オンライン会議で重要性を増す「ファシリテーション」のスキル

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コロナ禍による接触制限を理由としてビデオ会議が急増しました。しかし、会議中にクローズアップされる発言者の顔や、発言中の自分の顔を見続けるのは、対面での会議よりも認知負荷がかかります。そのストレスの低減には、画面に表示される顔のサイズを小さくすることや、カメラをOFFにして声だけにすることが有効なのですが、今度は相手の表情が読み取れず、コミュニケーションを図るのが難しくなってしまいます。

そこで、一般社団法人日本パートナーCFO協会代表理事を務める高森厚太郎さんが解説した、ミーティングを活性化するノウハウを3回にわたって紹介します。今回は、良い会議を実現する「ファシリテーション」のスキルと、必要なマインドやプロセスについての内容です。ビデオ会議でこそ、活用すべきスキルではないでしょうか。

参加者がコミットできる会議づくりを心がける

良い会議とは出たくない会議の裏返し

皆さんにも覚えがあると思うのですが、世の中には出たくない会議があります。何のための会議なのか目的がわからない、レジュメを読めばわかる内容をひたすら聞かされるだけ。限られた人間の独壇場になっていて、誰も発言せずに盛り上がらない。あるいは議論があちこち飛んだり、噛み合わずに迷走したり、だらだらと結論がなかったり、結論の出し方が強引だったり…。

逆に、出たい・出てもいい会議とは、予定していたことがきちんと決まり、時間どおりに終わる。参加者の顔ぶれや参加人数が適切。また、会議終了後、具体的に何をすればいいかがわかる。多くの人から建設的な意見が出る。決められたことに対して、参加者の納得感があるなどが挙げられます。

プロセスと目的達成が担保された良い会議の実現を

整理すると、良い会議とは「プロセス(議論の過程と意思決定のなされ方)に納得感があり、目的(なんらかの意思決定がなされ、決定事項に基づいて会議メンバーが具体的に行動に移れること)が達成される会議」です。

良い会議の場では、より多くの人の知恵を借りてより良い結論が生まれ、その後、納得感と責任感を持って、その結論を実行していくことができます。短い時間で、ベストの結論とコミットメントを得られるのが良い会議なのです。

ファシリテーションの技術で会議をサポートする

会議が「良い会議」にならない場合、議論する内容(議題や情報)やプロセス(進行や議論の手法、メンバーへの働きかけ、その場の雰囲気)などに問題があることが多いです。ここに会議を生産的・効率的に進めるためのファシリテーションというサポート技術が必要になってきます。

ファシリテーションのプロセス
出典:マイナビ「ファシリテーション」のスキルと、必要なマインドやプロセスは?

議論の準備から結論の実行までサポートする

狭義のファシリテーションは、純粋に会議を円滑に進行するサポート技術です。まず参加者に、その会議なり議論なりにきちんと参加してもらうこと、そして参加者の議論を活性化させ、最後に議論をまとめるところまでをフォローアップします。

しかし、ビジネス全体としては、会議で結論を出すことがゴールではありません。その後に実行してもらうことが重要です。また、いきなりその場で議論させるよりも、会議前に最善の事前準備をしてきてもらう方が議論は活発化するものです。こうした事前準備から、会議後の実行までをも含めた全体をサポートするのが広義のファシリテーションになります。

参加者がコミットできる「場」を作り上げる

この一連のファシリテーションの「場」をマネジメントするのがファシリテーターです。ファシリテーターの役割は、「会社のビジネス上のゴール(成果創出)に向かって、関係者間の議論を通じて最善のプランと最善の実行体制を作るプロセスをマネジメントすること」と言えます。

ファシリテーターは、会議(議論)の参加メンバーからより良い結論を生み出すための知恵(頭)を引き出し、さらには出てきた結論を行動に移していくための力(気持ちと体)を引き出さなければなりません。

そのために、参加メンバーが知恵を出しやすい健全かつ建設的な「場」を作り上げると同時に、参加メンバーが行き着いた結論に自発的・自律的にコミットしていく「場」を作り上げることが大切です。

ファシリテーションのフェーズを理解する

ファシリテーションには4つのプロセスがあり、フェーズ毎に上手くさばくためのポイントがあります。

1.参加メンバーに最善の準備をしてもらう

事前のフェーズでは、最適なメンバーを最適な人数で選び、議題を決めて事前に共有し、準備しておいてほしいことをあらかじめリクエストしておくようにしましょう。会議の時間と場所もしくはヒデオ会議へのアクセルURLしか伝えないと、参加者は会議の準備のしようもないからです。

2.議論に参加してもらう

会議当日のフェーズでは、会議の目的・目標を改めて冒頭で共有する、会議の段取り・ルールを定めて共有を徹底し、物理的・心理的に意見の言いやすい場づくりを行うことが大切です。例えば、ドラマ「半沢直樹」の役員会議室のような重厚な空間では、物理的に意見の言いやすい場にはならないでしょう。

3.議論を活性化する

会議中のフェーズでは、会議の交通整理を行います。わからない情報や言葉の通訳を行い、ホワイトボードや資料の画面共有を使って議論を見える化し、発言へのリアクションで盛り上げを図るように心がけましょう。会議が盛り上がらない、横道にそれていく、結論が出ない、時間通りに終わらないのは、参加者が迷子になっているからです。

4.議論をまとめる

会議最後のフェーズでは、積み残しを確認しつつ結論をまとめ、次のアクションを確認することが重要です。会議プロセスの納得感は、最後の積み残し確認でも担保できます。

CFOなりCOOなり、責任ある立場として会議に参加する場合、是非このファシリテーターとしてのスキルを活してみてはいかがでしょう。

次回は、「論点整理と議論の見える化がミーティングを活性化させる」をお届けします。

出典:マイナビニュース 「『ファシリテーション』のスキルと、必要なマインドやプロセスは?」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

(高森氏の「中小ベンチャー」に関する過去記事はこちら)

高森 厚太郎
プレセアコンサルティング株式会社
代表取締役パートナーCFO

投稿者プロフィール
東京大学法学部卒業。
筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。
日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。

現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするベンチャーパートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。

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