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

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