「スモールM&A」での起業は本当に可能だろうか
- 2020/6/5
- M&A
- 「スモールM&A」の活用術
今年世界を震撼させた歴史的災厄でのコロナショックは、サラリーマンの仕事に対する概念に変化をもたらしています。今回は、サラリーマンが「スモールM&A」を活用して起業するメリットについて見ていきましょう。
副業から複業へ
日本政策金融公庫の調査によると、起業家の平均年齢は42歳だと言われています。意外に遅いと感じるかもしれませんが、平均寿命からすると、まだ人生折り返し地点です。
よく言われる「副業」は本業の空いた時間でお小遣いを稼ぐようなイメージでしたが、「複業」は、本業と同レベルの仕事を複数持つようなスタンスです。サラリーマンでも複数のビジネスを持つことが、今後ますます注目されるでしょう。
働き続けることと起業の不安感
2013年より、企業は大小を問わず65歳までの継続雇用*が義務付けられました。背景には国が支えきれなくなってきた社会保障制度があると思われます。
*定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります。引用:厚生労働省「高齢者の雇用」
東京都の調査では、継続雇用の契約は1年更新で、賃金は定年時の5割程度が多いようです。本制度の問題は、雇用する企業側から望んだ制度ではないということです。雇用される側が必要とされていないと感じた場合、精神的な喪失感が伴い、組織運営において負の効果が出る可能性があります。
とはいえ、安易に起業することはお勧めしません。まずは「経済的な安定」です。自己実現の前に、生理的・安全欲求が満たされなければ、いい仕事などできません。ゼロからイチをつくり、革新的なサービスを創る起業は格好がいいですが、そう簡単ではありません。
短期間で成功した起業家の多くは、いい意味で自己中心的で、周りを強引に巻き込む能力に長けたマイノリティーの方々です。
企業内でそれなりの経験を積んだシニア層は、ビジネスマンとしての足腰が鍛えられています。新規事業を立ち上げた経験はなくとも、事業の欠点や課題を見つけ、改善することに長けている方は多いはずです。
その経験は、事業承継や再生の現場において大いに役立ちます。不動産分野で「中古・リフォーム・リノベーション市場」が急拡大したように、事業分野においても同様に拡大するでしょう。
「スモールM&A」を成功させる方法
起業の成功確率は決して高くなく、国税庁のデータによれば5年後の「生存率」は約1~2割と厳しいのが現実です。ただし、ある程度業歴のある「事業を買う」ことで、成功確率は高まるかもしれません。知見ある分野を選べば、さらに良いでしょう。
Webマーケティング会社の40代サラリーマンが、リラクゼーションの店舗をМ&Aで起業し、成功した事例もあります。ユーザーとして長年利用していた店舗だったので、顧客目線での改善ができ、サラリーマン時代に培ったWeb広告で売上を伸ばすことに成功しました。
さらに、管理職として人材教育の経験もあったため、現在も業績不振に陥った店舗を同様のМ&A手法で拡大しています。
それでも不安な方々には、私からひとつ提案があります。
会社を辞めてから気づくことですが、独立した方々に世間はそれほど優しくありません。私も起業時に、法人新規口座を一つ開設するのにも苦労した思い出があります。
業歴がある会社には、有形無形の資産・信用力などがあります。どうせ辞める覚悟をしたのであれば、ダメもとで、在籍する会社の支援を得ながらM&Aでの企業内独立はいかがでしょうか。
その場合、前例がないと一蹴されるかもしれませんが、冷静に考えれば、企業が抱える雇用問題を解決し、社会全体にも好影響を与える可能性がある仕組みだと思います。
また、そのような柔軟な発想ができる会社は活力があるはずです。新規事業を立ち上げる社内ベンチャーよりは成功確率が高いはずです。
そして、ヒト・モノ・カネ・情報・ブランド、何を活用させるかは、あなたの交渉次第です。
一歩踏み出さないと見えない景色
特殊な能力がなくてもスモールM&Aを使って起業できる時代が到来しました。営業に自信がなければ、集客モデルがあり、顧客がいる事業を買えばよいのです。
ただし、事業は生き物で、失敗の落とし穴はあちこちに潜んでいます。それも含めて事業投資の面白い所です。人それぞれ、得手不得手があります。身の丈に合った起業にスモールM&Aはきっと役に立つはずです。