老舗企業を救う、「よそ者」「新参者」

この記事を読むのにかかる時間: 2

M&Aを考えるときには、その事業を深く理解している者ではないと難しい、と思う方も多いのではないでしょうか。今回は、後継者不在の企業を救ったM&Aの事例とあわせて、「よそ者」・「新参者」によるM&Aの強みは何かをお話していきましょう。

日本最古の老舗企業「金剛組」を救ったM&A

創業100年以上の国内企業は3万社*を超えるそうです。*東京商工リサーチ調べ
世界的にみても、日本は稀な「法人長寿国」と言えます。仮に代表者の在籍年数を25年とすると、4回以上も経営者が交代している計算となります。大手生保や商社の名前もありますが、売上高でみると5億円以下の中小企業が7割以上含まれていることにも驚きます。

中小零細企業も時代の荒波を乗り越え、変化に対応しながら生き残ってきたことが伺い知れます。長寿企業が増える一方で、全体的な会社の寿命は年々減少し、倒産企業の平均寿命は20年程度に短命化しつつあることは気になるところです。

日本最古の老舗企業は、宮大工の流れを組む社寺建築業者、「金剛組」です。創業は西暦578年、創業1,400年を超えており、世界一歴史がある企業です。聖徳太子の命で、四天王寺の建立を命じられたのが起源だと伝えられており、その歴史と伝統は圧倒的です。ただし、この老舗企業は、ごく最近、M&Aにより生きながらえた企業なのです。

寺社建築は木造建築がメインでしたが、近年は、防火・防災・コスト面等から鉄筋コンクリート工法が主流となっています。金剛組も時代の流れに逆らえず、一般建築への事業拡大へ方向展開したことで負債が増大し、経営危機に陥りました。

その窮地を救ったのは、中堅ゼネコンでМ&A熟練者として業界でも名が知られる髙松建設(現髙松コンストラクショングループ)です。金剛組は2005年から救済される形でグループ傘下に入り、職人・従業員の雇用も守られました。M&Aが、業歴1,400年の伝統と技術・職人を守ったのです。

「養子縁組」もM&Aの類似形態!?

一族の存続・家を守るために優秀な血を外部から招き入れる「養子縁組」という制度も、M&Aの類似形態と言えます。スズキ自動車、アシックス、松井証券、桃屋等の事例が有名です。

これらのように、知名度ある優良企業であれば候補者はいるでしょうが、中小零細企業はそうはいきません。やる気のある方、経営ノウハウある方、資金ある方等の「何かを持つ人」に経営権(株式)と一緒に引き継いでもらう必要があります。

自然界では「強いものでも賢いものでもなく、変化できる者が生き残る」と言われています。
企業経営の場合では、歴史ある業界や一族の中から「異端児」が出る可能性が少ないのが現実です。常識に囚われず経営を変革できる「よそ者」、「新参者」が求められているのです。

実際に、「よそ者」が買手となりM&Aで成功した事例も増えてきています。
Webマーケティングに強いIT企業による老舗教育事業業者のM&A、生産管理に長けたコンサルティング会社による食品メーカーのM&A、法人営業に強い銀行員による老舗文房具店のM&A等。それぞれ、買い手企業の強みを生かし買収後の業績を伸ばしています。

求められている「よそ者」

まずは買い手である自分の強み・興味があるものを棚卸してみましょう。謙遜してはいけません。
んな方でも必ず何かあるはずです。
身近な友人、家族、同僚に聞いてみるのも良いかもしれません。新たな発見や気付きがあるに違いありません。ぜひ試してみて下さい。

「国内企業の約3分の2にあたる66%が後継者不在」*という調査結果があります。*帝国データ調べ
スモールM&Aであれば、手元にさほど資金がなくても事業承継が可能です。婿養子や親族という血縁関係に縛られず、広く外部に後継者を求めるニーズと機会が急拡大しています。この記事を読んだ方から、一歩踏み出す「よそ者」が出てくることが、私の望外の喜びです。

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表

投稿者プロフィール
株式会社つながりバンク 代表。
オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。
スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士、日本外部承継診断協会 顧問。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

この著者の最新の記事

関連記事

ピックアップ記事

  1. 岩手県紫波郡紫波町で公民連携事業開発コンサルティング業務を手がける株式会社オガール。代表の岡崎正信氏…
  2. 社長がしくじった経験から一定の法則を導き出し、それに学ぶことで成功につなげていこう!との趣旨で開催さ…
  3. 「PR」と聞くと、企業がテレビやラジオなどのメディアで流すイメージCMや、商品やイベントなどを情報発…

編集部おすすめ記事

年別アーカイブ

ページ上部へ戻る